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藤岡陽子「金の角持つ子どもたち」(集英社文庫、2021) [本と雑誌]

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中学受験って自分の全くあずかり知らぬ世界なのだけど、受験を通じてこどもが大人を成長させていく物語も成立しうるのですね。この点に感心することしきり。

藪柑子的には、多くの方が言及しておられる加地の兄弟愛よりも、受験前日の加地と宝山美乃里の会話、というより加地の美乃里への言葉が印象に残った。ここで二人は先生と生徒という役割を離れて、まったく対等に話している。バトンを渡す加地のさしせまった心情(=そこまで読みすすめてきた読者の思いでもある)も、それを受け取る美乃里の気迫(=そうでない者がごまんといるだけに)も、どちらもすばらしく、涙なしには読めない。全藤岡作品中(って、全作品読んでいるわけではないのだけど)屈指の名場面だろう。この場面だけでも、読んでよかったと思える。

また、ありふれた感想になるが、人に何かを教えることの難しさや、逆に人から何かを学ぶことの面白さが、この本には山盛りになっていて、教えるにしても教わるにしても、この点をいつも心の隅に置いておきたいものだと思う。
 
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