びわ湖チャリティー100km歩行大会敗退記(②当日編) [ウォーキング]
〔当日編〕
・台風直撃で開催が微妙なところ、午前6時の大会本部発表では「予定どおり開催」とのこと。目の前で降り続く雨に、あまり士気があがらない…というより、正直この雨では、中止になってほしかった。
・スタート地点の長浜市豊公園は雨。何人ぐらい出場するのだろう。受付でもらったゼッケンは「A4の紙」だった。去年までは「黄色のビブに番号を印刷したゼッケン」だったので、ビブをもらえると勝手に思い込んでいたのだけど、紙と安全ピンを手渡されて当惑。雨合羽の上から安全ピンで止めたら、生地に穴があいてしまうが…考えた末、バックパックのチェストハーネスに固定すればいいことに気づく。
・午前8時半ごろ雨があがり、開会式と写真撮影のあと9時スタート。最初の5kmは、1キロ11分を切るハイペースで通過。このペースで最後までもつのか?
・9.3kmあたりから雨が降りはじめる。ここから先、最後までずっと雨だった。
・15kmのすこし手前、倉庫か事務所かの大きな庇の下に立ち止まり、バックパックからトレッキングポールを取り出す。人で混み合うスタート直後は避けて途中から使おうと考えていたのだが、実際にはスタート直後でもそれほど詰っておらず、それなら最初から手に持っていたほうがよかったかも。
・18.3km 右足内くるぶしが靴に当たって痛いので、靴紐を緩めるためのベンチを探す…が、みつからないのでコンビニの軒先の石に座って緩める。隣で休んでいる選手と買物客が「何時にスタートしたの?」「どこまで歩くの?」と会話を交わしているのをぼんやり聞きながら、まだ3時間ちょっとしか経ってないのか…と考える
・20km ほぼ同じペースで2mぐらい後ろをついてくる女性がひとり。風はそれほど強くないが、2時の方向、びわ湖から吹いている。風除けとして、この痩躯がお役に立てているのだろうか…
・25km 右側にびわ湖の汀が続く美しい景色だが、それを楽しむ余裕はない。風が弱いのが不幸中の幸い。靴の中に水がしみはじめていることに気づく。どこかでベンチを見つけて、ソックスを替えよう。
・27km さきほどの女性に先行してもらい、道路沿いの公園のあずまやに腰掛けてソックスを交換する。しかし2キロも歩かないうちに再びしみはじめ、30km手前で靴の中全体がぐしゃぐしゃになってしまう。この時点で、完走は無理と判断する(ソックスの替えはたくさんあるが、靴の替えがない)。ミニようかんの包装も、雨でふやけてしまっている(中身はアルミ箔のパックなので問題ない)。
・32km 第1チェックポイント。午後3時より前に着けるかな?遠くにファミリーマートの看板が見えてくるが、なかなか近づいてこない。やっとたどりつくと、コンビニの駐車場にいくつものテントが張られ、オレンジ色のジャケットを着たスタッフと着ぐるみ(←雨の中で大変そう)が迎えてくれる。ゼッケンの隅に印刷されているQRコードをスタッフがスキャナーで読み取ると、それが記録化されるというハイテク。スタートから6時間弱、14時58分51秒に到達。想定ペース(a)でも15時24分到着だったので、それより25分あまりも早い到着。ちょっと飛ばしすぎか。
ここでリタイアしようかとも考えたが、荷物は第2チェックポイントに置いてあって、そこまで車で運んでもらうのも大変なので、このまま歩き続けることにする。
食事をいただく。バナナ(とてもおいしい)にマジックで「もう3分の1まで来ました。すごい!」と書いてあって、確かに3分の1歩いたのだね…と気づく。ほかに地元産のお饅頭とウエハースをいただき、いずれも一気に食べてしまう。ビバ炭水化物。
・じっとしていると足が痛くなるので、早々に雨の中を出発。前にも後ろにもほとんど人がいない。
・35km こんどは女性(先刻とは別の女性)の後ろについて、ほぼ同じスピードで歩く形になる。歩道が狭いので、遠慮されて「先に行かれますか?」と尋ねられるが、「ほぼ同じスピードなので、このまま行かせてください」とお願いする。そうこうするうち38km地点を通過したので、「次のチェックポイントまで、あと15kmですね…」などと話す。やがて少しずつこちらが先行し、振り向いても姿が見えなくなる。
・40km 歩道の幅いっぱいの深い水溜りがつぎつぎに現れる。最初のうちは道路脇の草むらを歩いていたが、それも疲れるので、水溜りの端を選んで歩くようにしたが、ずぼっと水にはまってしまう箇所がところどころにあり、いっそう靴が水浸しになる。靴の中で足がふやけていくのが感じられる。最悪。
・41.5km エイドステーションでおにぎり2個と豚汁をいただく。おいしい。薄暗くなってきたので、ここからヘッドランプを点灯する。このあたりから、道路脇の人家や商店がなくなってくる。今のペースでいくと第2チェックポイントに何時ごろ到着するか、頭の中で計算を繰り返しながら歩く。
・43km 第2チェックポイントまであと10km。心の中で「あと11km、あと10km…」とカウントダウンしながら必死で歩く(ペースはあまり落ちていない)。きょうの日没は17時14分で、あっという間に道路は真っ暗になる。街路灯がないので、ヘッドランプで歩道の水溜りを見分けながら歩くという苦行。車道を歩けば水溜りは避けられるのだけど、これは危険(実際、クラクションを鳴らされる)。
・46.6km 雨と暗闇の中にローソンの灯火が現れる。入り口にオレンジ色のスタッフが1人立って、道行く選手を応援している。たいそう心強く感じる。沿道のところどころに気温が表示されているが、どの表示もずっと17度で、上がりも下がりもしない(まさか故障しているわけではあるまい)。これはむしろ助かる。
・51km 長い橋を渡る。真っ暗であることに加え、高さがあってけっこう怖い。あと2キロ、あと2キロ…と念仏のように唱えながら歩く。自分の吐いた息が白い湯気になって自分に向かってくる。
・53km 無人の信号の先に、突然チェックポイントのテント群が見えてくる。スタッフが元気よく出迎えてくれる。いま18時58分だから、10時間を切っている。テントに入るとゼッケンのQRコードを読み取るかわりに番号札を渡してくださるので「?」と思うが、チェックポイント自体が19時オープンというので納得。19時とともに番号札の順に呼び出され、コードを読み取ってくれる。公式計時は19時03分02秒だから、タイムは10時間03分02秒となる。想定ペース(a)では19時36分と計算していたので、それより30分以上も早い。
スタッフのみなさんが、名前入りの応援メッセージカードを「お守りです!」と手渡してくださる。大変ありがたい。
番号札の数字=現時点の順位(暫定順位)は27位と意外な好成績なので、このまま歩き続けようかとも思ったが、これより先でリタイアすると、荷物がゴール地点に運ばれているので、朝までどこかで待機した上に自力でゴールへ行って荷物を回収しなければならず大変だ。やはりここで荷物を受け取ってリタイアすることを決め、大会本部に申告する。これにて敗退。
・荷物を抱えて近くのバス停から路線バスに乗り、JRの最寄駅まで15分ぐらい放心。駅に着いて座席から立ち上がろうとしたら、足が痛くて立ち上がれない。やはり体を動かし続けていないとだめなのだろう。そこから先は全部エレベーターとエスカレーターを頼りに、新幹線のホームまでたどり着く。車内で筋肉痛が爆発。
(余談。バスの中から外を見ていたら、第2チェックポイントから1キロぐらい(54km地点あたり)のところに大きなショッピングセンターがあって(これは事前にわかっていた)、その外壁に「LOGOS」というアウトドアショップの大きな緑色のネオンサインが光っていた。リタイアせずにこの店まで歩いていって新しいゴム長靴を買い、足を乾かしてからその靴で歩きつづけることができたかもしれない。とはいうものの、買ったばかりの靴でいきなり46kmも歩く(しかも、今まで履いていた靴を背負って)のは、酔狂の度が過ぎるというものだろう。)
・台風直撃で開催が微妙なところ、午前6時の大会本部発表では「予定どおり開催」とのこと。目の前で降り続く雨に、あまり士気があがらない…というより、正直この雨では、中止になってほしかった。
・スタート地点の長浜市豊公園は雨。何人ぐらい出場するのだろう。受付でもらったゼッケンは「A4の紙」だった。去年までは「黄色のビブに番号を印刷したゼッケン」だったので、ビブをもらえると勝手に思い込んでいたのだけど、紙と安全ピンを手渡されて当惑。雨合羽の上から安全ピンで止めたら、生地に穴があいてしまうが…考えた末、バックパックのチェストハーネスに固定すればいいことに気づく。
・午前8時半ごろ雨があがり、開会式と写真撮影のあと9時スタート。最初の5kmは、1キロ11分を切るハイペースで通過。このペースで最後までもつのか?
・9.3kmあたりから雨が降りはじめる。ここから先、最後までずっと雨だった。
・15kmのすこし手前、倉庫か事務所かの大きな庇の下に立ち止まり、バックパックからトレッキングポールを取り出す。人で混み合うスタート直後は避けて途中から使おうと考えていたのだが、実際にはスタート直後でもそれほど詰っておらず、それなら最初から手に持っていたほうがよかったかも。
・18.3km 右足内くるぶしが靴に当たって痛いので、靴紐を緩めるためのベンチを探す…が、みつからないのでコンビニの軒先の石に座って緩める。隣で休んでいる選手と買物客が「何時にスタートしたの?」「どこまで歩くの?」と会話を交わしているのをぼんやり聞きながら、まだ3時間ちょっとしか経ってないのか…と考える
・20km ほぼ同じペースで2mぐらい後ろをついてくる女性がひとり。風はそれほど強くないが、2時の方向、びわ湖から吹いている。風除けとして、この痩躯がお役に立てているのだろうか…
・25km 右側にびわ湖の汀が続く美しい景色だが、それを楽しむ余裕はない。風が弱いのが不幸中の幸い。靴の中に水がしみはじめていることに気づく。どこかでベンチを見つけて、ソックスを替えよう。
・27km さきほどの女性に先行してもらい、道路沿いの公園のあずまやに腰掛けてソックスを交換する。しかし2キロも歩かないうちに再びしみはじめ、30km手前で靴の中全体がぐしゃぐしゃになってしまう。この時点で、完走は無理と判断する(ソックスの替えはたくさんあるが、靴の替えがない)。ミニようかんの包装も、雨でふやけてしまっている(中身はアルミ箔のパックなので問題ない)。
・32km 第1チェックポイント。午後3時より前に着けるかな?遠くにファミリーマートの看板が見えてくるが、なかなか近づいてこない。やっとたどりつくと、コンビニの駐車場にいくつものテントが張られ、オレンジ色のジャケットを着たスタッフと着ぐるみ(←雨の中で大変そう)が迎えてくれる。ゼッケンの隅に印刷されているQRコードをスタッフがスキャナーで読み取ると、それが記録化されるというハイテク。スタートから6時間弱、14時58分51秒に到達。想定ペース(a)でも15時24分到着だったので、それより25分あまりも早い到着。ちょっと飛ばしすぎか。
ここでリタイアしようかとも考えたが、荷物は第2チェックポイントに置いてあって、そこまで車で運んでもらうのも大変なので、このまま歩き続けることにする。
食事をいただく。バナナ(とてもおいしい)にマジックで「もう3分の1まで来ました。すごい!」と書いてあって、確かに3分の1歩いたのだね…と気づく。ほかに地元産のお饅頭とウエハースをいただき、いずれも一気に食べてしまう。ビバ炭水化物。
・じっとしていると足が痛くなるので、早々に雨の中を出発。前にも後ろにもほとんど人がいない。
・35km こんどは女性(先刻とは別の女性)の後ろについて、ほぼ同じスピードで歩く形になる。歩道が狭いので、遠慮されて「先に行かれますか?」と尋ねられるが、「ほぼ同じスピードなので、このまま行かせてください」とお願いする。そうこうするうち38km地点を通過したので、「次のチェックポイントまで、あと15kmですね…」などと話す。やがて少しずつこちらが先行し、振り向いても姿が見えなくなる。
・40km 歩道の幅いっぱいの深い水溜りがつぎつぎに現れる。最初のうちは道路脇の草むらを歩いていたが、それも疲れるので、水溜りの端を選んで歩くようにしたが、ずぼっと水にはまってしまう箇所がところどころにあり、いっそう靴が水浸しになる。靴の中で足がふやけていくのが感じられる。最悪。
・41.5km エイドステーションでおにぎり2個と豚汁をいただく。おいしい。薄暗くなってきたので、ここからヘッドランプを点灯する。このあたりから、道路脇の人家や商店がなくなってくる。今のペースでいくと第2チェックポイントに何時ごろ到着するか、頭の中で計算を繰り返しながら歩く。
・43km 第2チェックポイントまであと10km。心の中で「あと11km、あと10km…」とカウントダウンしながら必死で歩く(ペースはあまり落ちていない)。きょうの日没は17時14分で、あっという間に道路は真っ暗になる。街路灯がないので、ヘッドランプで歩道の水溜りを見分けながら歩くという苦行。車道を歩けば水溜りは避けられるのだけど、これは危険(実際、クラクションを鳴らされる)。
