SSブログ

第171回深夜句会(8/4) [俳句]

IMG_6021.jpg

第1週に開催するのは初めてかもしれない。不在投句2人、リアル参加者5人。
案の定のコロナ大爆発でやむを得ず方針を変更し、披講と句評のかわりに選句用紙(コメントを書き込んだ選句用紙)を回覧する方法にした。
断続的な雷雨だったけど、句会の前後は不思議と傘をささずに済んだ。

(選句用紙から)

スコールをものともバイク二人乗り

季題は「スコール」で夏。スコールが降るような熱帯地域では、夏とか冬とか言わず一年中降っていそうだけど「夕立」の傍題として扱うということで。
もう長いことそういう地域を訪ねていないので、最近はどうなっているかわからないのだけど、そうした地域ではバイクの二人乗りをよく見かける。スコールがやってきても二人乗りを解消するわけにいかないので、二人してくっついたままバイクで移動していく。「ものとも」がやや舌足らず。「スコールもものかは」でいいのではないかと。


揚げ花火聞きつつ母と長電話

季題「花火」で夏。打上げ花火の音を「聞きながら」母親と長電話をしているという句意は明瞭なのだけど、「聞きつつ」がいいですね。見ていないわけです。会話の途中でときどき合いの手のように(娘には)聞こえる花火の音と、そうしたことと関係なく、ああでもないこうでもないと続く母と娘の長電話の親密さが伺える。例えば「雨音を聞きつつ」だと、そういう感じにはならない(それ以前に無季だけど)。

(句帳から)

雷鳴に残響長く続きをり
放たれし火箭のやうに百日紅
夏掛の向きわからなくなる深夜


nice!(0)  コメント(0) 

津村記久子『エヴリシング・フロウズ』(文春文庫、2017) [本と雑誌]

20220812.jpg

読み始めてまもなく、あれっと思う。これって『ウエストウイング』の続編なのでは?
カバーにも解説にもそれらしい記述は一切ないのだが、名前だけでなく、同じ学習塾出身の3人という設定なので、間違いないだろう。もちろん、この本だけ読んでも楽しめるのだけど、『ウエストウイング』でヒロシがかかえていた母親との葛藤が、ここでは別の形で展開される。

いわゆる「見せ場」のようなものがあるとすれば、終盤に二人が駅で別れを惜しむ場面(pp.380-2)だと思うし、事実このシーンは、陳腐な表現だが映画のワンシーンのように美しい。でも、読者がこのシーンにぐっとくるのは、それより手前、二人の気持が通じ合うことになるこの会話(pp.351-2)があるからこそだと思う。そしてここでは、問いかけるヒロシの言葉も、ヒロシの立場でなければ発せない言葉だし、答える紗和の言葉も、なぜ紗和がそのように生きているのか、なぜ紗和の母親はあんなふうなのかまで簡潔に言いつくしていて、そこにいつもの韜晦はない。

そして、これは多くの方が言及されていることだが、そうしたやりとりが、一貫した信念や主義主張にもとづいてではなく、その場で考えてそうしているところが、この本の最大の眼目なのだと思う。理路整然として首尾一貫しているけど内容は(首尾一貫して)どうしようもない大人とかいっぱいいるわけなので、相互に矛盾していてもかまわずその場の最適解を必死で考える中学生の姿に心打たれる。こういうところが、自分が津村作品に惹かれる大きな理由なのだと思う。ついでに言えば、自分が中学生のころは(いや今でもか)、こんな気の利いた発言も行動も全然できなかったわけで、6人ともすごいなと思う。
 

 




nice!(0)  コメント(0) 

映画「エリザベス 女王陛下の微笑み」(2021年イギリス/ロジャー・ミッシェル監督) [映画]

映画について書くのは、何年ぶりだろう。

心躍る感動の物語を求めてこの映画を見ると、「?」になってしまうだろう。でも、少なからぬイギリスの住民が王室に対して抱いている、屈折した親近感のようなものが、この映画にはよく表現されていると思う。手放しの賛美でなく、かといって敵対でもない、微妙な感じの親愛の情。

映画の最後、握手する女王陛下が年齢と逆順に次々に現れる場面でジーンとくるのですね。このような仕事につくことを運命づけられ、それをきまじめに果たしてきた(そういうところは、お父さんにそっくり!)人であることがよくわかる。失礼ながらこの点、現王室の人びとのなかでは、むしろ少数派に属するのではないかと。そのきまじめさが、一筋縄ではいかぬあの国の住民たちから一定の支持を得ている最大の理由なのだと思う(だから、1997年のように「きまじめな女王陛下なら、こういう対応はしないのではないか」と思われると、一転して強い批判を受けることにもなるわけで)。

こういう映画って、本人に出てきてもらって撮影収録するわけにいかないから、どういう構成にするかで決まってしまうところがあると思うのだけど、一介のイギリスおたくとしては十分楽しめる作品だった。

nice!(0)  コメント(0)