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津村記久子『この世にたやすい仕事はない』(新潮文庫、2018) [本と雑誌]

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文句なしに面白い。小説ってこういうことができるのですね。
途中で「あれ?私はファンタジーを読んでいるのだろうか?」などと思わせておいて、最後にこんなふうに結末をつけるところは、小説の実作者でなくても感心せずにはいられない。

それ以上に面白かったのは、本書のあちこちに散りばめられているパワーワードで、能うかぎり紹介したいところだが、ネタバレを避け最小限にすると、
「一日に、A4の紙一枚以上の文章を読むと、虚脱感で使いものにならなくなる」(p.37)
「今のあなたには、仕事と愛憎関係に陥ることはおすすめしません」(p.187)
「疲れ果てている人のためのおかき」(p.195)←これ最高
「やんわりと私の仕事を乗っ取ろうとする人が現れたんですが」(p.227)
「人間の心の隙間にそっと忍び込んで、ぷすぷすと針で穴を開けていくような人々」(p.265)
「憎しみを不当に盛って投げつけてきている」(p.287)
これだけでも、この本を読みたくなりませんか?ならないか。

結末を書けないのが残念だが、ともかく『とにかくうちに帰ります』と併せて読むと、この作者の作品をもっと読みたくなることを保証する。

 

 
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