・46.6km 雨と暗闇の中にローソンの灯火が現れる。入り口にオレンジ色のスタッフが1人立って、道行く選手を応援している。たいそう心強く感じる。沿道のところどころに気温が表示されているが、どの表示もずっと17度で、上がりも下がりもしない(まさか故障しているわけではあるまい)。これはむしろ助かる。
・51km 長い橋を渡る。真っ暗であることに加え、高さがあってけっこう怖い。あと2キロ、あと2キロ…と念仏のように唱えながら歩く。自分の吐いた息が白い湯気になって自分に向かってくる。
・53km 無人の信号の先に、突然チェックポイントのテント群が見えてくる。スタッフが元気よく出迎えてくれる。いま18時58分だから、10時間を切っている。テントに入るとゼッケンのQRコードを読み取るかわりに番号札を渡してくださるので「?」と思うが、チェックポイント自体が19時オープンというので納得。19時とともに番号札の順に呼び出され、コードを読み取ってくれる。公式計時は19時03分02秒だから、タイムは10時間03分02秒となる。想定ペース(a)では19時36分と計算していたので、それより30分以上も早い。
スタッフのみなさんが、名前入りの応援メッセージカードを「お守りです!」と手渡してくださる。大変ありがたい。
番号札の数字=現時点の順位(暫定順位)は27位と意外な好成績なので、このまま歩き続けようかとも思ったが、これより先でリタイアすると、荷物がゴール地点に運ばれているので、朝までどこかで待機した上に自力でゴールへ行って荷物を回収しなければならず大変だ。やはりここで荷物を受け取ってリタイアすることを決め、大会本部に申告する。これにて敗退。
・荷物を抱えて近くのバス停から路線バスに乗り、JRの最寄駅まで15分ぐらい放心。駅に着いて座席から立ち上がろうとしたら、足が痛くて立ち上がれない。やはり体を動かし続けていないとだめなのだろう。そこから先は全部エレベーターとエスカレーターを頼りに、新幹線のホームまでたどり着く。車内で筋肉痛が爆発。
(余談。バスの中から外を見ていたら、第2チェックポイントから1キロぐらい(54km地点あたり)のところに大きなショッピングセンターがあって(これは事前にわかっていた)、その外壁に「LOGOS」というアウトドアショップの大きな緑色のネオンサインが光っていた。リタイアせずにこの店まで歩いていって新しいゴム長靴を買い、足を乾かしてからその靴で歩きつづけることができたかもしれない。とはいうものの、買ったばかりの靴でいきなり46kmも歩く(しかも、今まで履いていた靴を背負って)のは、酔狂の度が過ぎるというものだろう。)
びわ湖チャリティー100km歩行大会敗退記(①事前準備編) [ウォーキング]
(上の画像は大会公式ホームページから引用)
10月21-22日に滋賀県で開催された、この「びわ湖チャリティー100km歩行大会」(通称「びわ100」)に出場したが、53km地点であえなくリタイア。以下、来年に向けた反省と備忘録を兼ねて、この大会について感じたことを。
〔事前準備編〕
・100キロウォークの大会は数多くあるが、
①制限時間がキツくない(30時間30分(ちなみに、24時間制限の大会が多い))
②ルートがほぼ平坦
③中間地点(53km)で荷物の入れ替えが可能(預けた荷物をピックアップして、着替えや補給ができる)
④開催時期が暑くも寒くもない
⑤沿道の景色がよさそう
と好条件が揃ったこの大会が楽しそうと判断。ちなみに1週間後に開催される三河湾100kmチャリティー大会も①②④⑤は同じなのだが、③が決め手になって、この大会を選ぶ。
・事前に送付されたルートマップを熟読し、
(a) 1kmを12分(時速5km)
(b) 1kmを13分20秒(時速4.5km)
(c) 1kmを15分(時速4km)
の3パターンで、どの地点を何時に通過するかをシミュレーション。どのパターンでも制限時間内にゴールに到着できるが、トレーニング時の記録から考えて、(a)のペースで最後まで歩くのは自分には難しそうなので、
●第1チェックポイント(32km地点)までは(a)のペースを目標に、
●そこから先は、(b)を目標としつつ、(c)を下回らない程度のスピードで
歩き続けることにする。この場合、(a)+(c)の合計タイムは21時間31分なので、午前6時30分ごろゴールする計算になる(スタートは午前9時)が、休憩や信号待ちなどのロスタイムを10キロにつき10分ずつ計100分見込むと、以上の合計は23時間11分で午前8時10分ごろゴールできればいいという皮算用。
・1週間前に発表された週間天気予報では土曜・日曜とも晴れ。喜んだのもつかの間、16日(わずか5日前!)に発生した台風21号が日本列島に近づくにつれて、どんどん曇り→雨に予報が変わってゆく。全行程雨がほぼ確実となったのが2日前。がっかり。
・行動食は、六甲縦走と同じくミニようかんとカステラボールを10個ずつ。5kmごとにようかんとカステラを交互に食べていくと、20個合計でおよそ3400kcalの補給が可能な計算。これにルート上のエイドステーションでいただく食物を足して、だいたい4000kcalぐらい食べることになるが…
・ハイドレーションは1.5リットルのソフトパックを用意し、第2チェックポイントで補充することで前後半あわせて3リットルを給水するほか、不足分は沿道の自販機やコンビニで調達する計画。
・バックパックは10リットルのトレラン用を使う。ハイドレーションの他は、替えのソックスとソフトシェルジャケットだけを収容。雨だとザックカバーをかけるから、頻繁に開け閉めできないので、ショルダーハーネスにポケットを2つくくりつけ、ここに財布とiPhoneを収容する。ウエストベルトのポケットには行動食とレジ袋(ゴミ袋)を入れる。
・前日の予報で、全行程雨、それも強い雨(時間あたり5ミリとか6ミリとか)と判明し、気分が盛り下がる。ふだん使うウォーキング用の靴をやめて、雨用の靴1足とソックス多数を持参することにする。しかしこの靴、5年前にCoast to Coastで使った靴で、かなり時間がたっているので耐水性に不安があるのと、この(重い)靴で全然トレーニングしていないのが不安。
・iPhoneのアプリケーション「Geographica」を購入し、歩行のログをとることにする。歩行中は国土地理院の1:25000地図に現在位置を表示してくれ、歩行後には平均速度、最高速度、累積高低差などを表示してくれる優れたアプリケーションで、前作「DIY GPS」では自分の歩くルートの2万5千図をスキャナーで読み込み、iPhoneに保存しておく必要があったところ、あらかじめwebで読み込んでキャッシュしてくれるのですごく準備が楽になった。
・前日の新幹線で米原経由長浜へ。この日は概ねいい天気で、開催がもう1日早ければと残念。
2013六甲全山縦走大会(11/23) [ウォーキング]
六甲全縦について書くと、アクセスがとても多くなる。何かの参考にしてくださっている方がいるのだろうか。
これまでの先着順が今年から抽選になったこの大会だが、くじ運に恵まれて当選し、2010年・2011年・2012年に続く4回目の参加が決まった。ちょっとずつトレーニングをするが、まあ気休め。1週間前から、週間天気予報をにらんで思案する。幸いにも、23日の兵庫県南部の天気は、1週間前の予報からずっと
晴時々曇、降水確率20%、最高気温15度・最低気温8度
でびくともしない。しかも天気図を見ると、1026hpaの強力な高気圧が東へ進んでくる。これで過去2年のような雨の心配はなさそうなので、思い切って荷物を減らし、長袖Tシャツ+スタビライクス+ショートパンツで行くことにする。2012年の13時間02分から、少しでもタイムが縮められるとよいが。
(21日9時発出の48時間後予想図)
今年も補給はカステラボールとレモンスライス、とらやのようかんとハイドレーション。出発地点近くの宿に前泊し、給水の用意をして早めに寝るが、同行者が到着するたびについつい話し込んでしまうので、結局寝不足のまま。宿を出て、スタート地点へ。
(須磨浦公園→鵯越駅(16.2km地点))
先頭から25メートルぐらいの場所に並び、5時03分ごろスタート。これまでにないハイペースで前半の3つの山を越えていく。もう1週間近く雨が降っていないので足元はしっかりしているが、逆に参加者の巻き上げる砂埃がヘッドランプに照らされて、なんだか粉の中を歩いているような気分。いつも夜が明け始める高倉台団地も、その先の四百階段も、きょうはまだ闇の中。ほとんど渋滞がないので快調にすすむが、逆にペースダウンすることができず、「横尾山ってこんなに苦しかったかな…」と思いながら歩く。横尾山からの下りでようやく明るくなり、ヘッドランプを外す。妙法寺小学校の信号が赤だったので、この間を利用してTシャツの上のフリースを脱ぐと、同行者が「やぶさん、背中から湯気が出ていますよ!」と驚く。すでに大汗をかいているが、ここからは長袖Tシャツ1枚で摩耶山頂まで歩く。
不思議なことに、麓の住宅地より山の上のほうが温かい。単に日が当たり始める時刻が早いからかと思っていたが、木陰でも山の上のほうが温かく、空気も乾いているのはなぜだろう。
高取神社の先にある茶屋には、毎年「元気の出るバナナが、1本たったの50円!」と声をはりあげている2人組の女の子が立っていたのだが、今年はバナナを売ってはいるものの、例の名調子が聞けず、ちょっとがっかり。急ぎ足で、しかし走ることなく丸山町の「貸文化」や「蔦の一軒家」を通過し、いつも紅葉の写真を撮る鵯越駅手前のコンビニで立ち止まると、なんとシャッターが下りて廃業している。一度も店に入ったことはなかったけれど、去年まではたくさんの参加者がレジに列をつくっていたのに、なんとも冬ざれた景色。時計を見るとまだ7時45分で、スタートから2時間42分しか経っていない。去年より50分も早い。こんなペースではとても最後までもたないし、ここから菊水山、鍋蓋山、摩耶山と一番きつい登りにさしかかるので、ゆっくりと、しかし立ち止まらず歩き続けることを確認してストックを用意する。
(鵯越駅→菊水山(19.5km地点)→市が原(24.5km地点))
水道局ポンプ場の周辺は例年なら紅葉が見事なのだけど、まだ黄葉も紅葉もしていない。菊水山に登り始めると、尾根をまっすぐ登る階段と岩登りの連続なので、すぐ息が切れる。それでもなんとか登りつづける。地元登山会の立てた「あと900メートル」の看板を見てから山頂まで30分ぐらいかかるのが通例なので、あとxx分ぐらい歩けば…と思いながら歩いていると、やがて山頂から「もう少しですよ~」というボランティアの方の声が聞こえてきて、25分ぐらいで着いてしまう。荒い息をしながらチェックポイントのスタンプを押してもらい、いつも配付されているビニール袋を受け取る。まだ8時55分で、スタートから3時間52分。これまでで一番早かった2011年の4時間38分より46分早い。
菊水山から東方向を眺めるとすぐ隣に鍋蓋山が見えるのだけど、そこへたどり着くまでにはいったん、有馬街道の谷へ降りてゆかなければならない。菊水山の標高(458.8m)と鍋蓋山(486m)の標高はほぼ同じなので、天王吊橋がもっと高い位置にかかっていてくれたら…と思う参加者は多いはず(2万5千図では、270mぐらいのところに吊橋がかかっている)。鍋蓋山の登りも最初はしんどいが、途中からは森の中の明るい道になるので気分がよい。あとはどんどん降りてゆくだけ。’再度越’の道と合流して一般ハイカーとすれちがいながら大龍寺の山門まで来たが、いつもたくさんいるお弁当部隊が全然いない。
それもそのはず、まだ午前10時を過ぎたばかり。ずいぶん早く摩耶山頂に着いてしまいそうだ。「正午より前に摩耶山頂に着くことはない」と断言していたので、補給部隊に訂正の電話を試みるがうまくいかない。代わりにメールを送ったが、着いているか不明。市が原まで多少ゆっくり下って市が原に10時20分。スタートから5時間17分なので、去年より1時間以上早くなっている。
(市が原→摩耶山頂(28.7km地点))
市が原から摩耶山頂までの最難関区間を地道に歩き続けるため、2万5千図を何度も読んでだいたいのペース配分を考えておいた。市が原の先の登山道取り付き(標高260m)から尾根に上がり、ハーブ園分岐(420m)までが最初の3分の1で、ここはまず無難にこなす。ここから学校林道分岐(555m)までが難関で、一度390ぐらいまで下り、資材運搬用のケーブルをくぐってから(今年は撤去されていたが)一気に稲妻坂を上る。これが全行程で一番きつい。今年は幸い、神戸市民とおぼしきご夫婦が「学校林道まであと○○ぐらい」とか話しながら先を歩いてくれたので、なんとかついていくことができた。
学校林道分岐から摩耶山頂までは、距離は長いが、平坦な道と登りが交互に現れるのでずっと楽になる。この区間で特に急な登りは、アドベンチャーロード分岐(600m)から摩耶山頂(700m)までの間だけ。問題は、ほぼ最後まで摩耶山頂の位置が見えないこと。この先どのくらいの位置に山頂があるかを知って歩かないと、もうすぐ山頂と思っては裏切られ…の連続になってしまう。
ところどころで抜き抜かれを繰り返しつつ、立ち止まらずに摩耶山頂に着いてみると、なぜかチェックポイントのテントに列ができている。何だこれは?
