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番町句会(11/8) [俳句]

きょうのお題は「大根洗ふ」。実景を見ていないとなかなか詠めない季題。

(選句用紙から)

宅配の手押し車に冬日濃く

ここでいう「手押し車」は、建設現場や保育園でいう「手押し車」ではなく、オフィスで通常「台車」と呼ばれる、低い荷台に車輪がついた折り畳み式の運搬具のことだろう。宅配便は、トラックのほかに自転車で牽引するリヤカーのような車両も見かけるが、ともかく配達先のマンションの前とか会社の駐車場とかに車両を停めて、そこから先、その配達先に届ける荷物を台車に乗せて押していくのだ。どのくらい多いかはわからないが、複数あるから台車を使うことが前提。で、トラックから台車に移された荷物にも、台車にも、冬の日がひとしくあたっている。

諍へるままに大根洗ひをり

農婦、ということば自体が死語かもしれないが、畑から抜いて積み上げた大根を、流水だか湧き水だかの畔で洗っている。ところが、近くで見ていると、その洗っている本人が、同じく洗っている配偶者だか農婦仲間だかと何やら口論をしながら、ただ手足は忙しく動かして、大根を洗い続けている。大根がたくさんあるから、手足を止めて本格的に口喧嘩をするわけにはいかないのだ、とか理屈を言わなくても、面白くて少し悲しい一句。


(句帳から)

車窓より見ゆる焚火の暗さかな
両岸の枯野しだいに暗くなる
粉のにほひバターのにほひ冬温し

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第138回深夜句会(11/14) [俳句]

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(選句用紙から)

空白は雪原クリスマスカード

 雪も季題だが、この句の季題は「クリスマスカード」のほう。受け取ったのか書いているのか、クリスマスカードにサンタクロースとかトナカイのそりとかが印刷されているのだけど、その周囲は、文字を書き込むための余白(空白)になっている。何も印刷されていない空白は、あたかも雪原であるかのように見えるデザインになっている。
グリーティングカードによく用いられる、ザラザラした(=あまりつるつるしていない)厚手の紙のあたたかな質感が連想され、ひいては送られてきたクリスマスカードの温かさが感じられるような一句。

耳の皮膚うすらかなるや冬日影

 うすらか(薄らか)、ってあまり使わない表現だけど面白い。
 最初、冬の日影に入って耳が寒い、そういえば耳の皮膚は薄いので寒さを感じやすいから、という身体感覚が面白いと感じたのだけど、互選のあとの検討で、これは冬の光がさしていて耳がほの赤く透けて見える、という他の句でしょう、と指摘されて、なるほどそうかも、と納得。そうすると、冬の日ざし―低い角度で射しているので、この句のような状況になりやすいーに対する親しみをあらわした句ということになり、こちらの方が詩情としては豊かに思われる。

(句帳から)

湖に突き出た陸地冬桜

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尾崎真理子『ひみつの王国 評伝石井桃子』(新潮文庫、2018) [本と雑誌]

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自分の年代で読書好きの人間なら、石井桃子さん(以下敬称略)の文章に影響を受けなかった者は皆無といっていいだろう。「てまみ」「いやんなる!」「クフロ」「ご解消」…例をあげればきりがないが、藪柑子の貧しい語彙のかなりの部分は石井桃子由来のことばで占められている(分母が小さいので、さらに比率が高くなる)。

多くの著作から単純に導かれがちな「こども好きな児童文学者」とはまったく異なる石井桃子像、キャザーやファージョンやミルンに惹かれ、デモーニッシュなものをかかえた創造者としての石井桃子像を提起したところに、この評伝の最大の価値があると思われる。それを提示した第7章「晩年のスタイル」のなかの「私というファンタジー」(pp.614-621)は必読。むろん、読者がそれに同意するかは別ではあるが、私はかなり説得的に感じた。

また、仕事に関して妥協を許さない石井桃子の徹底ぶりは、求道者のようにさえ感じられるほどで、たとえばこんなエピソードが。
(以下引用)
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石井は一九九〇年代半ばからアメリカの詩人アーサー・ビナード、イギリス人の語学研究者アラン・ストークに、一つひとつの単語の背後に潜む思いもよらない意味合いをつかむため、真剣に「英語のレッスン」を受けてもいた。特にストークとは五年間にわたって石井からの質問とそれに対する氏の回答の往還を繰り返し、これも段ボール箱いっぱいの書類が残されているほどで、その熱意は『今からではーー』の巻末の訳注にも滴っている。(p.622)

九十代にさしかかったその頃の石井は、「私、ようやく英語が少し、わかるようになってきた!」と周囲に自慢してみせることもあったらしい。(p.623)

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(以上引用終わり)
他ならぬ石井桃子に目の前で「私、ようやく英語が少し、わかるようになってきた!」なんて言われたら、絶句するしかないのですが。

この評伝のもう一つの大きな意味は、石井桃子の「通史」が初めて描かれたという点にある。これは、本書でも紹介されていることだが、ある時代を深く共にした友人でさえ、その前後の時代をまったく知らないというような、不思議なことなことが多々あって、それが系統的な(というのかな)理解を困難にしてきたという事情に由来する。

