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第59回深夜句会 [俳句]

締切10分前に会場にたどり着き、それから7句を詠む…なかなかの綱渡り。

(選句用紙から)

吹けば飛ぶやうな月あり冴返る

季題「冴返る」で早春。一度後退した寒さがまたぶり返す状態。
そんな寒さの中で空を見上げると、そこには「吹けば飛ぶような」月があったというのだが、この「吹けば飛ぶような」をどう解するか。吹けば飛ぶようにか細い、三日月のような月があるというのだろうか。それとも、月が空にかかっている、そのかかり方が、強い風が吹いたなら飛んでしまいそうに、はかなく不安定だということだろうか。「吹けば飛ぶような」というずいぶん俗な言葉で「おやっ何が?」と思わせておいて、「(そういう)月があった」と受け止めるその落差が面白い。

彳むや萵苣一玉をちぎり終へ

季題「萵苣(ちさ)」で春。萵苣と称されるものにはいろいろな葉物が含まれ、その中のひとつがレタスなのだそうだけど、ここではまあ萵苣=レタスと読んでもよかろう。都市近郊の畑の傍で、収穫したレタスの表面の痛んだ部分をちぎって捨てている農夫だか農婦…と読んで、いやもっと端的に、サラダの用意でレタスを1玉全部ちぎって、ちぎり終えたあとに次の動作に移ることなく、ぼんやりと考え事でもしているのであろうか、たたずんでいるとも読めるかな…とも思う。作者の説明では後者ということで、そうするとなるほど独特の詩情があるのだけど、「彳む」がちょっと「春愁」を連想させすぎるような気もする。

足跡の下に見えたる春の土

春の野原。前を歩いている人についていくと、去年からの枯草の上を歩いていくその足跡に、ところどころでその枯草の下の黒い土があらわれている。黒い土に刻まれた靴のソールなども見えるようだが、その「見えたる」に静かに春の到来を喜ぶ気持も感じられて好ましい。
作者は現在寒冷地にお住まいだそうなので、それだと「枯草の下」ではなく「雪の下」から地面がという句になる。つまり冬のあいだずっといちめんに積もった雪も、人が歩くところは薄く踏み固められているので、春になって少しずつ薄くなっていくと、やがて、下のアスファルトや土が露出する日がやってくることになる。別解として、露出する以前に、まだ現れていないけれども、雪が薄くなっていて、もうすぐその下の土が現れそうにまでなっている、と読むこともできる。

(句帳から)

野遊の弁当係茣蓙係
弧を描いて揺れてをる枝夕桜
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