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ラヴェル/ダフニスとクロエ組曲(N響定期演奏会) [音楽]

このバレエ音楽(きょう演奏されたのは管弦楽版だが)をラヴェルに委嘱したディアギレフのロシア・バレエ団は,20世紀初頭の十数年間に,ラヴェル,ドビュッシー,ストラヴィンスキー,サティ,ファリャ,ピカソ(美術担当!),マリー・ローランサン(衣装担当!)といった才能をつぎつぎに起用し,世紀を代表する名曲を初演してきた。もしこのバレエ団の定期会員だったら,わずか10年ほどの間に「火の鳥」「ペトルーシュカ」「春の祭典」「ダフニスとクロエ」「三角帽子」などの世界初演を目撃することができたわけで,特定の場所や時間に歴史上の重要事件が集中するという現象の見本。

20世紀のオーケストラ曲らしく,チェレスタ,木琴,グロッケンシュピーゲルなどの打楽器が舞台に満載されているほか,今となってはなんとも古風な風音機(これにエオリフォンという名前をつけてしまうところは、さすがにフランス人)もはじめて見ることができた。そして背後には屏風のように栗友会合唱団がならんでいる。

第1番「戦いの踊り」で使われるバンダ(舞台以外で演奏される楽器)は、ホルン奏者とトランペット奏者が楽器を持って立ち去り、舞台裏でひとしきり吹き鳴らしてからまた戻ってくる趣向になっていて面白い。たしかに遠くで鳴っているように聞こえるし、こういう視覚的効果はCDではなかなかわからない。

また,長いアカペラのあいだにどうして音程が下がっていかないのか不思議でならない。楽器が入ってくるところでうまくつじつまを合わせているのだろうか。

第2番「全員の踊り」のリズムは,一度聞いたら忘れることのできない特異なものだが,これは何拍子になるのか…5拍子のようだが、アシュケナージはこのリズムをどう振るのだろうかと思っていたら、最初の3拍を三角に、あとの2拍を上下にタクトを動かしていた。3拍子+2拍子ということか(あとでタワーレコードに寄ってスコアを見たら、たしかに3/4拍子と2/4拍子が1小節おきに並んでいるのだ!)。それにしてもこのリズムは、どこかの國や地域に由来するものなのだろうか(ボレロがバスク地方の踊りであるように)まさか,ギリシャの音楽?。

しかし、きょう一番印象に残ったのは、そうしたオーケストレーションの精髄よりも、第2番「無言劇」の、フルート(ピッコロ?)の長い長いソロだった。節回しがどこか邦楽のようで、横笛を聴いているような錯覚を覚えるぐらい鋭い刃物のような音の出しかた(その部分はフルート特有のやわらかく震えるような音色でなく、キンキンしたきつい感じに聞こえた)。終演後に指揮者ではなくフルート奏者に舞台下手から花束がリレーされ、嵐のような拍手を受けていた。

(10.15追記)本屋へ行って岩波文庫の「ダフニスとクロエー」を探したが、いくら探してもない。分厚い総索引を引いてみたら、フランス文学ではなく、ギリシャ文学の番号をふられているのだった。…というか、実際にギリシャの人が書いた作品であるようだ。でも内容的には、けっこうリアルな話で、これを基準に考えると、ラヴェルのバレエはずいぶんきれいにまとめられているような気がする。


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