「チェックポイントが正午に開くのを待っている」ことが判明。ストップウォッチを止めて時計を見ると11時35分。スタートから6時間32分で到達。去年より1時間15分早い…というか早過ぎ。無事に補給部隊と合流し、時計が止まっている25分間で着替えて栄養補給。バナナとウィダーインゼリー、和菓子、そしてホットレモン3杯を一気に摂取し、ハイドレーションをソフトボトルごと交換して12時05分再スタート。山上はうららかな陽気で、少し暑いぐらい。
(摩耶山頂→六甲山小学校(35km地点))
オテル・ド・摩耶の玄関前に今年もモンベルの売店が出ている。「きょうは暖かいから、店番もいいですね」と声をかけると、「暖かいと何も売れないので困りますよ~」とのこと。なるほどそれはそうかもしれない。寒風ふきすさぶ摩耶山のほうが、ネックウォーマーとか手袋とか帽子を売るには好都合だろう。
どこかで靴に入り込んだ小石がだんだんつま先へ移動してきて痛いので、山上道路に出たところにあるベンチに座って取り除き、靴ひもをとゲイターを締め直す。きつい登りはもうほとんどないので、今度はきつめに締め直す。さっきまとまった量の補給をしたので、恒例藤原商店のあんまんはスキップし、YMCAの紅茶に心惹かれつつひたすら歩き続ける。六甲山郵便局の甘酒を一口だけいただいて体を温め、さらに東へ進む。六甲山小学校の前を13時すぎに通過。
(六甲山小学校→一軒茶屋(39.0km地点))
通過するたびに、「六甲山小学校」という響きがいいなぁと思う。「私の母校は、神戸市立六甲山小学校です」なんて。京都の番組小学校もいいけど、六甲山小学校もいいですね。
神戸GCの金網の中を歩いていると、近くのティーグラウンドにいるゴルファーが「あの人らは宝塚まで歩くんやで」「あと何時間ぐらい歩くんかな」と言いあっているのが聞こえる。ふふ。
土曜日のせいか、六甲ガーデンテラスはすごい人出。カップルや家族連れにぶつからないように歩くのが大変。当方は最短距離で広場を横切りたいので何度もぶつかりそうになるが、ハイドレーションをくわえた風体が異様に見えるのか、よけてくださるのが有難い。「何が楽しくてそんなことを…」と思っているだろうなぁ。
去年まで東六甲にあったチェックポイントは、ことし一軒茶屋の先に移設されている。時間の比較ができないが、スタートから8時間45分。
(一軒茶屋→大谷乗越(49.0km地点))
右膝が本格的に痛みはじめたので、同行者には先に行ってもらう。
東六甲分岐点から一人で山道に入るが、緩やかな上り下りはゆっくり歩ける一方で、船坂峠前後の急な下りで右膝が言うことをきかない。普通の下りなら左膝だけで進むことができるのだけど、鎖場のような急な下りでは両足をフルに使わなければ安全が確保できないわけで、しかも足元はすべりやすいし、なかなか困った事態。ここへ来てこれまでの半分ぐらいのスピードにペースダウン。しかし1週間雨が降っていないのにぬかるんでいる箇所って、普段は一体どうなっているのか。
分岐点から船坂峠までの3キロの遠いこと遠いこと。トレラン風のいでたちをした参加者がどんどん追い抜いていくのだけど、ここまで来てまだ走る元気があることに感心する。また、ローカットでゲイターもつけていない方が多いけど、靴の中が石だらけになったりはしないのだろうか。船坂峠から大谷乗越までの3キロは、これまで常に日没後だったところ、初めて明るいうちに通る区間だが、作業道路から大谷乗越までの最後の急な下りで、はるか下に道路が見えてげんなりする。石をつたいながら崖を下りていくような感じ。どんどん抜いてもらいながらなんとか下りきったが、下りきって道路を横切るべき個所でその道路に傾斜がついているため、坂の下へずり落ちるように斜めに横断してしまい、ボランティアの皆さんに驚かれる。体のコントロールがかなり怪しくなってきている。
(大谷乗越→塩尾寺(53.0km地点))
この区間は過去3回つねに真っ暗だったので、明るいうちに歩くのは初めて。森の中の静かなトレイルで、急な登り降りもほとんどなく膝に負担もかからないので、穏やかな気分で歩くことができる。いつもなら暗夜の灯台のように見えるボランティアのみなさんのテントとカンテラも、今日はまだのんびりした雰囲気。高圧線の下をくぐるポイントは、宝塚と大阪平野の夜景がきれいに見えるところだが、きょうはいちめんに夕陽を浴びて美しく輝いている街並みが見える。
塩尾寺まで1キロぐらいになると、ふたたび急な下り。もっぱら左足だけで下りていくが、どうしても右足で踏み込まないといけない箇所にかかるたびにひどい痛み。どんどん抜かれていく。塩尾寺はまだか…と思いながら下りていくとやがて左側に赤い鳥居が見え、最後の200メートル。1段下りるごとにぐぐぐと声が出るほど膝に響く。緑色の土嚢が見え、道が左に曲がって最後の数段を這うように下り、塩尾寺へ。まだ明るいので、山門が開いている!この4キロに何分かかるかで自分の減速ぶりを測ろうと考えていたが、ほぼ50分で到達したので、まだ時速4キロぐらいは出ている勘定になる。
(塩尾寺→宝塚ゴール(56.0km))
右膝がずきずき痛み、まったく踏ん張りがきかないので、歩幅30センチぐらいでゆっくり進む。途中で補給部隊に電話をかけ、到着が大幅に遅れそうだと連絡したところ、甲子園大学の先まで前進してきていて、これは大いにありがたい。代わりに歩いてもらうことはできないが、後ろ向きに歩いて(膝と脛の負担がずっと軽い)、右とか左とか指示してもらえるのでずっと楽になる。薄暮の町を時速2キロぐらいでよろよろ歩き、インド料理屋とローソンの間を曲がってゴールへ。ヘッドランプをポケットに入れていたが、とうとう最後まで使わず。最後の階段をなんとか通り抜けてゴールすると、参加証に印刷されている住所を見て「遠くからお疲れさまでした」と声をかけてくださる。
大会スタッフから認定証と記念品をいただき、緑色の反射材をお返ししてストップウォッチを止めると、11時間49分。去年より1時間13分短縮し、目標としていた12時間を切ることもできたが、右膝がパンクしていなければ11時間台前半だったと思われ、達成感と残念感が相半ばする結果に。まぁしかし、完走できただけでもよかった。
初参加した2010年以降の推移は、
2010年 14時間29分
2011年 14時間19分 (10分短縮)
2012年 13時間02分 (77分短縮)
2013年 11時間49分 (73分短縮)
となるが、時間はともかく、長時間歩きつづけることは、気分をハイにする作用―それも、かなり強力な作用―があるように思われる。おそらく、右足と左足を交互に前に出すという単純な動作が、別な何かを考え続ける効果をもたらし、その別な何かと、だんだんゴールに近づいていく高揚感がミックスされてこういうことになるのであろう。もっとも、70時間、80時間と歩き続けたらどうなるかはわからないが。
(12.2追記)
大会を運営しているボランティアの皆さんも、きょうのような暖かい日で少しは負担が軽減されただろうかと思う。去年、おとししと雨だっただけに、同じ場所でじっとしている方が大変なのではないかと。来年以降、抽選に外れたらボランティアとして参加するのも悪くないかもしれない。
また、ゴール地点の宝塚での宝塚市民有志の歓迎イベントも年々立派になっていて、とても感じがよい。足湯とか豚汁とかのふるまいの横に、地元名産品をお土産に販売するのはいいアイディアだと思う。ことしは大きな鳥の着ぐるみが出ていたので記念写真を撮ってもらい「これは宝塚市のキャラクターですか?」と尋ねたところ、兵庫県のマスコットなのだそうだ。へぇ。
これまでの先着順が今年から抽選になったこの大会だが、くじ運に恵まれて当選し、2010年・2011年・2012年に続く4回目の参加が決まった。ちょっとずつトレーニングをするが、まあ気休め。1週間前から、週間天気予報をにらんで思案する。幸いにも、23日の兵庫県南部の天気は、1週間前の予報からずっと
晴時々曇、降水確率20%、最高気温15度・最低気温8度
でびくともしない。しかも天気図を見ると、1026hpaの強力な高気圧が東へ進んでくる。これで過去2年のような雨の心配はなさそうなので、思い切って荷物を減らし、長袖Tシャツ+スタビライクス+ショートパンツで行くことにする。2012年の13時間02分から、少しでもタイムが縮められるとよいが。
(21日9時発出の48時間後予想図)
今年も補給はカステラボールとレモンスライス、とらやのようかんとハイドレーション。出発地点近くの宿に前泊し、給水の用意をして早めに寝るが、同行者が到着するたびについつい話し込んでしまうので、結局寝不足のまま。宿を出て、スタート地点へ。
(須磨浦公園→鵯越駅(16.2km地点))
先頭から25メートルぐらいの場所に並び、5時03分ごろスタート。これまでにないハイペースで前半の3つの山を越えていく。もう1週間近く雨が降っていないので足元はしっかりしているが、逆に参加者の巻き上げる砂埃がヘッドランプに照らされて、なんだか粉の中を歩いているような気分。いつも夜が明け始める高倉台団地も、その先の四百階段も、きょうはまだ闇の中。ほとんど渋滞がないので快調にすすむが、逆にペースダウンすることができず、「横尾山ってこんなに苦しかったかな…」と思いながら歩く。横尾山からの下りでようやく明るくなり、ヘッドランプを外す。妙法寺小学校の信号が赤だったので、この間を利用してTシャツの上のフリースを脱ぐと、同行者が「やぶさん、背中から湯気が出ていますよ!」と驚く。すでに大汗をかいているが、ここからは長袖Tシャツ1枚で摩耶山頂まで歩く。
不思議なことに、麓の住宅地より山の上のほうが温かい。単に日が当たり始める時刻が早いからかと思っていたが、木陰でも山の上のほうが温かく、空気も乾いているのはなぜだろう。
高取神社の先にある茶屋には、毎年「元気の出るバナナが、1本たったの50円!」と声をはりあげている2人組の女の子が立っていたのだが、今年はバナナを売ってはいるものの、例の名調子が聞けず、ちょっとがっかり。急ぎ足で、しかし走ることなく丸山町の「貸文化」や「蔦の一軒家」を通過し、いつも紅葉の写真を撮る鵯越駅手前のコンビニで立ち止まると、なんとシャッターが下りて廃業している。一度も店に入ったことはなかったけれど、去年まではたくさんの参加者がレジに列をつくっていたのに、なんとも冬ざれた景色。時計を見るとまだ7時45分で、スタートから2時間42分しか経っていない。去年より50分も早い。こんなペースではとても最後までもたないし、ここから菊水山、鍋蓋山、摩耶山と一番きつい登りにさしかかるので、ゆっくりと、しかし立ち止まらず歩き続けることを確認してストックを用意する。
(鵯越駅→菊水山(19.5km地点)→市が原(24.5km地点))
水道局ポンプ場の周辺は例年なら紅葉が見事なのだけど、まだ黄葉も紅葉もしていない。菊水山に登り始めると、尾根をまっすぐ登る階段と岩登りの連続なので、すぐ息が切れる。それでもなんとか登りつづける。地元登山会の立てた「あと900メートル」の看板を見てから山頂まで30分ぐらいかかるのが通例なので、あとxx分ぐらい歩けば…と思いながら歩いていると、やがて山頂から「もう少しですよ~」というボランティアの方の声が聞こえてきて、25分ぐらいで着いてしまう。荒い息をしながらチェックポイントのスタンプを押してもらい、いつも配付されているビニール袋を受け取る。まだ8時55分で、スタートから3時間52分。これまでで一番早かった2011年の4時間38分より46分早い。
菊水山から東方向を眺めるとすぐ隣に鍋蓋山が見えるのだけど、そこへたどり着くまでにはいったん、有馬街道の谷へ降りてゆかなければならない。菊水山の標高(458.8m)と鍋蓋山(486m)の標高はほぼ同じなので、天王吊橋がもっと高い位置にかかっていてくれたら…と思う参加者は多いはず(2万5千図では、270mぐらいのところに吊橋がかかっている)。鍋蓋山の登りも最初はしんどいが、途中からは森の中の明るい道になるので気分がよい。あとはどんどん降りてゆくだけ。’再度越’の道と合流して一般ハイカーとすれちがいながら大龍寺の山門まで来たが、いつもたくさんいるお弁当部隊が全然いない。
それもそのはず、まだ午前10時を過ぎたばかり。ずいぶん早く摩耶山頂に着いてしまいそうだ。「正午より前に摩耶山頂に着くことはない」と断言していたので、補給部隊に訂正の電話を試みるがうまくいかない。代わりにメールを送ったが、着いているか不明。市が原まで多少ゆっくり下って市が原に10時20分。スタートから5時間17分なので、去年より1時間以上早くなっている。
(市が原→摩耶山頂(28.7km地点))
市が原から摩耶山頂までの最難関区間を地道に歩き続けるため、2万5千図を何度も読んでだいたいのペース配分を考えておいた。市が原の先の登山道取り付き(標高260m)から尾根に上がり、ハーブ園分岐(420m)までが最初の3分の1で、ここはまず無難にこなす。ここから学校林道分岐(555m)までが難関で、一度390ぐらいまで下り、資材運搬用のケーブルをくぐってから(今年は撤去されていたが)一気に稲妻坂を上る。これが全行程で一番きつい。今年は幸い、神戸市民とおぼしきご夫婦が「学校林道まであと○○ぐらい」とか話しながら先を歩いてくれたので、なんとかついていくことができた。
学校林道分岐から摩耶山頂までは、距離は長いが、平坦な道と登りが交互に現れるのでずっと楽になる。この区間で特に急な登りは、アドベンチャーロード分岐(600m)から摩耶山頂(700m)までの間だけ。問題は、ほぼ最後まで摩耶山頂の位置が見えないこと。この先どのくらいの位置に山頂があるかを知って歩かないと、もうすぐ山頂と思っては裏切られ…の連続になってしまう。
ところどころで抜き抜かれを繰り返しつつ、立ち止まらずに摩耶山頂に着いてみると、なぜかチェックポイントのテントに列ができている。何だこれは?