いうまでもなく、石井桃子は著名な人物なので、これまでにも数多くの「石井桃子論」が世に問われたことと思うが、本書は石井桃子論である前に、まずこれだけ多くの一次史料にあたり、かつ、本人や友人へのインタビュー(現在では不可能なインタビュー)を長時間にわたって行っていることから、これを超える評伝を著すことはかなり困難と思われる。

また、本書を読んでの傍論となるが、一次史料の最たるものとしての「書簡」の重要性を痛感する。往復書簡が残されていなかったら、本書を編むことはできなかっただろう。世代の問題にしてはいけないが、これだけたくさんの書簡を残した文学者は、これが最後になるのではないだろうか。

付言すると、石井桃子の評伝であることは同時に、日本の児童文学を築き上げてきた人々の列伝でもある。吉野源三郎や小林勇はそもそも出版人として著名だけれど、松居直、瀬田貞二、いぬいとみこ、光石夏弥、松岡享子、渡辺茂男、中川李枝子、山脇百合子…さながら「石井山脈」とでも呼ぶべきこの壮観!

(11.25追記)
本書では、瀬田貞二との交友についても紙幅を割いて説明している。瀬田貞二の勧めで、石井桃子が俳句を詠んでいたなら、どんな句になっただろうか、とふと想像する。散文でもあれだけリズムに気をつかう名手だから、他にはないような句を詠んだことだろう。

 
 
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津村記久子『ワーカーズ・ダイジェスト』(集英社文庫、2014) [本と雑誌]

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津村作品としては珍しく、主な登場人物の片方が男性。
仕事に関しては「そうそう、そういうことってあるよね」という率直な出来事の連続になるのだけど、仕事以外に関しては、何かが起こりそうでいて起こらない。男性と女性の会話も、読み手を試しているかのような不思議な会話で、「この場面でそのセリフですか?」的なはぐらかされ方。出てくる小道具も想定外というか、鍵盤ハーモニカですか。

人によっては、それを物足りなく感じるかもしれないが、自分には、このようなヤマもオチもない(仕事以外に関する)記述こそが、かえって、働く人、それも特別でない人の日常の記述として不思議な納得感がある。



 
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津村記久子『この世にたやすい仕事はない』(新潮文庫、2018) [本と雑誌]

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文句なしに面白い。小説ってこういうことができるのですね。
途中で「あれ?私はファンタジーを読んでいるのだろうか?」などと思わせておいて、最後にこんなふうに結末をつけるところは、小説の実作者でなくても感心せずにはいられない。

それ以上に面白かったのは、本書のあちこちに散りばめられているパワーワードで、能うかぎり紹介したいところだが、ネタバレを避け最小限にすると、
「一日に、A4の紙一枚以上の文章を読むと、虚脱感で使いものにならなくなる」(p.37)
「今のあなたには、仕事と愛憎関係に陥ることはおすすめしません」(p.187)
「疲れ果てている人のためのおかき」(p.195)←これ最高
「やんわりと私の仕事を乗っ取ろうとする人が現れたんですが」(p.227)
「人間の心の隙間にそっと忍び込んで、ぷすぷすと針で穴を開けていくような人々」(p.265)
「憎しみを不当に盛って投げつけてきている」(p.287)
これだけでも、この本を読みたくなりませんか?ならないか。

結末を書けないのが残念だが、ともかく『とにかくうちに帰ります』と併せて読むと、この作者の作品をもっと読みたくなることを保証する。

 

 
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2019・第6回びわ100参加の記録③感想・分析編 [ウォーキング]

(②当日編から続く)

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(GPSアプリ"Geographica"の集計表示画面。このアプリはとても便利です)

過去2回同様、サポーターのみなさんの意気込みが強く感じられる、すばらしい大会だった。後半のチェックポイントやゴール地点のように長時間にわたって開設されている場所では、気力体力を持続させるのが大変だと思うのだが、はるか手前から何人もが拍手やライトで出迎え、また見送ってくださることは、特に深夜にはとても勇気づけられた。また、たった一人で、分岐点やルートが変わる要所に待機していて、選手が通るたびに案内をしてくださる方にも頭が下がる。今回は特に、暑さや雨や虫刺されで難儀だったと思うのだけど、そのつどパイプ椅子から立ち上がってくださって、こちらが恐縮してしまう。

また、「たねや」さんのお饅頭とか、いちご飴、サラダパン、しじみ汁などなど、エイドでいただくものに「滋賀県らしさ」が現れていることも楽しく感じられる。たねやさんファンひいては滋賀県ファンを育成する効果は絶大で、東京のデパ地下で「たねや」さんを見かけると、思わず何かを買ってしまう習慣がついている。このあたり、運営の巧みなところだと思う。

それにしても、雨と高温に難渋した大会だった。実際に強い雨に降られていたのは2時間ぐらいなのだけど、その後も弱い雨や霧雨が断続的に続いたためにレインウェアを外す決断が遅れ、高温とあいまって消耗につながった。
気象データでみると、
・19日の最高気温:長浜23.5度、彦根22.0度、大津21.0度
・20日朝の最低気温:長浜16.7度、彦根18.8度、大津16.7度
・19日(全日)の降水量:長浜15.0mm、彦根14.0mm、大津14.0mm
となるが、湿度が高いためか、この数字以上に暑く感じた。
これまで、第4回は台風、第5回は低温、第6回は雨と高温といずれも悪条件だったが、最も過酷だった第4回の台風にくらべれば今回はまだマシ。とはいえ、3回参加して2回が雨って、確率的にかなりレアなのでは…たわむれに計算してみると、①準備編で

