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君塚直隆『エリザベス女王』(中公新書、2020) [本と雑誌]

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映画「英国王のスピーチ」(2010年英豪米、トム・フーパ―監督)には、子どものころのエリザベスがちょっと出てくるのだけど、そこで描かれたお父さん(ジョージ6世)の生真面目な性格を、女王陛下はよく受け継がれたのだなあと思う。

自分が物心ついた時には、すでに女王陛下は女王陛下だったわけで、それから数十年、王侯だから当然のように思っていたが、常に同時代の人物として人々から意識され続けるのは、とても特異なことだと改めて実感する。例えば、ごく最近の首相であるメージャーやブレアでさえ、今どこでどんな活動をしているかは(少なくとも自分のような素人には)遠い世界の話なのに、なんとチャーチル首相の時代から70年近く第一線にいるということ自体、想像を絶することだ。また、諸外国の王室のような、高齢を理由にした退位を全くお考えでないことがわかったが、その理由も、この方らしいなあ(ついでに言えば、この方がそう言うならそうするしかないだろうなあ)と思わせる。

発見として、日本にいるとなじみのない「コモンウェルス」という紐帯が、イギリスにおいては(当たり前だけど)重要なのですね。たしかケンジントンのどこかに、コモンウェルス博物館みたいなものがあって、一度だけ拝見した記憶が。サッチャーがコモンウェルスを毛嫌いしたというのが、さもありなんというところ。なにしろ、国家と個人はあるけど社会は存在しないと言い放った人間だからして。逆に、ブレアがコモンウェルスに無関心だったというのが意外。

新書って、専門家が一般人向けに書いてくれるという性質上、本来なら何冊もの専門書を読み、記述を突き合わせて理解しなければならないことを、煎じ詰めて書いてくださるので、すごく理解した気になって気持ちがよい。しかし、じゃあ自分もその道の専門家になれるかというと、これは当然、一生かけてもなかなかその域には達しないわけで、この「理解した気になる」のが怖いところ。それでも、この先生の大学院のゼミに入って修論書いてみたいなあなどと思う(大変だけど楽しそう)。テーマは…どんな一次史料が発掘できるか次第だろう。ヴィクトリア女王の日記同様、エリザベス女王の日記も、後世の研究者にとっては超重要な一次史料になるのでしょうね。

 
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