「チェックポイントが正午に開くのを待っている」ことが判明。ストップウォッチを止めて時計を見ると11時35分。スタートから6時間32分で到達。去年より1時間15分早い…というか早過ぎ。無事に補給部隊と合流し、時計が止まっている25分間で着替えて栄養補給。バナナとウィダーインゼリー、和菓子、そしてホットレモン3杯を一気に摂取し、ハイドレーションをソフトボトルごと交換して12時05分再スタート。山上はうららかな陽気で、少し暑いぐらい。
(摩耶山頂→六甲山小学校(35km地点))
オテル・ド・摩耶の玄関前に今年もモンベルの売店が出ている。「きょうは暖かいから、店番もいいですね」と声をかけると、「暖かいと何も売れないので困りますよ~」とのこと。なるほどそれはそうかもしれない。寒風ふきすさぶ摩耶山のほうが、ネックウォーマーとか手袋とか帽子を売るには好都合だろう。
どこかで靴に入り込んだ小石がだんだんつま先へ移動してきて痛いので、山上道路に出たところにあるベンチに座って取り除き、靴ひもをとゲイターを締め直す。きつい登りはもうほとんどないので、今度はきつめに締め直す。さっきまとまった量の補給をしたので、恒例藤原商店のあんまんはスキップし、YMCAの紅茶に心惹かれつつひたすら歩き続ける。六甲山郵便局の甘酒を一口だけいただいて体を温め、さらに東へ進む。六甲山小学校の前を13時すぎに通過。
(六甲山小学校→一軒茶屋(39.0km地点))
通過するたびに、「六甲山小学校」という響きがいいなぁと思う。「私の母校は、神戸市立六甲山小学校です」なんて。京都の番組小学校もいいけど、六甲山小学校もいいですね。
神戸GCの金網の中を歩いていると、近くのティーグラウンドにいるゴルファーが「あの人らは宝塚まで歩くんやで」「あと何時間ぐらい歩くんかな」と言いあっているのが聞こえる。ふふ。
土曜日のせいか、六甲ガーデンテラスはすごい人出。カップルや家族連れにぶつからないように歩くのが大変。当方は最短距離で広場を横切りたいので何度もぶつかりそうになるが、ハイドレーションをくわえた風体が異様に見えるのか、よけてくださるのが有難い。「何が楽しくてそんなことを…」と思っているだろうなぁ。
去年まで東六甲にあったチェックポイントは、ことし一軒茶屋の先に移設されている。時間の比較ができないが、スタートから8時間45分。
(一軒茶屋→大谷乗越(49.0km地点))
右膝が本格的に痛みはじめたので、同行者には先に行ってもらう。
東六甲分岐点から一人で山道に入るが、緩やかな上り下りはゆっくり歩ける一方で、船坂峠前後の急な下りで右膝が言うことをきかない。普通の下りなら左膝だけで進むことができるのだけど、鎖場のような急な下りでは両足をフルに使わなければ安全が確保できないわけで、しかも足元はすべりやすいし、なかなか困った事態。ここへ来てこれまでの半分ぐらいのスピードにペースダウン。しかし1週間雨が降っていないのにぬかるんでいる箇所って、普段は一体どうなっているのか。
分岐点から船坂峠までの3キロの遠いこと遠いこと。トレラン風のいでたちをした参加者がどんどん追い抜いていくのだけど、ここまで来てまだ走る元気があることに感心する。また、ローカットでゲイターもつけていない方が多いけど、靴の中が石だらけになったりはしないのだろうか。船坂峠から大谷乗越までの3キロは、これまで常に日没後だったところ、初めて明るいうちに通る区間だが、作業道路から大谷乗越までの最後の急な下りで、はるか下に道路が見えてげんなりする。石をつたいながら崖を下りていくような感じ。どんどん抜いてもらいながらなんとか下りきったが、下りきって道路を横切るべき個所でその道路に傾斜がついているため、坂の下へずり落ちるように斜めに横断してしまい、ボランティアの皆さんに驚かれる。体のコントロールがかなり怪しくなってきている。
(大谷乗越→塩尾寺(53.0km地点))
この区間は過去3回つねに真っ暗だったので、明るいうちに歩くのは初めて。森の中の静かなトレイルで、急な登り降りもほとんどなく膝に負担もかからないので、穏やかな気分で歩くことができる。いつもなら暗夜の灯台のように見えるボランティアのみなさんのテントとカンテラも、今日はまだのんびりした雰囲気。高圧線の下をくぐるポイントは、宝塚と大阪平野の夜景がきれいに見えるところだが、きょうはいちめんに夕陽を浴びて美しく輝いている街並みが見える。
塩尾寺まで1キロぐらいになると、ふたたび急な下り。もっぱら左足だけで下りていくが、どうしても右足で踏み込まないといけない箇所にかかるたびにひどい痛み。どんどん抜かれていく。塩尾寺はまだか…と思いながら下りていくとやがて左側に赤い鳥居が見え、最後の200メートル。1段下りるごとにぐぐぐと声が出るほど膝に響く。緑色の土嚢が見え、道が左に曲がって最後の数段を這うように下り、塩尾寺へ。まだ明るいので、山門が開いている!この4キロに何分かかるかで自分の減速ぶりを測ろうと考えていたが、ほぼ50分で到達したので、まだ時速4キロぐらいは出ている勘定になる。
(塩尾寺→宝塚ゴール(56.0km))
右膝がずきずき痛み、まったく踏ん張りがきかないので、歩幅30センチぐらいでゆっくり進む。途中で補給部隊に電話をかけ、到着が大幅に遅れそうだと連絡したところ、甲子園大学の先まで前進してきていて、これは大いにありがたい。代わりに歩いてもらうことはできないが、後ろ向きに歩いて(膝と脛の負担がずっと軽い)、右とか左とか指示してもらえるのでずっと楽になる。薄暮の町を時速2キロぐらいでよろよろ歩き、インド料理屋とローソンの間を曲がってゴールへ。ヘッドランプをポケットに入れていたが、とうとう最後まで使わず。最後の階段をなんとか通り抜けてゴールすると、参加証に印刷されている住所を見て「遠くからお疲れさまでした」と声をかけてくださる。
大会スタッフから認定証と記念品をいただき、緑色の反射材をお返ししてストップウォッチを止めると、11時間49分。去年より1時間13分短縮し、目標としていた12時間を切ることもできたが、右膝がパンクしていなければ11時間台前半だったと思われ、達成感と残念感が相半ばする結果に。まぁしかし、完走できただけでもよかった。
初参加した2010年以降の推移は、
2010年 14時間29分
2011年 14時間19分 (10分短縮)
2012年 13時間02分 (77分短縮)
2013年 11時間49分 (73分短縮)
となるが、時間はともかく、長時間歩きつづけることは、気分をハイにする作用―それも、かなり強力な作用―があるように思われる。おそらく、右足と左足を交互に前に出すという単純な動作が、別な何かを考え続ける効果をもたらし、その別な何かと、だんだんゴールに近づいていく高揚感がミックスされてこういうことになるのであろう。もっとも、70時間、80時間と歩き続けたらどうなるかはわからないが。
(12.2追記)
大会を運営しているボランティアの皆さんも、きょうのような暖かい日で少しは負担が軽減されただろうかと思う。去年、おとししと雨だっただけに、同じ場所でじっとしている方が大変なのではないかと。来年以降、抽選に外れたらボランティアとして参加するのも悪くないかもしれない。
また、ゴール地点の宝塚での宝塚市民有志の歓迎イベントも年々立派になっていて、とても感じがよい。足湯とか豚汁とかのふるまいの横に、地元名産品をお土産に販売するのはいいアイディアだと思う。ことしは大きな鳥の着ぐるみが出ていたので記念写真を撮ってもらい「これは宝塚市のキャラクターですか?」と尋ねたところ、兵庫県のマスコットなのだそうだ。へぇ。
2012六甲全山縦走大会(11/23) [ウォーキング]
おととし,去年に続いて3回目の出場。
ことしの目標は「座らずに歩き続けて」「14時間を切ること」。Coast to Coast Walkの教訓で、座り込んで休むとかえってあちこち痛くなるので、なるべく止まらず、止まっても座らないことにする。
なるべく負担なく歩くため,クロスカントリー用タイツ+ショートパンツという装備も考えていたのだけど,週間予報は終始一貫「雨時々曇晴」で,しかも日を追うごとに降水確率が40→50→60→70%と大きくなっていくので,もう雨は避けられず軽装でスピード追求は難しそうと判断し,装備一式を雨用に入れ替える。
まずフリースを外してレインウェアの上下とスパッツを追加し,トレッキングシューズをローカットからミドルカットに変える。このへんはCoast to Coast Walkの装備と同じ。次に手袋は,雨と泥でぐずぐずになることは必至だが,掌だけの指出し手袋と軍手しか用意していなかったので,もう1対購入して3つ順番に使うことにする。そしてザックカバー。もう10年も使わずにしまってあったので防水力は怪しいが,まあないよりはいいだろう。ソックスの替えを1つ入れることは去年と同じ。
行動食も,バックパックをおろさずに歩きながら食べたり飲んだりできるように,カステラボール×10,スイートポテトボール×5,ようかん×2,なつかしのフラップジャック×2,レモンスライス×8を用意。半分は最初からバックパックのウエストポケットに入れ,あとの半分はジプロックに入れておき摩耶山頂でウエストポケットに移すつもり。水は1リットルのハイドレーション(レモン水)と350ccのペットボトル1本。ペットボトルは,摩耶山頂でホットレモンを入れてもらうため。
〔須磨浦公園→菊水山チェックポイント(19.5km地点)〕
スタート1時間前に須磨浦公園に行ってみると,大雨の中を去年よりずっと長い列がすでに国道2号線にはみだしている。そしてしだいに強くなる雨。これが何時まで降り続くのかと思うといやになる。スタートのチェックを終えて歩きはじめたのは5時50分。去年より35分遅いスタートで,タイムには関係ないが,日没までの時間が短くなる分だけ不利になる計算。
スタートから1時間ぐらいで雨は小降りになるが,その後も断続的に降り続く。後方からのスタートなので至るところで渋滞しているが,それが適度な休憩とペースメーカーになるので悪くはない。妙法寺小学校の休憩地点で立ち止まるが,どんどん冷えてくるので他の2人にことわり,先に行かせてもらう。合計3つのピークを越えて,鵯越のコンビニまで3時間32分。去年より6分遅いペース。ここで少し思案するが,暑さを避けるため,あえてレインウェアの上を脱ぐ。ついでにストックを取り出し,このあとの菊水山と摩耶山の登りに備える。
菊水山の上りでまた大渋滞。しかしこれが幸いして,苦しいながらも途中で立ち止まることなく山頂に立つ。最初のチェックポイントだが雨で参加証がぐずぐずになってしまい,チェックポイントの半券がちぎれてしまっている。ボランティアの方がホチキスで止め直してくださる。4時間47分。去年より9分遅いペースだが,あまり疲労はないので後半の舗装道路でペースが上げられそう。今年はとにかく「途中で休まない」ことを目標にしているので,写真を撮りメールを送るとすぐに歩きはじめる。
〔菊水山→市が原(24.5km地点)〕
せっかく稼いだ高度をどんどん落とし,吊り橋を渡って再び登り返す。ここでも渋滞しており,思うようにペースが上げられない。稜線に出るまでの暗い登りは気分がさえない。大龍寺で正午。ここでようやく,選手以外のハイキング客が(雨なのに)ちらほら。山門の下で雨宿りをしながらごはんを食べている選手がいっぱいいるが,大龍寺から市が原までの1キロは広い舗装道路なので,タイムを縮める絶好のチャンス。ストックを使って小走り気味にノルディックウォーク。スタートから6時間20分で市が原。去年より8分早いペースで,これなら14時間を切れるかもしれない。
〔市が原→摩耶山掬星台チェックポイント(28.7km地点)〕
最大の難関。去年は,①苦しくてたびたび立ち止まる ②もうすぐ摩耶山頂かと思うたびにまだ先が長いことがわかり,がっくり気落ちして再びペースダウン の悪循環だったので,今年は地形図を眺めながら市が原・摩耶山頂間の4.2キロを3つの区間に分けて覚え,「最初のピークまでの急な登り」「一度鞍部に下りてから,2度目の急な登り」「山頂の送信所が見えてからの急な登り」のどのへんを歩いているのか,絶えず意識するようにした。去年より全体の後方にいるので渋滞がきつく,終始同じペースで登らざるを得ないのだが,ストックの助けもあり,若干の余力を残して登り続けることができる。しかし,最後の登りがやはりきつい。六甲のこのあたりは砂岩質の岩山になっているので,ストックは片手で持ち,もう片方の手でざらざらした岩をつかんで登る。途中何人も,立ち止まっている人の前を通り過ぎるが,去年の自分の姿である。
階段のむこうに送信所の灰色の壁が見えると摩耶山頂。上っている途中は晴れ間がのぞく時間帯もあったが,山頂は小雨模様。送信所の横を通り過ぎ,バス通りを横切って掬星台の広場に出ると,雨で人影もまばら。チェックポイントを通過。スタートから7時間47分,去年より24分早いペース。やはり「立ち止まらない」ことの効果は大きい。
