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年の瀬の焼売大王(12/29)・カフエ「マメヒコ」へのトリビュートその⑤ [雑感]

いつもお世話になっているマメヒコ飯店(「ウーダの谷のマメヒコ飯店」)のメニューには「焼売大王」という料理が載っているのだけど,ふだんは提供されないこの料理が年末の2日間だけ食べられるというので,ラストオーダーの20時ぎりぎりに駆け込む。

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なんでも,開店直前に考案されたのだそうだが,かなり大きなサイズの焼売に仕立てているのに豚ひき肉にまったく脂臭さがなく,大げさにいえば鶏ササミのひき肉のよう。ホエー豚恐るべし。ジューシーで生姜もよく効いている。ふだん焼売をいただくときは醤油と辛子をどっぷり付けてしまったりするのだけど,この焼売なら薄口醤油やぽん酢をちょっと垂らすだけでもいけそうな,そのぐらい一つ一つのパーツが上品でおいしい焼売だった。鶏鍋から鶏肉の団子と生姜とワンタンと白菜を取り出したような感じ…ちょっと違うか。

ほんの4ヶ月前には想像もできなかった状態で年末を迎えようとしている,この実験精神あふれるカフエが,スタッフの懸命な努力によって成り立っていることはもう何度も書いているけれども,先日,カウンターをはさんで話していて聞いたこんな言葉。

「朝早くから夜遅くまで店をあけるのは無論大変だけど,臨時休業とかで明かりが入っていない店を外から見ると,お店が息をしていないように感じる。特に,お正月のような長い休み明けになると,”すぐに明かりつけて,開けてあげるからね”とお店に言ってやりたくなる。」

経営者とか,この道一筋七十年みたいな料理人がそう言うならまだわかるのだけど,私よりずっと若いスタッフが,特に気負うでもなくそういう言葉をさらっとおっしゃるので,しびれてしまう。
これは愛社精神でもなく,職業を通じた自己実現とかでもなく,「場」に対する真摯な姿勢−役者が舞台に臨むような−とでもいうべきものだと思うが,それを普通のこととして言えるスタッフも凄いし,そういう人材を選抜し鍛えていく経営者や組織風土もまた敬意措くあたわず,である。

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そのマメヒコ飯店の理念について経営者のIさんは,「渋谷・宇田川町あたりで働いたり、暮らしたりしているみんなの,体を気遣う食堂です。」と話されている。

だいぶ以前から,コンビニやファストフードが日本の家庭の食生活をぐちゃぐちゃにしていることへの危機意識についてくり返し発言されており,自分の店のスタッフが多忙のあまりそうした店に依存せざるをえないことを嘆いて夕方の「スタッフ食事時間」を設けたりもしてきた。おそらく岩村暢子さんの『変わる家族 変わる食卓』(勁草書房)や『普通の家族がいちばん怖い』(新潮社)などを読んでおられるのだと思う。あれは実際,本当にぞっとするので,こういう店が増えてほしい。

考えてみれば,一昔前には「町の定食屋さん」っていっぱいあったと思うのだけど。このマメヒコ飯店の近くにも数年前まで「せきや食堂」というご飯やさんがあって,シラスおろしとか野菜炒めとか,おかずを単品で(組み合わせて)頼める食堂としてとても便利だった。そういう店がなくなってしまうというのは,むしろ文明が退化しているような。

そんなこんなで,スタッフの苦労はまだまだ続くのだろうけど,来年も体を壊さない程度にみなさん頑張って,次々に飛び出すアイデアで客を翻弄してほしい。
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