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第186回深夜句会(11/9) [俳句]

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(選句用紙から)

一群の落葉に後れたる落葉

季題「落葉」で冬。落葉つまりすでに散り敷いている木の葉が、風に吹かれて歩道やグランドのような場所を動いているのだとすると、それがまとまって沢山動いている後ろから、少し追いかけるように遅れていく落葉がある、といった風景だろうか。
もう一つの読み方として、「落葉する」という言い方があるように、現に落ちている葉を詠んでいるのだとすると、まとまった数の葉が落ちた後を追うように、少数の葉が落ちてきた、という句になる。

里をゆくひと駅ごとの冬日和

山中ではなく、大都会でもない。「里」なので、田畑のところどころに集落があるような風景。そうした中を走っている列車が、ときどき駅に止まるのだけど、どの駅にも冬の日が暖かく射している。一駅ごとに周囲の人家や商店の様子は少しずつ違うけど、冬日だけは同じ。


(句帳から)

夜霧には夜霧のにほひありにけり


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中井久夫集1「働く患者 1964-1983」(みすず書房、2017) [本と雑誌]

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ああそうだったのか、と思う。

初めて中井久夫さんの著作に接したのは、阪神大震災後の一連の著作だと思っていたのだけど、この巻の最後に納められている「精神科医としての神谷美恵子さんについて」の初出は、同じみすず書房から出ていた「神谷美恵子著作集別巻 人と仕事」(1983.4)なのですね。そうすると、これがおそらく、二十歳そこそこの自分が初めて読んだ中井さんの文章になるのだと思う。
その最後の章である「8」に記されているエピソードは、神谷美恵子さんの存在の大きさを描くとともに、中井さんの眼差しをも感じさせる名文だと思う。また、最初に接したのが精神科医としてのもっとコアな内容だったら十分に理解することができないまま終わったであろうことが明らかなので、この出会いは幸運だった。



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