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第176回深夜句会(1/19) [俳句]

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寒い。不在投句がいっぱい。

(選句用紙から)

この川を渡りて仕事はじめかな

勤め人の心をわしづかみにする一句(笑)。「この川を渡りて」という、半ば冗談ではないかと思うほどの大きな振りかぶり方が愉快。この心境はどのようにでも鑑賞でき、仕事はいやだけど職場も近いのでしょうがないから頑張ろうともとれるし、大きな川を渡って新たな気持で晴れ晴れと仕事に臨む、ともとれる。大昔の演歌で、この坂を登れば...という歌があったような気がするのだけど、その存在が、鑑賞に影響を与えているのかもしれない。
楽屋落ちみたいなことを書くのはいけないのだけど、こういう句を詠みそうもない人が詠んでいるのがなんともいえず楽しい。


歳末や母の馴染みの店に買ふ

季題は「歳末」。年末なので、おせち料理の食材を乾物屋に買いに行く、とかお年賀を菓子屋に買いに行く、といった風景が想像されるが、かつては母に連れられて足を運んだその店に、今は自分が同じように訪ねている。小さなドラマというか、過ぎ去った歳月がそこにある。店がかつてと同じように営業していることも重要なポイント。それなりに歴史のある、落ち着いた商店街なのだろう。また、店の種類として、毎日行くような店ではないことも大事。行くたびに母を思い出す、母恋の句。
年があければ、また一つ歳をとる、ということを下敷きにして読むと、いっそうしみじみとした興趣が感じられる。「店に買ふ」がちょっと窮屈なのでは。買ひ、としてもよいか。



冬の池河骨あをき一ト所

河骨の花は夏の季題だが、いまは真冬。あたり一面が黒や茶色や灰色の風景の中、河骨もまた水上の部分は枯れてしまい、水中だけが緑色を残している、そのわずかな緑色が、モノクロームの風景にそこだけ着色したように目立たしい。

(句帳から)

A4の門松畳み古紙袋
身を縮めつつしたたかに冬芽かな

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