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10月の彦根の晴れ日数と降水日数の平年値は、晴れ日数18.1日、降水日数8.9日。ちなみに晴れ日数とは、「日照時間が可照時間の40%以上」の日数、降水日数とは「日降水量1mm以上」の日数で、びわ100参加者にとっては、むろん降水日数のほうが重要。ほぼ24時間歩き続けるわけなので、歩行中に1mm以上の雨にみまわれる確率は、8.9日/31日=0.287となる。
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としているので、10月の大会に3回参加したとして、
・3回とも雨にみまわれる確率 0.287x0.287x0.287=0.024
・3回のうち2回雨にみまわれる確率 (1-0.287)x0.287x0.287x3=0.176
・3回のうち1回雨にみまわれる確率 (1-0.287)x(1-0.287)x0.287x3=0.438
・1回も雨にみまわれない確率 (1-0.287)x(1-0.287)x(1-0.287)=0.362
のはずなのだが、0.176のクジをひいてしまったようだ。

それでも、雨に濡れたら濡れたで、そのまま歩き続けられる(薄いソックスなら、雨があがればやがて乾く)こともわかったので、次回以降、過剰な装備を省けるだけでもありがたい。

また、これも毎回同じことを書いているが、信号待ちがとても少ないこと(特に、スタートから松原町の信号まで11.8km、長命寺町信号から守山美崎公園手前の信号まで13.9kmにわたって、いずれも信号待ちがない)と、高低差が少ないことは、歩いていて気持ちがよく、びわ100のコース設計が優れているところだと思う。

しかし、これまでも最大の課題としてきた「後半の栄養補給」が、今回も最大の宿題として残ってしまった。60km地点以降のおよそ8時間、エイドでいただいたものを別とすれば、ドライフルーツとビスケットをわずかに食べただけだった。ふだん深夜早朝に食べる習慣がなくても、あれだけ歩けば空腹になって当然のはずだが、実際には、何も食べたくない(ゼリーさえ食べたくない)ので困ってしまう。温かいお茶を飲むのがやっとでは、体に悪いにきまっているので、何か対策を考えないと。

これに関連して、ゴール直後のひどい症状も、一体何がおきているのか(貧血?低血糖?脱水?)よくわからないだけに困ってしまう。スタート直前とゴール直後に採血して、どういう状態なのか分析したいところ。ゴール地点、隣のベンチでおいしそうに唐揚げ食べながらビールを飲んでいる参加者がうらやましい。日ごろの鍛え方が違うのか…

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(心拍数の推移。20時ごろから23時ごろまで謎に低下している。なお歩数は、10月19日83,659歩、20日60,641歩)

繰り返しになるが、ハード面で同じであっても、それを運営する人しだいで印象はいくらも変わるわけで、文字通り不眠不休でマネジメントやサポートにあたられた実行委員の皆さんに深い感謝を申し上げたい。来年も参加させていただきたいと思うと同時に、何年かに一度はサポーターとして参加するのもいいかなあなどと思ったりもする。

(★11.5追記)〔主催者から発表されたデータ〕
・びわ100コース(一般の部)
  登録者数 921
  出場者数 854
  完歩者数 590 (出場者数に対して69%、登録者数に対して64%)
       ↓
  完歩者590人のゴール時間帯別内訳
   午前7時まで(=21時間以内) 33
   午前8時まで(=22時間以内) 21
   午前9時まで(=23時間以内) 50
   午前10時まで(=24時間以内)57
   午前11時まで(=25時間以内)43
   正午まで  (=26時間以内)65
   午後1時まで(=27時間以内)68
   午後2時まで(=28時間以内)58
   午後3時まで(=29時間以内)66
   午後4時まで(=30時間以内)129 ※

・アスリートコース(健脚の部)
  登録者数 78
  出場者数 76
  完歩者数 70 (出場者数に対して92%、登録者数に対して89%)
       ↓
  完歩者70人のゴール時間帯別内訳
   午前7時まで(=18時間以内) 12
   午前8時まで(=19時間以内) 11
   午前9時まで(=20時間以内) 13
   午前10時まで(=21時間以内)6
   午前11時まで(=22時間以内)10
   正午まで  (=23時間以内)6
   午後1時まで(=24時間以内)1
   午後2時まで(=25時間以内)4
   午後3時まで(=26時間以内)0
   午後4時まで(=27時間以内)7

※完歩者の2割以上が、最後の1時間(29時間から30時間以内)にゴールしている事実は、いくつもの点ですばらしいと思う。
一つめに、これだけ多くの方が目標を達成されたという事実。これは、チェックポイントやエイドステーションなどでのサポーターの応援、さらには最後尾追跡(16時直前にゴールできるよう最後尾でペースをコントロールしているサポーターがいるはずで、コースに1kmちょっとのおまけがあることを考慮すると、高度な技術が必要だと思う)など、参加者のがんばりと運営の心意気がマッチした結果だと思う。
二つ目に、制限時間をあえて30時間としていること。仮に制限時間が24時間だったら、完歩者は限られる…というか参加者が限られる(腕に覚えのある者に限られる)ものと思われ、それで大会の価値が変わるわけではないにしても、「大会の趣旨を体現する度合い」という点では、やはり午後4時までゴールを開けつづけることが(運営上、楽なことではないだけに)すばらしいと思う。
(★11.7追記)自分が知る範囲で、100キロウォークの各大会の制限時間を列挙すると、
30時間 びわ100
28時間 ぐんま100
26時間 行橋別府、三河湾、東京エクストリーム
24時間 つくば、しおや、晴れの国おかやま
となっていて、びわ100(と、ぐんま100)が「完歩する経験」を重視していることがよくわかるし、とても共感できる(制限時間が短い大会をdisる趣旨ではないので為念)。