小銭を募金に差し出し,ホットレモンの給水(給湯)を受ける。寒い中で身にしみておいしい。血管に直接入っていく感じ。ペットボトルにもつめてもらう。
急な登りはもうないので,雨は降っていないが防寒着としてレインウェアの上を再び羽織り,残りの食糧をウエストベルトに移してさっそく出発。実時刻でも昨年に追いつきつつある。
〔摩耶山掬星台→記念碑台(33.8km地点)〕
オテル・ド・摩耶の前にモンベルの出店。補給すべきものはないが,なんとなく心惹かれる。
急な下りから舗装道路の出たところで,きょう初めてベンチに座り,靴の中に入り込んだ小石を取り除く。舗装道路の先には600メートルぐらい続く階段。去年はここで何度も立ち止まってしまい,他の2人にタイムロスをさせてしまったことを思い出す。参加者はだいぶまばらになっているが,追い抜きも追い抜かれもせずに淡々と登り続ける。
舗装道路に出て,再度ベンチに座って反対側の靴の小石を取り除く(一度にやればいいのに)。ここから一軒茶屋までの間にどこまでタイムをきりつめられるかに挑む。ノルディックウォークで前の人との間合いをつめ,一人ずつ抜いていく。といっても既にみんな疲れているので,大したスピードが出ているわけではない。それでも筋肉にとっては限界に近い。締めつけているタイツの中で,すねの前の部分が痙攣しているのを感じる。
藤原商店で恒例のあんまん。店主が椅子をすすめてくれるが,座らずに食べる。この「座らないほうが楽」という感覚は,長距離を歩いてみないと実感できない独特のものかもしれない。でんき自動車博物館の先のカーブを曲がると,記念碑台の交差点。時間を測るの忘れた。
〔記念碑台→一軒茶屋(39.0km地点)〕
六甲山小学校の前をゆっくりと登っていくが,なかなか前を歩く女性の二人連れに追いつけない。紺色とピンクのウェアを着たその二人連れが「ゴールした後に何を飲みたいか&食べたいか」を議論しているのを聞いて,その健啖ぶりに驚く。神戸ゴルフクラブの金網でようやく追い抜くが,スパッツがずれてしまったので一軒茶屋までなしで歩こうと外したとたん,ぬかるみが次々と現れて後悔する。大まかにいえば,六甲の西半分は砂岩質の岩だらけ,東半分は泥だらけであるような気がする。
六甲ガーデンテラスは毎年変わらぬ平和な風景。ことしは団体の添乗員さんが,「それでは○○時まで自由行動です~」と説明されている。自由行動…ストックをついてゼイゼイいいながら歩いていくトレッカーは,さぞかし異様に見えることだろう。
ガーデンテラスの先の山道を下りて車道に戻り,一つずつ増えていくカーブ番号を励みに一軒茶屋をめざす。何番のカーブの先に一軒茶屋があったのか,たしか煩悩の数と同じ108番だったかな…と思いながら歩いていくが,しかしここまで来て軽快に追い抜いて走っていくランナーもいて,どれだけ体力あるんだと驚く。
106番カーブの先に一軒茶屋。電気が全くついていないので暗いが,自家発なのだろうか。いままで2年間電気がついていたのは,時間が遅かったからだろう。座るのはきょう3度目。きつねうどんを大急ぎでかきこみ,ソックスをはき替えて靴ひもをきつく締め直し,帽子にヘッドランプをつける。スタートして10時間16分,去年より49分も早いペース。実時刻でも去年より14分早いので,きょうはかなり先までランプなしで歩けるはず。
〔一軒茶屋→東六甲分岐点(40.0km地点)〕
勢いよく一軒茶屋を出ると,さっきの二人連れとちょうどいっしょになり,東六甲分岐までトンネルをくぐって並走する。私と同じぐらいの年齢に見えるが,「終わったあと飲むのを楽しみに,自宅にワインを何本も冷やしてきた。」という。「十数時間も歩いたあとで,よくお酒を飲む元気がありますねえ。」と感心すると,「いや,毎年11時間半ぐらいでゴールしているので,途中で暗くなったことがない。きょうはもう1人が遅くなったので,初めてヘッドランプを使う。」という。11時間半というと,16時半にゴールか…それはすごいなあ。そのぐらいで走り切れれば,たしかに酒を飲みたいと思うかもしれないな。
最後のリタイア可能地点である東六甲分岐のチェックポイントだが,むろんリタイアは考えない。整理番号をホチキスで止めてくれるのだが,その番号が860番ぐらいで,3回目ではじめて3ケタの番号。これは順位ではないということなのだけど,1番から順番に止めていればやはり順位なのではないかなあ。まあ順位より時間が気になるのだけど。49分早いペースということは,13時間30分ぐらいのタイムになるのだろうか。
〔東六甲分岐点→大谷乗越(49.0km地点)〕
東六甲分岐からはまた山道。しかもぬかるみがと岩肌が交互に現れるので,「明るいうちに少しでも先へ行きたい」一心で必死に歩くが,やはり前後がつまっているのでそれほどペースは上がらない。それでも船坂峠を過ぎ,大平山の手前ぐらいまでなんとか最後の明るみに助けられながら歩く。大平山の作業用舗装道路を歩いていると,ヘッドランプの光の中で,自分の吐く息が自分と同じスピードで前へ進むので,なんだか霧の中を歩いているかのように眼鏡が曇る。そして大谷乗越の手前の急な下りは,何回通っても怖い。
〔大谷乗越→塩尾寺(53.0km地点)〕
大谷乗越までは前後に人がいたのに,カステラボールを流し込んでいる間になぜか誰もいなくなってしまう。後ろがいれば追いついてもらおうと振り返るのだけど,誰もいない。山道がほぼ直角に左へ曲がる地点があり,「こっちでいいのだろうか…」と思いながら進むが,いつまで進んでも誰にも追いつけないので,いささか恐怖を感じはじめる。かなり里に近いので,コースを外れても大きな事故にはならないだろうが,こんな泥だらけの山中でビバークはご免こうむりたい。「迷ったときは元の地点に戻る」という鉄則を思い出して,戻ろうかな…と考えはじめたころ,前方で人の声がするのでそれを頼みにいっそう速足で歩くと,やがてトレラン風の二人連れの後姿が見えたのでほっとする。靴にもパンツにもバックパックにも反射材が使われているので,かなり後方からでも見えて助かる。参加証の緑と黄色のリボンにも反射材が使われていることはいうまでもない。
途中から右手前方に,宝塚のきれいな夜景が見えてくる。しかし立ち止まってそれを楽しむ余裕はない。なんとか二人についていくのに必死。やがて前に2人,後ろに1人が加わり,合計6人となって塩尾寺への急な下りを歩いて…というよりずり落ちていく。はるか下のほうで何か人の声がするなあ,と思うと,左へ曲がった先に塩尾寺の山門が見えるのはお約束。きょうはなぜか,誰も山門前で休憩していない。
〔塩尾寺→宝塚(56.0km地点=ゴール)〕
塩尾寺通過時点で時計を見ると18時32分。18時50分までにゴールできれば,13時間台を飛ばしていきなり12時間台の記録になるが,もう余力がない。ずっと下り坂なので,足さえふんばることができれば18分で3キロはムリではないはずだが,下り坂で必要な,すねの前部分はもはや言うことを聞いてくれない。
それでも足を交互に前に出し,ゴール近くなると下り坂がゆるくなるので小走りに急ぐ。いつも手すりにつかまってやっとの思いで上る最後の階段を駆け上がり,ゴールして時計を見ると18時52分!
スタートが5時50分なので,タイムは13時間02分。
残念。去年より一気に77分も短縮したが,夢の12時間台にあと2分届かず…orz
後からゴールした同行者2人(もう1人は惜しくも摩耶山頂でリタイア)とともに宝塚駅に向かうが,打ち上げをする気力もなく,大阪駅で解散する。
(11.29追記)
寒い中で道案内をしてくださっているボランティアの皆さんはものすごく寒いと思われ、いつも本当に頭が下がる。特に、山の深いところにランタンを吊るして待っていてくださる方は、真っ暗な海にともる灯台のような安心感をいただくことができ、とてもありがたい存在。
1週間経ってもまだ足が痛いが、下山後にあらためて点検すると、食糧はカステラボール1個とようかん1本、レモン1きれ、フラップジャック1本を余してすべて食べ尽くしてしまったのに、ハイドレーションのパックには半分近くレモン水が残っていた。この500とペットボトルの350を合わせても、去年と同じ1リットル前後しか給水していないことになる。せっかくいつでも飲めるように工夫したのに去年と同じでは全然結果が出ていないし、むだな重量を抱えて全行程を歩いていたことにもなるので、来年はこのへんに改善の余地がありそう。ただあのシステムは、途中でソフトボトルに補給するのがすごく面倒なので、やはり1リットルのソフトボトルを持って、しかし今度は全部飲むように心がけるぐらいか。
(ちなみに、よく見かける水分補給必要量の式では、体重(kg)×歩行時間(h)×5(ml)だというので、藪柑子が13時間歩くと、計算上は3リットル以上水を飲むことが必要になるが…)
(ついでに、これまたよく見かける栄養補給必要量の式では、(0.03x時間(h)+10x累積登り標高差(km)+0.6x累積下がり標高差(km)+0.3x歩行距離(km))x(体重(kg)+荷物(kg))だというので、藪柑子が3kgの荷物を背負って六甲全縦のコースを13時間で歩くと、計算上は2700キロカロリーの補給が必要になるが、こちらはこのぐらい十分食べているように思われる。)
ことしの目標は「座らずに歩き続けて」「14時間を切ること」。Coast to Coast Walkの教訓で、座り込んで休むとかえってあちこち痛くなるので、なるべく止まらず、止まっても座らないことにする。
なるべく負担なく歩くため,クロスカントリー用タイツ+ショートパンツという装備も考えていたのだけど,週間予報は終始一貫「雨時々曇
まずフリースを外してレインウェアの上下とスパッツを追加し,トレッキングシューズをローカットからミドルカットに変える。このへんはCoast to Coast Walkの装備と同じ。次に手袋は,雨と泥でぐずぐずになることは必至だが,掌だけの指出し手袋と軍手しか用意していなかったので,もう1対購入して3つ順番に使うことにする。そしてザックカバー。もう10年も使わずにしまってあったので防水力は怪しいが,まあないよりはいいだろう。ソックスの替えを1つ入れることは去年と同じ。
行動食も,バックパックをおろさずに歩きながら食べたり飲んだりできるように,カステラボール×10,スイートポテトボール×5,ようかん×2,なつかしのフラップジャック×2,レモンスライス×8を用意。半分は最初からバックパックのウエストポケットに入れ,あとの半分はジプロックに入れておき摩耶山頂でウエストポケットに移すつもり。水は1リットルのハイドレーション(レモン水)と350ccのペットボトル1本。ペットボトルは,摩耶山頂でホットレモンを入れてもらうため。
〔須磨浦公園→菊水山チェックポイント(19.5km地点)〕
スタート1時間前に須磨浦公園に行ってみると,大雨の中を去年よりずっと長い列がすでに国道2号線にはみだしている。そしてしだいに強くなる雨。これが何時まで降り続くのかと思うといやになる。スタートのチェックを終えて歩きはじめたのは5時50分。去年より35分遅いスタートで,タイムには関係ないが,日没までの時間が短くなる分だけ不利になる計算。
スタートから1時間ぐらいで雨は小降りになるが,その後も断続的に降り続く。後方からのスタートなので至るところで渋滞しているが,それが適度な休憩とペースメーカーになるので悪くはない。妙法寺小学校の休憩地点で立ち止まるが,どんどん冷えてくるので他の2人にことわり,先に行かせてもらう。合計3つのピークを越えて,鵯越のコンビニまで3時間32分。去年より6分遅いペース。ここで少し思案するが,暑さを避けるため,あえてレインウェアの上を脱ぐ。ついでにストックを取り出し,このあとの菊水山と摩耶山の登りに備える。
菊水山の上りでまた大渋滞。しかしこれが幸いして,苦しいながらも途中で立ち止まることなく山頂に立つ。最初のチェックポイントだが雨で参加証がぐずぐずになってしまい,チェックポイントの半券がちぎれてしまっている。ボランティアの方がホチキスで止め直してくださる。4時間47分。去年より9分遅いペースだが,あまり疲労はないので後半の舗装道路でペースが上げられそう。今年はとにかく「途中で休まない」ことを目標にしているので,写真を撮りメールを送るとすぐに歩きはじめる。
〔菊水山→市が原(24.5km地点)〕
せっかく稼いだ高度をどんどん落とし,吊り橋を渡って再び登り返す。ここでも渋滞しており,思うようにペースが上げられない。稜線に出るまでの暗い登りは気分がさえない。大龍寺で正午。ここでようやく,選手以外のハイキング客が(雨なのに)ちらほら。山門の下で雨宿りをしながらごはんを食べている選手がいっぱいいるが,大龍寺から市が原までの1キロは広い舗装道路なので,タイムを縮める絶好のチャンス。ストックを使って小走り気味にノルディックウォーク。スタートから6時間20分で市が原。去年より8分早いペースで,これなら14時間を切れるかもしれない。
