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受験生は五線譜の夢を見るか? [音楽]

家で机に向かうときには、CDをかけっぱなしにしている。

秋から冬にかけては、ブラームスをよく聴いていた。
ヴァイオリン協奏曲、セレナーデ第1番、ピアノ協奏曲第2番。特にピアノ協奏曲は、第3楽章冒頭のチェロのソロにしびれた(←しびれてないで勉強しないと)。

年が明けて、いちばん寒い数週間は、ブロムシュテットが振るベートーヴェンの交響曲第1番と第3番(同じCDなので)を続けて聞く日が多くなった。この時期は、毎日出勤するときも耳当て代わりにiPodを持ち出して、同じ曲を聴いていた。玄関を出るときに第1番を聴き始めると、第3番の第1楽章が終わるころ会社に着く。冬の青空を仰ぎながら聴く「英雄」冒頭の和音は、ドレスデンのルカ教会で録音されているだけあって残響がすばらしい。

同じiPodで土曜日の朝、地下鉄の駅から学校まで歩きつつ眠気覚ましに聴いていたのは、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。エニシダの黄色い花が途中に咲いていたのを覚えている。第1楽章の終わるころ学校に着き、テキストを読み返しながら第3楽章まで聴き終わると、お昼まで2時間の演習が待っている。メニューインの音色もいいけど、木管がうたう第1楽章の第1主題は、受験生のすさんだ気分を癒してくれる。

残り3ヶ月を切ってからは、ボックスで買ったモーツァルトのピアノ協奏曲集、特に23番を何度も聴いた。80歳をすぎたゼルキンがていねいに弾く真摯な音の粒からは、一切の芝居っ気や甘さが排除されていて、しかしとがったところはなく、聞き手の心にじかに音符を届けてもらうような温かさにあふれている。第1楽章、2分以上続く序奏のあとで明らかにゆっくりとしたテンポでかみしめるように出てくる、その録音を聴いていても「この人は篤実な人なんだろうな~」という感じがひしひしと伝わってくるのだ。

最後の数週間、追い込み(泥縄ともいう)のあいだリピートでかけ続け、当日もiPodで試験会場に持ち込んで聴いていたのは、バッハだった。
 フランス組曲第5番 BWV816
 イタリア協奏曲 BWV971
 3台のチェンバロと弦楽のための協奏曲 BWV1064
 オーボエ・ダモーレのための協奏曲 BWV1055
 ヴァイオリンのための協奏曲 BWV1042
ピアノはグールド、協奏曲はピノック+イングリッシュ・コンサート(しかわが家にはないので)。

この推移には、なにか意味があるのだろうか?
年代が次第に遡って(作曲順と逆になって)いるが、それが偶然なのか理由があるのか、理由があるとすれば何なのか、自分ではよくわからない。


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和声

やぶさんのブログを拝見していると、本当に感心する事が多いですね。試験を受ける事自体、私から見るとすばらしいです。
聴かれる音楽が変わってきたというのは、なんとなく納得できますね。私は声楽関係を良く聴くのですが、何かに集中したい時はやはり器楽曲になります。
そして、ブラームスのような編成も大きくて、思い入れも強い音楽。ベートーヴェンのような音量的にも強弱の幅が大きい音楽より、だんだん人間の匂いが薄い、又編成も小さい音楽に移っていくのは自然だと思います。
バッハのBWV1042は大好きです。1043も素晴らしいですね。
試験が終わって落ち着かれたようで嬉しいです。次はヴィヴァルディですか。
by 和声 (2007-08-11 07:47) 

やぶ

和声さま、コメントありがとうございます。

試験は、道楽みたいなものなので、どうぞ感心なさらないでください。世の中的には、会社に命じられて受験したり、その業界に入るために受験する人が多いわけですから、そういう受験生が背負っているプレッシャーにくらべれば、会社に内緒で受験している私なんかお気楽なものです。

単に時代をさかのぼっているだけでなく、編成がだんだん小さくなっているというご指摘は、言われてみれば確かにそうですね。さんざん疲れているときに、脂っこいものを食べる気にならないのと同じなのかもしれません。バイタリティという点では、ワーグナーみたいなこってりしたものを聴いて平然と試験に臨むような受験生のほうが、成功を収める確率が高いんでしょうが、私はとても、そういう気にはなれません。

実をいえば、最後の1〜2ヶ月というところで、ヴィヴァルディも「バスーン協奏曲」なんかをちょっと聴いてみたんですが、やっぱりバッハに戻ってしまったという経緯があります。これまた、理由はよくわかりません。ということで、ことしの試験は終わりましたが、もうしばらくバッハを楽しもうと思います。また句会でお目にかかるのを楽しみにしています。
by やぶ (2007-08-11 20:53) 

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