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2019・第6回びわ100参加の記録②当日編 [ウォーキング]

(①準備編から続く)

目覚めると晴れ間がのぞいていて、もしやと希望を抱かせるが、天気予報をつけてみると、むしろ午後から宵の口までずっと雨との無情な宣告。さらに気温高めというダブルパンチ。まあ、この天気図ではどうにもならない。きょうは1日かけて停滞前線を味わう日になりそう。

201910190900.png

宿の食堂で朝ごはんをつめこむ。隣のテーブルの宿泊客からは、炭水化物をひたすら摂取する気色の悪いおっさんに見えたことだろう(炭水化物を摂取しなくても、気色の悪いおっさんには違いないが)。
湿度は100%近く、真夏用の上下にレインウェアを重ね着すると、歩く前から既に暑い。また、防水でない靴を持ってきてしまったので、途中で浸水することは明らか。一応の対策として簡単なシューズカバーをかけるが、これでどこまで浸水を先延ばしできるか…せめて20kmぐらいまでもってくれるといいが。
また、バックパックの上からレインウェアを羽織ると、中味の出し入れが面倒になるのも困るところ。ハイドレーションには紅茶1.2リットルを入れる。

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・0km スタート地点で受付後、開会式。100人足らずなので、受付も実行委員長挨拶も伝達事項もラジオ体操も記念写真もあっさり終わってしまい、予定の13時を7分半ほど繰り上げてスタート。たとえ7分半でも、明るいうちに歩く時間が長くなるのはありがたい。スタートしてすぐのところで、犬を連れた年配の方が「全員完歩」の幟を並べて応援してくださる。
アスリートコースと称するだけあって、あっという間に半分ぐらいの選手が見えなくなってしまう。この人たちに無理についていこうとすると後で体力が尽きてしまうので、自重しなければと思いつつ、1kmあたり10分ぐらいの早いペースで歩き始める。
今回の目標は、20時間を切ること。単純計算では、1kmあたり12分のペースでずっと歩けばよいのだが、コースに1.4kmのおまけがついているので、その1.4kmに必要な時間を考慮に入れると、19時間40分ぐらいで100km地点に到達していないと、20時間は切れないことになる。

・10km スタート直後に天気予報どおり降り始めた雨が、本降りに変わる。彦根城の周囲の狭い歩道にさしかかり、傘をさしている旅行者のみなさんと接触しないように歩くのが一苦労(むこうから見ると、大雨のなかをレインウェアで突進してくる迷惑な歩行者だろう)。長曾根町北の信号で湖岸道路に戻る際、水たまりに踏み込んだ右足が一気に浸水。あと85kmもあるのに…
 きょうの雲は、上空を北西から南東に押し寄せてくる。比良山系の上に濃い墨色の雲が出てくると、それが湖上をこちらに近づいてきて、自分のいる場所でも強い雨が降り始める。やがて雲の薄い部分が同様に近づいてきて空が少し明るくなり、小降りになる。この繰り返しで時間が過ぎていく。

・20km 雨はすこし小降りになる。相変わらずのハイペースで歩き続け、早くも右足の足首と前脛が痛くなりはじめる。少しペースダウンしないともたないという恐怖と、このペースでどこまで貯金できるか?という好奇心とが拮抗し、後者が若干上回る。20kmの看板の少し先で、10時にスタートした一般の部の最後尾とおぼしき二人連れを追い越す。その先、「あのベンチ」に私設エイドのようなものがあるあたりから、一般の部の選手をちらほら見かけるようになる。

・27km 去年と同じ公園でトイレタイム。ついでにヘッドランプと点滅灯を点灯し、懐中電灯を取り出す。公園を出てしばらくすると日没。このあたりから、グループで歩いている出場者をいくつも追い越すが、まだ渋滞というほどではなく、歩道も広いので、そのつど挨拶をする余裕がある。

・30km 時速5km/hで歩けば6時間を要するところ、5時間12分で通過。この時点で48分の貯金。ハイドレーションの水が、雨と高温のため、全部汗になって出てしまっている感じ。薄いソックスをはいているので、濡れていることがあまり気にならないという思わぬ効果。しかし足がふやけていることに変わりはない。

・32km 雨の第1CPに到着。去年と同じお嬢さんから「たねや」のお饅頭をいただく。「これが楽しみでびわ100に参加しています」は社交辞令ではなく、本当にありがたく思う。去年はパイプ椅子に座り込んで風邪薬を飲んだりしてタイムロスになってしまったので、ことしは立ったままバナナとお饅頭をいただいてすぐ出発。守山市内で待機している家族に電話し、あと4時間ぐらいで到着する旨を連絡。

