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津村記久子『やりたいことは二度寝だけ』(講談社文庫、2017) [本と雑誌]

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それぞれの記事の初出が知りたい。特に、「『女が働くということ』に関する原稿」(pp.230-232)の初出が。この記事は、最後のエピソードがすばらしい。今の津村さんなら、また別の表現を考えるかもしれないが。

エッセイを読むことでその作者の小説がよく理解できることはままあるが、この本もそうで、津村さんは、規範を示してそれに合わないものを排除するというスタイルをとらない。むしろ反規範といってもいい。しかし何でもありなのかというとそうではない。内面化された「構え」のようなものがある。それを掘り下げているのは本書ではなく、深澤真紀さんとの共著「ダメをみがく "女子”の呪いを解く方法」(集英社文庫、2017)で、「どうしてもあかんこと以外はやり合ってもしょうがないのだから、やりすごすとか気にしないとか時期をずらすとかしかない」という津村さんの達観が淡々と語られる。ここでは失礼ながら、深澤さんが津村さんに人生相談をしている風になっていて、知識や規範にがんじがらめに縛られ、かつ自分語りをやめられない深澤さんに対して、津村さんがあっさりと薄味の答えをするのだけど、どう考えても津村さんの方が10歳ぐらい年上に感じられる。言葉の成熟度や選ばれ方のレベルが違うということなのだろう。
 
全然本題と関係ないのだけど、芥川賞受賞作「ポトスライムの舟」の原稿データを編集者あてにメールで送信したあとのことについての記述(p.207)は、津村さんがどれほど考え抜いて表現を選び、小説を仕上げているかがうかがわれて面白い。
 
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