SSブログ

吉玉サキ『山小屋ガールの癒されない日々』(平凡社、2019) [本と雑誌]

20201123.jpg

腰巻きには「山の上での想定外の日常」とあるけど、むしろ「山の上にも、下界と同じようなあれこれがある。しかし山の上であるがゆえに、それが違った現れかたをしたり、違った趣きをともなってくる」のがこの本の面白いところではないかと。長すぎて腰巻きには書けないが。
あなたの知らない山小屋のヒミツ教えます、的な本だったらどこにでもあるし、「ふーん」で終わりなのだろうけど、山小屋で働いている人たちにも自分(たち)と同様の喜怒哀楽があることを知って、読者はさまざまに考え、また共感するのではないだろうか。

この特長をもう少しくどく言えば、下界にいろいろな人がいるのと同じように、山の上にもいろいろな人がいるということ、また、この作者の視点が、マウンティングや値踏みから距離をおいたところにあって(そのような視点は、誰にでも備わっているものではない)、それがこの描写を納得感のあるものにしているように思う。さっと読める割に深い味わいのある一冊。

 
 
nice!(0)  コメント(0)