・ 35km 前を歩く人がだんだん多くなってくる。歩道の狭い箇所で追い抜くときには後ろから声をかけ、注意深く右側を通るようにするが、そこがちょうど水たまりだったりして、なかなかしんどい。街灯がないので、ヘッドランプでよく見えない部分を懐中電灯で補いながら進む。

・ 40km 長命寺橋の先、おととしの第4回大会で広大な水たまりになっていた場所の状況を案じていたが、思ったほどではなくてほっとする。それでも水たまりの端をつたうようにして歩く箇所がいくつか。41km地点の第1エイドに立ち寄り、シューズカバーを外し、ロキソニン錠を服用し、さらにロキソニンテープを右足首に貼る。いただいた飴玉をしゃぶりながら、再び歩く。

・ 45km 湖岸道路の広い歩道をひたすら歩く。前の選手のバックパックで点滅する灯りがしだいに近づいてきて、追いつき、しばらく会話して追い越し、ふたたび真っ暗な中を歩くことの繰り返し。ときどき、真っ暗な道端に座り込んで休憩している選手がいてびっくりする(というか、ちょっと危ない)。

・ 50km 50キロ地点を示す看板がどこかに出ていたはずだが見あたらない。もう一度家族に電話し、あと30分ぐらいで着くので補給物資を持ってバス停で待っていてくれるよう依頼。

・ 53km スタートから9時間10分余で第2CPに到達。一昨年より40分以上、また昨年より30分以上早い。おにぎりとお味噌汁をおいしくいただく(このあたりまでは、まだ食欲があった)。ここでも座らずに出発し、バス停で待機していた家族から水と行動食の供給を受ける。ゼリー2本を一気飲み。夜間の寒さ対策として用意した着替えは、結局出番がなかった。

・55km 市街地の道路に戻ったので、信号待ちが気になる。待っているあいだはストレッチをしたり、行動食を頬張ったりするのだが、しだいに食欲も落ちてきて、後半用の行動食は大半を残してしまいそう。1kmあたり11分台をまだ維持しているので、60km地点で貯金が1時間あれば(つまり、12時間かかるべきところ11時間以内で到達していれば)、残り40kmに1分ずつ配分して40分(つまり、1kmあたり13分で歩いて)、残り20分で最後の1.4kmを歩ければ20時間を切れるかも、などと頭の中で計算する。

・60km 午前0時をすぎて播磨田町を右折し、県道42号線に入る。24時間営業のスーパーの前を通るが、駐車場にはほとんど車が停まっていない。大丈夫なのだろうか。

・65km 去年長逗留して失敗した喫茶店が道の反対側(進行方向右側)に見える。まもなく第3CP。温かいコーンスープをちびちび飲み干し、サラダパンは遠慮申し上げて早々に出発。どのCPやエイドも、今回は最小限の滞在時間で出発できている。

・70km 去年の第3CPが、やはり道の反対側に見える。あのときは恐ろしく寒かったのに、きょうは暑く、おまけに夜半をすぎてもパラパラと雨が降り続けるので、レインウェアを脱ぐ決断ができない。

・75km まったく食欲がない。ハイドレーションの水を飲むのもいやになってきたので、コンビニで温かいほうじ茶を買うが、それも半分も飲めない。湖岸道路に戻ると、長浜や彦根では感じなかった「水辺のにおい」を感じる。瀬田川畔の遊歩道に入り、懐中電灯を駆使してあるく。運営委員のみなさんがサイリウムを遊歩道の両側に配置してくださっているので、それが目印になってたいへん助かる。

・80km 遊歩道には信号がないので歩きやすいはずだが、真っ暗かつ水辺であることと、しばしば土手に上がらなければならないため、ペースが上がらないし、あまり楽しく感じない。ようやく第4CPの明かりを見つけてほっとする。飴玉を3ついただき、ふたたび歩きながらしゃぶる。飴玉で僅かでも糖分補給をと思うが、2ついただいたところでそれもいやになる。

・83km 去年と同じ場所でしじみ汁の差し入れ。陳腐な表現だが、五臓六腑に染み渡るおいしさ。思わず「しみわたる!」と口走ってしまう。スタートから15時間あまり、ここで初めて座る(立っているほうが楽)。

・85km 再度コンビニに立ち寄り、温かい緑茶を買うが、やはり半分も飲めない。固形物はもはや全く受け付けない。いつものことだが、近江大橋が見えているのになかなか近づいてこない。やっと近江大橋をくぐると、今度はプリンスホテルの高い建物がなかなか近づいてこない。そうこうするうち、対岸つまり東側の空がうっすらと明るんでくる。

・90km 明るくなりかけた第5CPに到着。スタッフが出してくださる熱い緑茶が驚くほどおいしい(「チャイと緑茶、それぞれホットとアイスがあります。何にしますか?」とわざわざ尋ねてくださって、ありがたいやら恐縮するやら)。持参したお菓子とドライフルーツを無理やり流し込み、ロキソニンをもう1錠服用。ついでにテープも貼る。ここでようやくレインウェアの上をバックパックにしまう(涼しい!)。まだ貯金が1時間あるので、残り11.2kmを1kmあたり15分のスローペースで歩いても、なんとか19時間台でゴールできると皮算用。

