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第152回深夜句会(1/14) [俳句]

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(選句用紙から)

⽩⿃のうなじに⼟に⾊わづか

⽩⿃の⽩さを詠んだ句はいくらでもあるだろうけど、細く⻑いその頸に、わずかに⼟の⾊が混じっているという観察。いまいる場所の泥⽔に由来するのか、それ以外の何かに由来するのかはわからないが、美しい⽩⿃も、ぬいぐるみのような作り物でなく、野⽣の動物であるという当たり前のことを思い出させてくれる。

室外機に吹かれつ放し冬薔薇

植物園やビルの庭園ではなく、⼀軒家の庭先とか⼩さな事務所のわずかな緑地に薔薇が植えられているのだろう。薔薇が先なのか室外機が先なのかはともかく、せっかく植えた薔薇が咲いたのに、⼀⽇中エアコンの室外機から吐き出される⾵に吹かれている気の毒な⾵景。しかし、そのわずかな場所であっても、なんとか花を咲かせようという植えた⼈の気持ちも感じられ、それも今時の冬薔薇のひとつの姿なのだろうと感じられる。

⽼⼈ホームぽつんと建ちし冬⽥かな

「建ちし」なのか「ありし」なのか、前者ならこのところ新たに建てられた、というニュアンスだし、後者なら、いつからか知らないがそこにある、となる。また、「ぽつんと」には検討の余地がありそう。
にもかかわらずこの句に惹かれるのは、⽼⼈ホームで暮らしたり働いたりしている⼈たちからも、同じ冬⽥が⾒えているだろうからで、その⼈たちはこの冬⽥をどのように⾒ていのだろうか、という想像を喚起するからだ。ある⼈にとっては、⾃分がずっと農業を営んできた場所だろうし、別のある⼈にとっては、住みなれた場所を遠く離れた、どこであるかももうよく判らないところなのかもしれない。冬⽥のなかに⽼⼈ホームだけが「ぽつんと」あることが、そこで期限を定めることなく暮らしている⼈々の視点を浮かび上がらせているように思う。

とまりたるレールに写り寒鴉

カラスが線路に下りて、レールの上にとまっている。通過する列⾞でなにかを砕いて⾷べたりしているのだろうか。そのカラスが、ぴかぴかしたレールに写っているという。⼀年中⽌まっているかもしれないが、厳寒のいま、冷え切って青空を映して青く光っているレールにとまっているカラスも、また冷たく感じられる。


(句帳から)

枯蔦やここまで伸びて力尽き
訪はん暖炉しつらへしと聞けば
大年の吉野家昼の酒すこし


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