〔市が原→摩耶山掬星台チェックポイント(28.7km地点)〕
最大の難関。去年は,①苦しくてたびたび立ち止まる ②もうすぐ摩耶山頂かと思うたびにまだ先が長いことがわかり,がっくり気落ちして再びペースダウン の悪循環だったので,今年は地形図を眺めながら市が原・摩耶山頂間の4.2キロを3つの区間に分けて覚え,「最初のピークまでの急な登り」「一度鞍部に下りてから,2度目の急な登り」「山頂の送信所が見えてからの急な登り」のどのへんを歩いているのか,絶えず意識するようにした。去年より全体の後方にいるので渋滞がきつく,終始同じペースで登らざるを得ないのだが,ストックの助けもあり,若干の余力を残して登り続けることができる。しかし,最後の登りがやはりきつい。六甲のこのあたりは砂岩質の岩山になっているので,ストックは片手で持ち,もう片方の手でざらざらした岩をつかんで登る。途中何人も,立ち止まっている人の前を通り過ぎるが,去年の自分の姿である。
階段のむこうに送信所の灰色の壁が見えると摩耶山頂。上っている途中は晴れ間がのぞく時間帯もあったが,山頂は小雨模様。送信所の横を通り過ぎ,バス通りを横切って掬星台の広場に出ると,雨で人影もまばら。チェックポイントを通過。スタートから7時間47分,去年より24分早いペース。やはり「立ち止まらない」ことの効果は大きい。
小銭を募金に差し出し,ホットレモンの給水(給湯)を受ける。寒い中で身にしみておいしい。血管に直接入っていく感じ。ペットボトルにもつめてもらう。
急な登りはもうないので,雨は降っていないが防寒着としてレインウェアの上を再び羽織り,残りの食糧をウエストベルトに移してさっそく出発。実時刻でも昨年に追いつきつつある。
〔摩耶山掬星台→記念碑台(33.8km地点)〕
オテル・ド・摩耶の前にモンベルの出店。補給すべきものはないが,なんとなく心惹かれる。
急な下りから舗装道路の出たところで,きょう初めてベンチに座り,靴の中に入り込んだ小石を取り除く。舗装道路の先には600メートルぐらい続く階段。去年はここで何度も立ち止まってしまい,他の2人にタイムロスをさせてしまったことを思い出す。参加者はだいぶまばらになっているが,追い抜きも追い抜かれもせずに淡々と登り続ける。
舗装道路に出て,再度ベンチに座って反対側の靴の小石を取り除く(一度にやればいいのに)。ここから一軒茶屋までの間にどこまでタイムをきりつめられるかに挑む。ノルディックウォークで前の人との間合いをつめ,一人ずつ抜いていく。といっても既にみんな疲れているので,大したスピードが出ているわけではない。それでも筋肉にとっては限界に近い。締めつけているタイツの中で,すねの前の部分が痙攣しているのを感じる。
藤原商店で恒例のあんまん。店主が椅子をすすめてくれるが,座らずに食べる。この「座らないほうが楽」という感覚は,長距離を歩いてみないと実感できない独特のものかもしれない。でんき自動車博物館の先のカーブを曲がると,記念碑台の交差点。時間を測るの忘れた。
〔記念碑台→一軒茶屋(39.0km地点)〕
六甲山小学校の前をゆっくりと登っていくが,なかなか前を歩く女性の二人連れに追いつけない。紺色とピンクのウェアを着たその二人連れが「ゴールした後に何を飲みたいか&食べたいか」を議論しているのを聞いて,その健啖ぶりに驚く。神戸ゴルフクラブの金網でようやく追い抜くが,スパッツがずれてしまったので一軒茶屋までなしで歩こうと外したとたん,ぬかるみが次々と現れて後悔する。大まかにいえば,六甲の西半分は砂岩質の岩だらけ,東半分は泥だらけであるような気がする。
六甲ガーデンテラスは毎年変わらぬ平和な風景。ことしは団体の添乗員さんが,「それでは○○時まで自由行動です~」と説明されている。自由行動…ストックをついてゼイゼイいいながら歩いていくトレッカーは,さぞかし異様に見えることだろう。
ガーデンテラスの先の山道を下りて車道に戻り,一つずつ増えていくカーブ番号を励みに一軒茶屋をめざす。何番のカーブの先に一軒茶屋があったのか,たしか煩悩の数と同じ108番だったかな…と思いながら歩いていくが,しかしここまで来て軽快に追い抜いて走っていくランナーもいて,どれだけ体力あるんだと驚く。
106番カーブの先に一軒茶屋。電気が全くついていないので暗いが,自家発なのだろうか。いままで2年間電気がついていたのは,時間が遅かったからだろう。座るのはきょう3度目。きつねうどんを大急ぎでかきこみ,ソックスをはき替えて靴ひもをきつく締め直し,帽子にヘッドランプをつける。スタートして10時間16分,去年より49分も早いペース。実時刻でも去年より14分早いので,きょうはかなり先までランプなしで歩けるはず。
〔一軒茶屋→東六甲分岐点(40.0km地点)〕
勢いよく一軒茶屋を出ると,さっきの二人連れとちょうどいっしょになり,東六甲分岐までトンネルをくぐって並走する。私と同じぐらいの年齢に見えるが,「終わったあと飲むのを楽しみに,自宅にワインを何本も冷やしてきた。」という。「十数時間も歩いたあとで,よくお酒を飲む元気がありますねえ。」と感心すると,「いや,毎年11時間半ぐらいでゴールしているので,途中で暗くなったことがない。きょうはもう1人が遅くなったので,初めてヘッドランプを使う。」という。11時間半というと,16時半にゴールか…それはすごいなあ。そのぐらいで走り切れれば,たしかに酒を飲みたいと思うかもしれないな。
最後のリタイア可能地点である東六甲分岐のチェックポイントだが,むろんリタイアは考えない。整理番号をホチキスで止めてくれるのだが,その番号が860番ぐらいで,3回目ではじめて3ケタの番号。これは順位ではないということなのだけど,1番から順番に止めていればやはり順位なのではないかなあ。まあ順位より時間が気になるのだけど。49分早いペースということは,13時間30分ぐらいのタイムになるのだろうか。
〔東六甲分岐点→大谷乗越(49.0km地点)〕
東六甲分岐からはまた山道。しかもぬかるみがと岩肌が交互に現れるので,「明るいうちに少しでも先へ行きたい」一心で必死に歩くが,やはり前後がつまっているのでそれほどペースは上がらない。それでも船坂峠を過ぎ,大平山の手前ぐらいまでなんとか最後の明るみに助けられながら歩く。大平山の作業用舗装道路を歩いていると,ヘッドランプの光の中で,自分の吐く息が自分と同じスピードで前へ進むので,なんだか霧の中を歩いているかのように眼鏡が曇る。そして大谷乗越の手前の急な下りは,何回通っても怖い。
〔大谷乗越→塩尾寺(53.0km地点)〕
大谷乗越までは前後に人がいたのに,カステラボールを流し込んでいる間になぜか誰もいなくなってしまう。後ろがいれば追いついてもらおうと振り返るのだけど,誰もいない。山道がほぼ直角に左へ曲がる地点があり,「こっちでいいのだろうか…」と思いながら進むが,いつまで進んでも誰にも追いつけないので,いささか恐怖を感じはじめる。かなり里に近いので,コースを外れても大きな事故にはならないだろうが,こんな泥だらけの山中でビバークはご免こうむりたい。「迷ったときは元の地点に戻る」という鉄則を思い出して,戻ろうかな…と考えはじめたころ,前方で人の声がするのでそれを頼みにいっそう速足で歩くと,やがてトレラン風の二人連れの後姿が見えたのでほっとする。靴にもパンツにもバックパックにも反射材が使われているので,かなり後方からでも見えて助かる。参加証の緑と黄色のリボンにも反射材が使われていることはいうまでもない。
途中から右手前方に,宝塚のきれいな夜景が見えてくる。しかし立ち止まってそれを楽しむ余裕はない。なんとか二人についていくのに必死。やがて前に2人,後ろに1人が加わり,合計6人となって塩尾寺への急な下りを歩いて…というよりずり落ちていく。はるか下のほうで何か人の声がするなあ,と思うと,左へ曲がった先に塩尾寺の山門が見えるのはお約束。きょうはなぜか,誰も山門前で休憩していない。
〔塩尾寺→宝塚(56.0km地点=ゴール)〕
塩尾寺通過時点で時計を見ると18時32分。18時50分までにゴールできれば,13時間台を飛ばしていきなり12時間台の記録になるが,もう余力がない。ずっと下り坂なので,足さえふんばることができれば18分で3キロはムリではないはずだが,下り坂で必要な,すねの前部分はもはや言うことを聞いてくれない。
それでも足を交互に前に出し,ゴール近くなると下り坂がゆるくなるので小走りに急ぐ。いつも手すりにつかまってやっとの思いで上る最後の階段を駆け上がり,ゴールして時計を見ると18時52分!
スタートが5時50分なので,タイムは13時間02分。
残念。去年より一気に77分も短縮したが,夢の12時間台にあと2分届かず…orz
後からゴールした同行者2人(もう1人は惜しくも摩耶山頂でリタイア)とともに宝塚駅に向かうが,打ち上げをする気力もなく,大阪駅で解散する。
(11.29追記)
寒い中で道案内をしてくださっているボランティアの皆さんはものすごく寒いと思われ、いつも本当に頭が下がる。特に、山の深いところにランタンを吊るして待っていてくださる方は、真っ暗な海にともる灯台のような安心感をいただくことができ、とてもありがたい存在。
1週間経ってもまだ足が痛いが、下山後にあらためて点検すると、食糧はカステラボール1個とようかん1本、レモン1きれ、フラップジャック1本を余してすべて食べ尽くしてしまったのに、ハイドレーションのパックには半分近くレモン水が残っていた。この500とペットボトルの350を合わせても、去年と同じ1リットル前後しか給水していないことになる。せっかくいつでも飲めるように工夫したのに去年と同じでは全然結果が出ていないし、むだな重量を抱えて全行程を歩いていたことにもなるので、来年はこのへんに改善の余地がありそう。ただあのシステムは、途中でソフトボトルに補給するのがすごく面倒なので、やはり1リットルのソフトボトルを持って、しかし今度は全部飲むように心がけるぐらいか。
(ちなみに、よく見かける水分補給必要量の式では、体重(kg)×歩行時間(h)×5(ml)だというので、藪柑子が13時間歩くと、計算上は3リットル以上水を飲むことが必要になるが…)
(ついでに、これまたよく見かける栄養補給必要量の式では、(0.03x時間(h)+10x累積登り標高差(km)+0.6x累積下がり標高差(km)+0.3x歩行距離(km))x(体重(kg)+荷物(kg))だというので、藪柑子が3kgの荷物を背負って六甲全縦のコースを13時間で歩くと、計算上は2700キロカロリーの補給が必要になるが、こちらはこのぐらい十分食べているように思われる。)
Coast to Coast Walk (おまけ) [ウォーキング]
バスでスカボローに出て,列車でロンドンへ。ヨークからロンドンまで2時間座れないが,さんざん歩いた後なのでまったく苦痛を感じない。
宿はパディントンの駅前。近所を歩いていたら,27年前に泊ったホテルを発見。むろんリノベーションを経てこぎれいな宿に生まれ変わっているが,地下のラウンジ(今もあるのだろうか)でスコットランド対イングランドのテストマッチをテレビ観戦したこととか,2階の窓から雪に驚いたこととかが思い出される。
Notting HillにあったTravelbookshopがなくなってしまった今,ロンドンで必ず立ち寄る本屋さんといったらStanfordsしかない。お店はちょうど地球儀フェアの最中。地球儀ほしいのだけど,持って帰るのが大変だし,ホコリが積もるとすごく汚いので,眺めて楽しむだけ。
(他のサイトから借用した画像)
日本でもおなじみ,ローズピンクの「Keep Calm and Carry On」を町のところどころで見かける。その派生バージョンもいろいろ見かける。もはや流行というより,イギリス人の日常の象徴として根付いている感じ。いかにもイギリス的でいいですね。右顧左眄したりこぶしを振り上げたりするのが好きな方にも,常備薬としていかがかと。さっきのホテルもそうだけど,変化するところは急速に変化する一方で,「ロンドン的なもの」は何年経ってもあまり変わっていないような。
金曜日なので,夕方ともなればパブの前には人があふれている。ほとんど人のいない風景を12日も歩いた後だけに,だんだん人に酔ってくる。どのパブにもぐりこもうか。
※以下は,帰国後にいただいた質問のうち多かったものをご参考に。
------------------------------------------------------------------------------
Q1.CtoCはお勧めか?もう一度歩きたいか?