・ 95km 5月の「ぐんま100」でも残り10キロで足が止まってしまったが、今回も1kmあたり13分台までペースが落ちてくる。それでも、途中から生活道路に入って歩きやすくなったことで、ふたたび11分台を回復し、これなら19時間台の前半もいけるかもと考える。この静かな生活道路は、おそらく旧道なのだろうが、地元の人が数多く歩いていて、通りすがりに挨拶をすると返事をしてくださったり、応援してくださったりするのがたいへんありがたい。

・100km 最後の難所である「歩道橋」をどうにかクリアして、幹線道路に戻ってからの長いこと。途中の駐車場で、スタート直後に応援してくださった「全員完歩」さんが応援してくださるのを力に、残り1.8キロをなんとか進む。最後に1人抜かされたものの、19時間台前半でなんとかゴール地点に到着。

 しかしその後がいけない。加圧タイツを脱ごうと更衣所で前かがみになった瞬間に貧血のような症状(貧血ではなく低血糖か?しかし空腹感はまったくない)と腹筋の痙攣が爆発し、這うようにベンチへ移動して失神。足をあげ、頭に血が戻ってきて、ようやく意識が回復したものの、世界が暗く見え、吐き気が治まらない。ハイドレーションに残った紅茶を棄てるためにトイレに移動するが、袋の中の紅茶の色が血液に見えていっそう気分が悪くなり、トイレで冷や汗が出て動けなくなる。

(③感想・分析編へ続く)

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2019・第6回びわ100参加の記録①準備編 [ウォーキング]

5月1日 大会公式サイトに「きょうから募集開始」の告知が出ているのを偶然見つける。去年は7月1日募集開始だったので、2か月繰り上がっている。
去年と同様、どちらのコースに申し込むか少し考えたが、同時にスタートする人数が少ないほうが歩きやすいと思われること、また第3CPが午前0時まで開かないことを考慮して、今年はアスリートコースに申し込む。今回から申込先がJTBスポーツステーション社になったのですね。ここは、六甲全縦と同じ代理店。

5月8日 滋賀県で大きな交通事故と伝えるニュースを聴いていたら「大津市の大萱6丁目交差点」とアナウンスしている。大萱6丁目って、びわ100のコース上、しかも内陸部から湖岸道路に左折する重要な交差点(73.5k地点)ではないですか。これは大変なことに。
安全のため保育士さんに手を引かれている園児でさえこのような事故に遭遇するのであれば、半ば眠りながらふらふら歩いている自分などは、いつ事故にあってもおかしくない(比較が不適切だが)。

6月29日 申込が550名に達したとのこと。しかし定員1000名って大層な数ですね。信号待ちをあまり気にしなくて済むこの大会ならではという気もするが、それでも、彦根市街地などは歩道が狭いので、渋滞が起きてしまうのではと心配。

7月31日 応募締切。最終日に多数の応募があり、ほぼ1000人に達したとのこと。仮にアスリートコースの最後尾からスタートするとしたら、その時点で自分より前を1000人が歩いていることになるのですね。すごい。

8月5日 仮バージョンとして表示されているコースマップを見たら、第3CPの位置が去年より4キロほど手前になっているほか、湖岸道路の74.1キロ地点に「救護所」が設けられるように書かれている。救護所なら、もう少し手前に必要な気もするが…

8月23日 きょう発表の3か月予報によると、近畿地方の10月の平均気温は平年並か高い見込み(低20・並40・高40)で、降水量はほぼ平年並(少30・並40・多30)。気温が高いことはいい面もわるい面もあるが、降水量だけは少ないことを願う。
10月の彦根の晴れ日数と降水日数の平年値は、晴れ日数18.1日、降水日数8.9日。ちなみに晴れ日数とは、「日照時間が可照時間の40%以上」の日数、降水日数とは「日降水量1mm以上」の日数で、びわ100参加者にとっては、むろん降水日数のほうが重要。ほぼ24時間歩き続けるわけなので、歩行中に1mm以上の雨にみまわれる確率は、8.9日/31日=0.287となる。

8月27日 参加者は992名(びわ100が909、アスリートが83)で確定との発表。992名とはすごい人数。ぐんま100キロの倍だ。後から追いかける形でスタートする自分としては、先行する909名がうまくばらけてくれると歩きやすいのだけど。それ以上に、エイドステーションやチェックポイントで、出場者が集中する時間帯に、バーコードの読み取りとか、1000人分のおにぎりとかバナナとかの手渡しをどうやるのだろうか。オペレーションが大変そう。

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9月16日 大会公式ウェブサイトに掲載されたコースマップを点検する。去年からの変更点は、
・木浜町交差点から生活道路(北寄り)に入っていたが、そのまま幹線道路(南寄り)を播磨田町まで進む。また、途中速野小学校前から幹線道路の右側(南側)を通行するようになる。
・ロイヤルホームセンターの大会本部は、これまでエイドとリタイア者仮眠所を兼ねていたが、大会本部の機能だけが残る(だから別途「救護所」が必要になるわけですね)。
・播磨田町交差点で県道42号線に右折後、全区間で左側(南東側)を通行するようになる。
・第3CPが4キロ手前に移動(70.1キロ地点→66.1キロ地点)し、開設時間が1時間繰り上がる。
・大萱6丁目の交差点で湖岸側(西側)に渡らず、陸側(東側)を南下する
・ロイヤルオークホテルに「救護所」が設けられる。リタイア者の仮眠場所ですね。
・95キロ地点のエイドステーションが廃止される。
ぐらいで、大きな変更はない感じ。
ところで、ウェブサイトには「おかげさまで、999名の方のお申込みを頂きました。」と書かれているのだけど、いつの間にか7人増えたのですね。
999人って…わざとやろうと思ってもできない人数ですな。

