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第158回深夜句会(7/8) [俳句]

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(選句用紙から)

曲がるだけ曲がりてみゝず干からびぬ

 季題「蚯蚓」で夏。雨のたびに出てきては、もれなくアスファルトの上で干からびているように見えるみみずの、その干からびているさまが「曲がるだけ曲がって」いるようだという一句。どのような姿で干からびても「干からびている」事実に変わりはないのだけど、これ以上曲がりようがないぐらい曲がっている、と言われると、その苦悶のさまをあらわしているようで息苦しくなる。

山頂は三角点と夏の空

 どのような山なのか書かれていないが、低い山だと周囲に木が生い茂ったり隣の山が間近に見えたりして「三角点と夏の空」とはなりにくいので、ここは、ようやくたどりついた高峰の頂きで、むろん森林限界をとうに超えているので、岩に埋め込まれた標石以外には、周囲にも頭上にも夏の空ばかりが見える、といった風景が想像される。

川遊たうたうお尻ついてしまひ

 「たうたう」なので、作者はずっと、この子が遊んでいる様子を見ていたのだろう。しぶきを飛ばしたりしてずいぶん濡れてしまった上に、とうとう尻までついてしまった。まあしかし、これは事故というよりお約束ともいえる展開で、遊び終えたら着替えて帰るのだけど、予期していたとおりに全身ずぶ濡れになってしまったね、という一句。

形代を納むる箱の小さきこと

 季題「形代」で夏。人の形に切った紙にけがれを移して流すのだけど、その紙を納めた箱が、思っていたよりもずっと小さかった。やろうとする大事に比べて、ずいぶんと小さい箱だなあ、こんな小さな箱で大丈夫なのだろうか、という素朴な疑問。


(句帳から)

とほくから呼ぶ声のする夏野かな
駒草に吹き下ろす風火山から
誰もをらぬ部屋に扇風機のまはる

 
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第157回深夜句会(6/10) [俳句]

(選句用紙から)

自転車のまた通りたる夜釣かな

 季題「夜釣」で夏。ここで「また」は何だろう。一読して、夜釣の邪魔になる自転車がまた通りすぎた、という句かとも思ったが、少し考えてみると、詠み手はこの夜釣りに飽きてしまっていて、もはや時間の経過もよくわからなくなっているところへ、ふとわれに返るきっかけを与えるかのように自転車が通り過ぎた、という鑑賞のほうがおさまりがよいように思った。


やまぎはの代田は山を映さずも

 季題「代田」で夏。平地のまんなかの代田には空が、山際の代田には山が映るものだとばかり思っていた(私もそう思っていた)が、そうではなかったという驚き。「映さざる」でなく「映さずも」としたのは強調する意図か。とかく「も」は難しい。


低く高く低く翔びをり夏燕

 つばめの飛びかたを描いた句は多いし、もしかすると先例があるのかもしれないが、その速さや身のこなし?を描こうとすると、たしかにこんな表現がぴったり当てはまる。いやそれなら、ひばりだって高く飛んだり低く飛んだりするではないかと言われそうだが、つばめの場合はこれらがほぼ一瞬のうちに行われるということで、「低く高く低く」のたたみかけが効果的。


暮れ方の光をのせて山法師

 季題「山法師」で初夏。「光をのせて」がたいへん巧み。山法師の白い花(あれは花ではないのだそうだが)は枝先にあるからよく目立つのだけど、夏の日中の光は上の方からまっすぐに差してくるので、「光をのせ」た感じにはならない。それが、夏の日もようやく傾き、ほぼ真横からさしてくる時間になってようやく、山法師の白がなかば浮き上がるような光の当たり方になる。

(句帳から)

バス停に並ぶ夏服遠くから
夏草や車両通行止の先


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