A1.お勧め。もう一度歩きたい。今度は少しゆっくり歩きたい。
Q2.歩いていて最も楽しかった区間は?
A2.風景のすばらしさは,Ennerdale Bridge→Rosthwaiteかな。Kirkby Stephen→Keldの山越えも,道迷いの心配さえなければ楽しいと思う。
Q3.もっと短い時間で歩けないか?
A3.10日まで短縮可能だと思うが,それでは単に「歩いた」だけで,ちっとも楽しくないと思う。できれば14日ぐらいかけて歩くのがいいのでは。
Q4.休暇が1週間だったらどうするか?
A4.1週間×2回で歩けると思う。
1週間の休暇(土曜日~日曜日)でCtoCを歩こうとしたら,2回に分けることになるので,現地までの出入りをどうするかがポイントになるが,おおむね以下の日程で可能かと。
(1回目)
土曜日 日本→ロンドン→St.Bees
(羽田を午前1時に出るフランクフルト行きのNHに乗り,マンチェスター行きに乗り継げばもっと効率的)
日曜日 St.Bees→Ennerdale Bridge
月曜日 Ennerdale Bridge→Rosthwaite
火曜日 Rosthwaite→Grasmere
水曜日 Grasmere→Patterdale
木曜日 Patterdale→Shap
金曜日 Shap→Kirkby Stephen
土曜日 Kirkby Stephen→リーズ又はカーライル経由ロンドン→
日曜日 →ロンドン
(2回目)
土曜日 日本→ロンドン→リーズ又はカーライル経由Kirkby Stephen
日曜日 Kirkby Stephen→Keld
月曜日 Keld→Reeth→Richmond
火曜日 Richmond→Osmotherley
水曜日 Osmotherley→Blakey Ridge
木曜日 Blakey Ridge→Littlebeck
金曜日 Littlebeck→Robin Hood's Bay
土曜日 RHB→スカボロー経由ロンドン→
日曜日 →日本
Q5.次に歩くとしたら,どのルートがいいか?
A5.しばらくトレッキングの予定はないけど,イギリスで歩くなら,West Highland Wayでしょう。
それ以外だったら,やはりスペイン巡礼の道(Camino de Santiago)ですね。ただ,真夏のスペインは(私は)ムリなので,季節をどうするかが難しいのだけど。
宿はパディントンの駅前。近所を歩いていたら,27年前に泊ったホテルを発見。むろんリノベーションを経てこぎれいな宿に生まれ変わっているが,地下のラウンジ(今もあるのだろうか)でスコットランド対イングランドのテストマッチをテレビ観戦したこととか,2階の窓から雪に驚いたこととかが思い出される。
Notting HillにあったTravelbookshopがなくなってしまった今,ロンドンで必ず立ち寄る本屋さんといったらStanfordsしかない。お店はちょうど地球儀フェアの最中。地球儀ほしいのだけど,持って帰るのが大変だし,ホコリが積もるとすごく汚いので,眺めて楽しむだけ。
(他のサイトから借用した画像)
日本でもおなじみ,ローズピンクの「Keep Calm and Carry On」を町のところどころで見かける。その派生バージョンもいろいろ見かける。もはや流行というより,イギリス人の日常の象徴として根付いている感じ。いかにもイギリス的でいいですね。右顧左眄したりこぶしを振り上げたりするのが好きな方にも,常備薬としていかがかと。さっきのホテルもそうだけど,変化するところは急速に変化する一方で,「ロンドン的なもの」は何年経ってもあまり変わっていないような。
金曜日なので,夕方ともなればパブの前には人があふれている。ほとんど人のいない風景を12日も歩いた後だけに,だんだん人に酔ってくる。どのパブにもぐりこもうか。
※以下は,帰国後にいただいた質問のうち多かったものをご参考に。
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Q1.CtoCはお勧めか?もう一度歩きたいか?
A1.お勧め。もう一度歩きたい。今度は少しゆっくり歩きたい。
Q2.歩いていて最も楽しかった区間は?
A2.風景のすばらしさは,Ennerdale Bridge→Rosthwaiteかな。Kirkby Stephen→Keldの山越えも,道迷いの心配さえなければ楽しいと思う。
Q3.もっと短い時間で歩けないか?
A3.10日まで短縮可能だと思うが,それでは単に「歩いた」だけで,ちっとも楽しくないと思う。できれば14日ぐらいかけて歩くのがいいのでは。
Q4.休暇が1週間だったらどうするか?
A4.1週間×2回で歩けると思う。
1週間の休暇(土曜日~日曜日)でCtoCを歩こうとしたら,2回に分けることになるので,現地までの出入りをどうするかがポイントになるが,おおむね以下の日程で可能かと。
(1回目)
土曜日 日本→ロンドン→St.Bees
(羽田を午前1時に出るフランクフルト行きのNHに乗り,マンチェスター行きに乗り継げばもっと効率的)
日曜日 St.Bees→Ennerdale Bridge
月曜日 Ennerdale Bridge→Rosthwaite
火曜日 Rosthwaite→Grasmere
水曜日 Grasmere→Patterdale
木曜日 Patterdale→Shap
金曜日 Shap→Kirkby Stephen
土曜日 Kirkby Stephen→リーズ又はカーライル経由ロンドン→
日曜日 →ロンドン
(2回目)
土曜日 日本→ロンドン→リーズ又はカーライル経由Kirkby Stephen
日曜日 Kirkby Stephen→Keld
月曜日 Keld→Reeth→Richmond
火曜日 Richmond→Osmotherley
水曜日 Osmotherley→Blakey Ridge
木曜日 Blakey Ridge→Littlebeck
金曜日 Littlebeck→Robin Hood's Bay
土曜日 RHB→スカボロー経由ロンドン→
日曜日 →日本
Q5.次に歩くとしたら,どのルートがいいか?
A5.しばらくトレッキングの予定はないけど,イギリスで歩くなら,West Highland Wayでしょう。
それ以外だったら,やはりスペイン巡礼の道(Camino de Santiago)ですね。ただ,真夏のスペインは(私は)ムリなので,季節をどうするかが難しいのだけど。
Coast to Coast Walk (第12日:Littlebeck→Robin Hood's Bay) [ウォーキング]
Littlebeckの村は谷底にあるので,しばらくは小川に沿って森の中の道をゆく。ガイドブックに「森の中にhermitageがある」と書いてあって,なんで森の中にエルミタージュ(美術館?)があるんだろうと思っていたら,hermitageって「隠者のすみか」というような意味なんですね。すみませんこの年まで知りませんでした。
滝を横切って谷を登り,ムーアの上に出ると,ヒースが咲いて薄紫色になったムーアはきのうの雨で深いぬかるみ―というより池のような状態。行きつ戻りつしながらルートを探し,ようやく突破する。ガイドブック情報ではその先の(もう一つの)ムーアはもっとひどいということなので,舗装道路を2マイルほど迂回。遠くに海が見え,その海に赤い船腹の貨物船が浮かんでいるのが見える。
お昼すぎにはRHBに着くだろうと踏んでIntake Farmにランチパックを頼まなかったのだが,やはりそれなりに時間を要しているうちにお腹が減ってくる。迂回のため舗装道路に出たので(足元を気にする必要がないので),ビスケット,ようかん,soyjoy,ポテチ(←どこかの宿のランチパックについてきたもの。ランチパックはバックパックに詰め込まれる宿命にあるのだから,ポテチを入れたら粉々になってしまうと思うのだが,イギリス人はポテチが好きだなぁ)を次々にぼりぼり食べながら歩く。ついでに,これもどこかの宿でランチパックにつけてくれた超甘いブラックカラントジュースを飲む。普通ならとても飲めない甘さだが,疲れているのであまり甘さを感じない。少なくともコーラよりはおいしい。
Hawskerの村を通り過ぎ,掘立小屋のような休暇用コテージ群を通り抜けると北海の海岸に面した崖の上。初日と同様に海蝕崖の上を歩く。セントビーズの海蝕崖と違っていい天気で,ほとんどぬかるんでいる箇所はない。天気がいい分だけ崖の高さが意識され,ちょっと怖い(安全柵の類はまったくない)。むかし密輸入(密輸出?)の舟を監視していたという小屋を通り過ぎると,やがて行く手に,Robin Hood's Bayの村が見えてくる。
(空撮映像ではありません!)
12日間でいったいいくつのゲートを開閉したことかと思いながら「ルート上最後のゲート」を閉めると,斜面に沿ったRHBの村の一番上に出る。事前のリサーチからは,北海の寒風吹きすさぶ人影まばらな村を想像していたのだが,いざ来てみれば,土産物屋やアイスクリーム屋が立ち並ぶ,近隣のお手軽な海浜リゾートめいた場所である。羽幌とか深浦のつもりで来てみたら江ノ島だった,ぐらいの感じ。Tシャツサンダル姿の避暑客がわんさか歩いていて,トレッキングシューズ+スパッツ+麦藁帽のアジア人はかなり目立つ。舟着き場への道をどんどん下りていくと,セントビーズの広々とした海岸とは逆の,狭苦しいコンクリートの岸辺にたどりつく。これにて終了なので,靴先を海水に浸し,出発点で拾ってきた小石を投げこむ(←お約束)
隣にいた親子連れのお父さんが,「きみ西海岸から歩いてきたの?すごいね!」と喜んでくれる。シャッターを押してもらってようやく,ああ終わったんだな~と思う。もっと歩きたかったのに残念。
宿でシャワーと洗濯を済ませ,舟着き場に面したBay Hotelまで歩いて2階のバーでビールを飲んでいると,PeteとSueがやってくる。再会を喜び合い,下の広場に移って飲み続けると,Kerry,Ricky&Freddieの2人と1匹も到着。いゃーよかったよかった。smugllers(密輸団)という名前のレストランで宴会。疲れのせいかあっという間に酔いが回る。
(区間距離12miles,所要時間5時間10分)
滝を横切って谷を登り,ムーアの上に出ると,ヒースが咲いて薄紫色になったムーアはきのうの雨で深いぬかるみ―というより池のような状態。行きつ戻りつしながらルートを探し,ようやく突破する。ガイドブック情報ではその先の(もう一つの)ムーアはもっとひどいということなので,舗装道路を2マイルほど迂回。遠くに海が見え,その海に赤い船腹の貨物船が浮かんでいるのが見える。
お昼すぎにはRHBに着くだろうと踏んでIntake Farmにランチパックを頼まなかったのだが,やはりそれなりに時間を要しているうちにお腹が減ってくる。迂回のため舗装道路に出たので(足元を気にする必要がないので),ビスケット,ようかん,soyjoy,ポテチ(←どこかの宿のランチパックについてきたもの。ランチパックはバックパックに詰め込まれる宿命にあるのだから,ポテチを入れたら粉々になってしまうと思うのだが,イギリス人はポテチが好きだなぁ)を次々にぼりぼり食べながら歩く。ついでに,これもどこかの宿でランチパックにつけてくれた超甘いブラックカラントジュースを飲む。普通ならとても飲めない甘さだが,疲れているのであまり甘さを感じない。少なくともコーラよりはおいしい。
Hawskerの村を通り過ぎ,掘立小屋のような休暇用コテージ群を通り抜けると北海の海岸に面した崖の上。初日と同様に海蝕崖の上を歩く。セントビーズの海蝕崖と違っていい天気で,ほとんどぬかるんでいる箇所はない。天気がいい分だけ崖の高さが意識され,ちょっと怖い(安全柵の類はまったくない)。むかし密輸入(密輸出?)の舟を監視していたという小屋を通り過ぎると,やがて行く手に,Robin Hood's Bayの村が見えてくる。
(空撮映像ではありません!)