9月19日 1か月予報(9月21日~10月20日・近畿地方)
向こう1か月の
・平均気温は平年より高く
・降水量はほぼ平年並み(か、やや多い)
との予想。希望とは逆の予報。4週間先のことなので、一喜一憂しても仕方ないことはわかっているが、雨だけは降ってほしくない。

10月9日 参加説明書とコースマップが届く。いよいよ本番が近くなってきた。コースマップは…畳めないので、携帯には不便。去年のコースマップはA4両面印刷で情報量も多く、携帯しやすい優れものだっただけに、ちょっと残念。

10月14日 滋賀県の週間天気予報で1週間後の天気を参照。
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残念…雨ですか。しかし本格的な雨でもなさそうで、着るものや靴の選択に迷うところ。最低気温が高いのはありがたいが、風が強くなると体感温度が下がるので、風向や風速も気になる。

10月18日 19日は午後3時ごろまで雨で、そのあと晴れという微妙な予報…スタートから3時間ぐらい、なんとか持ちこたえられるか。
長浜まで移動し、宿に荷物を置いてテレビの天気予報を見ると、明日は午後3時どころか夕方まで雨だという。がっかり。また、駅前ビルの、過去2回夕食をとっていたカフェが廃業してしまっている。

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大きな町だから食堂ぐらい沢山ありそうなものだが、駅のまわりは居酒屋ばかり。やむを得ず、駅の隣のビルのファミリーレストランに移動すると、こちらはスポーツジムになってしまっている。「電車でやってきて駅前で食事をとる人」がもはや想定されていない事実に大いに盛り下がるが、近くの店で食べられるだけ食べて、20時すぎに就寝。

(②当日編に続く)



 


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第137回深夜句会(10/10) [俳句]

(選句用紙から)

枝細くなりゆく先の木の実かな

季題「木の実」で秋。枝の先に木の実がついているという一見単純な風景なのだが、
・木の実が一様についているのでなく、枝先についていること
・その枝が、幹に近いところから枝先に向けて細くなっていること
・細くなっていることがわかるぐらい、枝があらわになっていること、つまり、すでに葉が落ちはじめていること
などがうかがわれ、読み手が風景を再現できる一句。

秋の野に子の散らばつてしまひたる

散らばって、というからにはある程度の数のこどもなのだろう。園児を連れてきた保育士さんとか、娘や息子たちを連れてきた親とかであろうか。ちらばって「しまう」には、本意ではない、という気持が含まれているが、秋の野が危険なところでない前提で読むならば、ここではそれを楽しんでいることになる。また、秋の野やこどもたちの上にある空の広がりも感じられる。

(句帳から)

終バスが待つてゐてくれ暮の秋
秋深きマグカップにはミルクティー
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藤岡陽子『波風』(光文社文庫,2019) [本と雑誌]

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文庫になったら読みたいと思っていた本で、かつ吉田伸子さんが解説を書かれているので、即座に購入。

この作者の、「どんな人にもその人の居場所があり、役割がある。ただし、それは自分で見つけなければならない」という信念のようなものは、どの作品にも共通している。だから、これを「お仕事小説」というのともちょっと違う。

それはともかくとして、作品と無関係に考えたことは、「自分が人生の最終局面で(おそらく)病院にお世話になるときに、どんなスタッフとどんなやりとりをすることになるのだろうか」ということだった。その時点でやりとりできる状態であるかは措いて、それがどのようなものであるかによって、最終的な満足感というのかQOLというのか、それが全く違ったものになることは確実と思われ、自分では選ぶ余地があまりないだけに、気になるところ。かといって、予約しておくわけにもいかないし。

  

 
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第136回深夜句会(9/12) [俳句]

朝晩ようやく涼しくなってきたのがうれしい。

(選句用紙から)

影ひいて立てる良夜の警備員

季題「良夜」で秋。中秋の名月に限らず、月の明るい夜、というぐらいの意味でも使われる季題だが、その明るい月が、警備員に影を曳かせている、と読むと、月の影がわかるぐらい暗い場所にいるように想像されて楽しい(例えば、広い工場の敷地を巡回しているとか)。実際には、そこまで暗い場所に立つことは稀だろうが。
また、検討のなかで作者の推敲の過程をお聞きすることができたが、多くの可能性を検討し、言葉を選んでいるのですね。


東京の川のしづけさ鱗雲
 
季題「鱗雲」で秋。「鰯雲」などと同義。
東京に生まれ育っていると、東京の川は静かだとかにぎやかだとか感じることもないのだろうけど、例えば黒部川とか球磨川のほとりで育った人が東京へやってきたら、確かに「東京の川って、音もたてずに静かに流れているんだね」と思うだろう。同じものを見ても受け止め方が違うという好例。そこに発見というか、俳句のいとぐちがあるように思うわけで。
で、この句の肝心なところは、そのしんとした感じ(受け止め)が「鱗雲」という秋の季題とよく響きあっているところ。これが例えば「春の雲」だったら中途半端だし、「夏の雲」だと「そうかな?」になってしまうし、「冬の雲」だったら鑑賞しにくい(冬なので水が涸れていて静かだ、と読んでしまう惧れもある)。季題が動きそうで動かない。

(句帳から)

秋晴や吊荷かすかに揺れてゐて
丸窓のよく手入れされ紫菀かな

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RBG 最強の85才(2018年アメリカ、ジェリー・コーエン&ベッツィ・ウェスト監督) [映画]

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ネタバレになるので主要な内容に触れられないのが残念だが、細かいところで一つだけ、「これは…」と考えさせられたこと。

1973年にRBGがはじめて連邦最高裁で口頭弁論を行ったときの実況録音を聞いていると、弁論の途中で、レンクイスト首席判事が、今日的にみれば実にしょうもない、法律家とも思えないような質問…というか茶々を入れるのですね(そもそも、当事者の弁論を遮って裁判官が質問をしてもいいのだろうか)。
綸言汗の如しという言葉があるけれども、責任ある立場の者が軽いつもりで発したことばが、後世の人々にどう受け止められるかというのは、避けようのないことだが大事な問題なのだと思う。まぁ本人は14年も前に亡くなっているわけだから、いまさら評判がどうなろうと関係ないのだろうが。

RBGと自分をくらべるのはおこがましいにも程があるが、自分も、自分の持ち場でできることを(かつ、50年後に正しいと思えることを)静かにやろうと思わせる映画だった。keep calm and carry on.




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津村記久子『とにかくうちに帰ります』(新潮文庫、2015) [本と雑誌]

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オフィスを舞台にしたお仕事小説は山ほどあるけど、みんなで何かを成し遂げるようなスポ根物語ではなく(そういう小説には心底うんざりする)、また「オフィスあるある小話」とも違う(明確に違う)。そうではなく、いわば「オフィスで働いている人の心のありかたや仕事との向き合い方」を掘り下げる小説。

特に、標題作「とにかくうちに帰ります」を読むと、人は何を求めて生きているのか?などと考えはじめてしまう(ここで登場人物がめざす「うち」とは、家庭じゃなく「屋根」だったりするわけだが)。飄々とした風体のピッチャーが、スローカーブで油断させておいて剛速球を投げ込んでくる感じ…って全然説明になってませんね。この作者の他の作品も読んでみることに決めた。






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あけてみようかがくのとびら展(福音館書店「かがくのとも」創刊50周年記念) [皿回し]

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福音館の絵本「かがくのとも」から生まれた初めての科学展、と聞けば、行かないわけにはいかないでしょう。会期中なので、展示内容に立ち入って紹介することは差し控えるが、会場に入ってすぐ左側に掲げられた福岡伸一さんのメッセージを読むだけでも、行ってよかったと思えるわけです。「かがくを愛する子どもたちへ」という副題を掲げたこのメッセージは、人文科学や社会科学にもあてはまる、すばらしいものだと思う。

決して広いとはいえない会場にたくさんの来場者があって、みんなが場所や時間を譲り合って楽しむ場面もあったけれど、それでも、虚心坦懐に「知る」ということの価値を肯定するからこそ、(少なくとも自分には)満足感があったのだと思う。「そうか、そういうことだったのか」という、こどもの頃に当り前にあった気持ちを持ち続けなければいけないと自戒。この気持ちと健全な懐疑心とが相まって、はじめて本当に「知る」ことが可能なのだろ思う。

会場は学校の校舎のような不思議な場所。銀座線末広町駅か千代田線湯島駅が便利。

(福音館書店主催、アーツ千代田3331で9月8日まで開催中)

  
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第135回深夜句会(8/22) [俳句]

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いつもお世話になっているカフエ「マメヒコ」で、クロカンSサイズをいただく。

夏休みにもかかわらず(夏休みなので、だろうか?)、にぎやかな句会に。

(選句用紙から)

夏と同じ秋の帽子を売りにけり

冬帽子とか夏帽子という季題はあるが、秋帽子とか春帽子という季題はない。もちろん、帽子という季題もない。で、お店ではいつでも帽子を売っているわけだけど、当節こんな気候なので、秋になっても店頭には、夏と同じ帽子(速乾性とかUVカットとか、そんな機能を売りにした帽子であろうか)が売られている、という一句。地球温暖化とか大上段に振りかぶらずに、さらっと「夏と同じ秋の帽子」としたところが眼目で、その行き過ぎない諧謔味や、まあそうだよね、という苦い笑いが楽しい。


流星の夜空にふれて消ゆるかな

季題「流星」で秋。地上から流星を見ていると、夜空の一点からスタートした光が一瞬のうちにすばやく動いて、夜空の別の一点で消えるように見えるわけだが(消える直前に激しく輝くこともある)、それが、「夜空から夜空」ではなく、夜空ではないどこかからスタートして、夜空に「ふれて」消えた、という受け止めかたが独特。夜空でないどこか、とはどこなのだろう、などと考えさせる。

(句帳から)

貼紙をして仏壇屋夏休
八月の夜の街頭温度計
秋暑し二本つづけて通過して


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