12日間でいったいいくつのゲートを開閉したことかと思いながら「ルート上最後のゲート」を閉めると,斜面に沿ったRHBの村の一番上に出る。事前のリサーチからは,北海の寒風吹きすさぶ人影まばらな村を想像していたのだが,いざ来てみれば,土産物屋やアイスクリーム屋が立ち並ぶ,近隣のお手軽な海浜リゾートめいた場所である。羽幌とか深浦のつもりで来てみたら江ノ島だった,ぐらいの感じ。Tシャツサンダル姿の避暑客がわんさか歩いていて,トレッキングシューズ+スパッツ+麦藁帽のアジア人はかなり目立つ。舟着き場への道をどんどん下りていくと,セントビーズの広々とした海岸とは逆の,狭苦しいコンクリートの岸辺にたどりつく。これにて終了なので,靴先を海水に浸し,出発点で拾ってきた小石を投げこむ(←お約束)
隣にいた親子連れのお父さんが,「きみ西海岸から歩いてきたの?すごいね!」と喜んでくれる。シャッターを押してもらってようやく,ああ終わったんだな~と思う。もっと歩きたかったのに残念。
宿でシャワーと洗濯を済ませ,舟着き場に面したBay Hotelまで歩いて2階のバーでビールを飲んでいると,PeteとSueがやってくる。再会を喜び合い,下の広場に移って飲み続けると,Kerry,Ricky&Freddieの2人と1匹も到着。いゃーよかったよかった。smugllers(密輸団)という名前のレストランで宴会。疲れのせいかあっという間に酔いが回る。
(区間距離12miles,所要時間5時間10分)
Coast to Coast Walk (第11日:Blakey Ridge→Grosmont→Littlebeck) [ウォーキング]
朝ごはん何がいい?と聞かれていたので,どの村でも毎日同じもの(ベーコン+ソーセージ+卵+マッシュルーム+トマト)で少々飽きていたこともあり「じゃあ,キッパーいってみましょうか!」と何気なくお願いしたのだけど,いざテーブルについてみると,大きな骨付きのキッパー(にしんの燻製)が出てきてたじろぐ。これでは焼き魚定食(大盛り)だ。この国はどうしても,朝から満腹するしかけになっている。
居心地のいいこの宿で1日ゆっくりしていたいが,きょうも17マイル歩かなければならない。悪いことに天気予報は午後2時過ぎから雨の予想。それも強い雨になるという。天気予報の画面をこれほど真剣に見ることは珍しい。風の強い場所で大雨に降られると悲惨なので,なるべく雨の中を歩かなくてもすむようにピッチを上げて歩く。
途中までは地図の読みがよく当たり(本来なら当たるとか外すというようなものではないが),どんどん距離を稼ぐ。Glaisdaleへの長い明るい尾根道を下り切ると,ようやく人家が現れてほっとする。
しかしここで油断したのか,GlaisdaleからEgton Bridgeまで森の中を抜けるルートで,footpathの入り口を間違えて別のルートに入ってしまい,森の中を東に進むべきところ南に大きく進んでしまった。農場のような場所に出て,「ここはどこなんだろう?」と地図上で現在位置を確認して絶句する。三角形の2辺を行く形になってしまい,20分以上ロスした感じ。雨の前にこのロスは痛い。
Grosmontの保存鉄道をゆっくり見学する間もなく,バックパックからポールを外して村はずれの登りにかかる。自動車が通れる道とは思えないほどの急な登り(本当だろうか…道路標識には33%と表示されている)を,前かがみでポールを使いながら登る。登山道ならともかく,自動車が通る舗装道路でこの勾配って一体何なのだろう。
(他のサイトから借用した画像)
前かがみになり,ポールの助けを借りてやっとの思いで登りきると,ムーアの上は南東からの強風が荒れ狂っている。これはいったい——イギリス名物ともいうべきGALEだ。風の音がすごいので,時々後ろから来る車に全く気付かない。バックパックのショルダーストラップの胸の部分にくくりつけたチョークバッグが風をはらんで,吹流しのように逆立って顔にぶつかってくる。ありえん。
強風で麦藁帽子を飛ばされそうになるので手で押さえなければならず,歩くスピードががくっと落ちる。そのうちに麦藁帽子のあごひもの,帽子側の留め金が片方ちぎれてしまい,もう一度結び直してなんとか使い続ける。いま飛ばされたら回収不可能。
イギリスの新聞やテレビで天気図を見ていると,ときどき「GALES」という太い矢印が現れるが,まともにくらうとかなり呼吸が苦しいことを実感。あまりにひどくなると立ち止まって前かがみでポールをついてやりすごすのだが,こんな場所で耐風姿勢って一体何なんだ。もし今ここで雨が降り始めたら(そろそろ2時だし),ポンチョは風をはらんでしまうから上下ともレインウェアでいくしかないが,暴風雨の中でバックパックを下ろして着替えるなんて考えるだけでぞっとする。傘は1秒未満で壊れるので問題外。
ムーアから斜面を下り,Intake farmまであと50メートル足らずのところでついに雨がぽつぽつ降り始める。なんとか間に合ってよかった。牛小屋と納屋の間を通り抜けて母屋にたどりつくと,きのうとはだいぶ趣が違うが,これはこれで楽しい宿。おかみさんに台所で紅茶を入れてもらい,トラクター(ドイツ製!)のカタログDVDを2人で鑑賞する。部屋へ戻ってシャワーを浴び,洗濯を済ませるころには本降りになる。これで明日はぬかるみ確実。
(区間距離17miles,所要時間6時間30分)
居心地のいいこの宿で1日ゆっくりしていたいが,きょうも17マイル歩かなければならない。悪いことに天気予報は午後2時過ぎから雨の予想。それも強い雨になるという。天気予報の画面をこれほど真剣に見ることは珍しい。風の強い場所で大雨に降られると悲惨なので,なるべく雨の中を歩かなくてもすむようにピッチを上げて歩く。
途中までは地図の読みがよく当たり(本来なら当たるとか外すというようなものではないが),どんどん距離を稼ぐ。Glaisdaleへの長い明るい尾根道を下り切ると,ようやく人家が現れてほっとする。
しかしここで油断したのか,GlaisdaleからEgton Bridgeまで森の中を抜けるルートで,footpathの入り口を間違えて別のルートに入ってしまい,森の中を東に進むべきところ南に大きく進んでしまった。農場のような場所に出て,「ここはどこなんだろう?」と地図上で現在位置を確認して絶句する。三角形の2辺を行く形になってしまい,20分以上ロスした感じ。雨の前にこのロスは痛い。
Grosmontの保存鉄道をゆっくり見学する間もなく,バックパックからポールを外して村はずれの登りにかかる。自動車が通れる道とは思えないほどの急な登り(本当だろうか…道路標識には33%と表示されている)を,前かがみでポールを使いながら登る。登山道ならともかく,自動車が通る舗装道路でこの勾配って一体何なのだろう。
(他のサイトから借用した画像)
前かがみになり,ポールの助けを借りてやっとの思いで登りきると,ムーアの上は南東からの強風が荒れ狂っている。これはいったい——イギリス名物ともいうべきGALEだ。風の音がすごいので,時々後ろから来る車に全く気付かない。バックパックのショルダーストラップの胸の部分にくくりつけたチョークバッグが風をはらんで,吹流しのように逆立って顔にぶつかってくる。ありえん。
強風で麦藁帽子を飛ばされそうになるので手で押さえなければならず,歩くスピードががくっと落ちる。そのうちに麦藁帽子のあごひもの,帽子側の留め金が片方ちぎれてしまい,もう一度結び直してなんとか使い続ける。いま飛ばされたら回収不可能。
イギリスの新聞やテレビで天気図を見ていると,ときどき「GALES」という太い矢印が現れるが,まともにくらうとかなり呼吸が苦しいことを実感。あまりにひどくなると立ち止まって前かがみでポールをついてやりすごすのだが,こんな場所で耐風姿勢って一体何なんだ。もし今ここで雨が降り始めたら(そろそろ2時だし),ポンチョは風をはらんでしまうから上下ともレインウェアでいくしかないが,暴風雨の中でバックパックを下ろして着替えるなんて考えるだけでぞっとする。傘は1秒未満で壊れるので問題外。
ムーアから斜面を下り,Intake farmまであと50メートル足らずのところでついに雨がぽつぽつ降り始める。なんとか間に合ってよかった。牛小屋と納屋の間を通り抜けて母屋にたどりつくと,きのうとはだいぶ趣が違うが,これはこれで楽しい宿。おかみさんに台所で紅茶を入れてもらい,トラクター(ドイツ製!)のカタログDVDを2人で鑑賞する。部屋へ戻ってシャワーを浴び,洗濯を済ませるころには本降りになる。これで明日はぬかるみ確実。
(区間距離17miles,所要時間6時間30分)
Coast to Coast Walk (第10日:Osmotherley→Clay Bank Top→Blakey Ridge) [ウォーキング]
Osmotherleyの村を出ると霧雨。ビレッジストアで水を1本。ポンチョをかぶろうかと迷う程度の霧雨だが,きょうはアップダウンの激しいコースなので邪魔になると考え,そのまま雨に濡れていくことにする。
(Osmotherleyの村。うまく撮れていないが,とてもかわいい静かな村だった)
午前中から150〜200メートル単位のアップダウンをしつこく繰り返す。道自体は,きのうCleveland Wayと合流してからは,格段にしっかりした道―敷石があったりする―になった。道標もまずまず整備されている。このあたり,National trailであるCleveland Wayにくらべて個人提唱のCtoCが冷や飯を食わされている感じ。咲き始めたヒースにおおわれた丘を,あえぎながら登る。前を行く男子3人組は,登りであっという間に遠ざかってしまった。
高地の崖っぷちまで来て,せっかく登ってかせいだ高度を,一度落としてまた登らなければならないことがわかる(見える)地点に来ると,なんともいえないがっかり感。ここに長大なつり橋があれば,むこうのピークとほとんど高低差がないので,登り返さなくて済むのに…と毎回同じことを考える。Carlton Bankへの急な下りあたりから天候が回復し,暑いぐらいになる。今日中になんとかBlakeyまで歩かなければいけないので,Carlton Bankにあるトレッカーご用達のカフェStonesには寄らずに歩き続ける。
何度目のピークになるのか,Wain Stonesの岩山にバックパックを下ろして昼食。サンドイッチにトマトを入れてもらうと水分が多くて食べやすい。これまでの教訓から,昼食も,立ったまま素早く食べる。座ったり,長時間止まったりしているとどんどん足が痛くなるので。
前後1キロぐらい誰もいなくなったので,景気づけに歌いながら歩く。歩くピッチと合った歌って何だろう。まず牛や羊にまじって歩く牧草地ではこれ。
♪ 丘を越え行こうよ
口笛吹きつつ
空は澄み青空
まきばをさして
この突き抜けたお気楽さがなんともいえずいいなあ。歌詞もどんぴしゃり。でもこの歌って,もともとアメリカかイギリスの民謡じゃなかったっけ?
次に,稜線歩きではこれ。
♪ 信濃の国は十州に
境連ぬる国にして
聳ゆる山はいや高く
流るる川はいや遠し
これはまるで稜線歩きのために作られたような爽快感。二番もなかなかいけます。CtoCでいちばん歌ったのはこれだったかもしれない。
まっ平らな畑や木立の中をどこまでも続いている道は,いささか退屈でもあるので,
♪ 往かんかな この道を
遠く遥けく往かんかな
あまりにもぴったり…というか,つきすぎでしょ。
きょうのジェットコースターのような上り下りを我慢しながら歌うのは,
♪ 芙蓉の高嶺を雲井に望み
むらさき匂へる武蔵野原に とか
♪ 見はるかす窓の富士が峯の雪
蛍集めむ門の外堀 とか
♪ 権利自由の揺籃の
歴史は古く今もなほ とか,歌詞を切り貼りしてでたらめに歌いまくる。
…はっと気づくと,いつのまにか追いついてきたトレッカーがすぐ後ろにいたりする(赤面)。麦藁帽かぶって歌いながら歩いているアジア人は,さぞかし変ちくりんな感じに見えることだろう。いゃ実際変ちくりんなのだけど。
Claybank topからUrra Moorまで登るとほぼ平坦な道になり,これで今日の急登は全部終わり。15時までにClaybank topを通過できれば大丈夫と計算していたが,2時間も早く13時すぎに通過できたのでほっとする。相変わらず歌いながら歩いていると,はるかむこうから三輪バギーに乗ったおじさんがやってくる。巨大なペットボトルを抱えて何か飲んでいる。顔がわかるぐらいの距離に近づいてくると,おじさんの後ろから牧羊犬が2匹,ばびゅーんとすごい勢いでヒースの茂みに飛び出して,あっという間に消えていく。おじさんが不思議な節回しで指笛を吹くと,どこかから羊を見つけ出し,こちらへ追い込んでくる。すごい芸当。
Bloworth Crossingでむかしの鉱山鉄道の廃線跡(歩道になっている)に入ってからは,再び前後に誰もいない状態。線路の跡に従って歩くだけなので地図を見る必要もなく,すごく楽ではあるのだけど,暑いし退屈。等高線に沿って何度めかのカーブを曲がると,前方はるかかなた(といっても1キロぐらい先)にライオンインの茶色い屋根が幻のように見えてくる。荒野の一軒家なので見間違いようがない。しかしそこからが長い。最後に廃線跡をはずれてLion Innまで斜面を登ってたどりつく。自動車道路に面しているので車がいっぱい停まっている。
誰もいないトレッキングルートから,荒野の一軒家とはいえ文明界に戻ってきたので,冷たいものが飲みたい。カウンターのメニューに書かれた「生クランベリージュース」を頼むと,氷を入れた300mlぐらいのタンブラーで出してくれる。一気飲み。そのまま血管に入っていく感じで,たとえようもなくうまい。
まだ1リットルぐらい飲めそうな勢いなので,もう少し大きなものを頼もうとメニューを見るが,大きなサイズのソフトドリンクがあまり見当たらない。セブンアップかコーラか。水でもよかったのだけど,なんとなくコーラを1パイント頼んでしまう。コーラ飲むのは10年ぶりぐらいか。これまた一気に飲もうとするが…
まずい。
何じゃこりゃ。これだけ喉が渇いているのにおいしくないとは,よほどの飲み物に相違ない。それにしても,このどんよりとしたケミカルな甘さは何なのだろう…
さてきょうの宿は,ここからRosedaleを下りたところにあるB&B。6マイルあるのでさすがに歩いて行く気にならない。Lion Innにあった公衆電話は今はないというので,借りた電話で迎えに来てもらう。ご主人が電話口で「黒い4WDで行くから,駐車場にいてくれ!」と言うので,念のため「おいらは麦藁帽子をかぶって,緑色の長袖のシャツを着てます!」と説明したら笑われた。
August Guesthouseというこの宿は,Rosedaleの中腹に建っているのだけど,奥方様がバードウォッチングが趣味とかで,各部屋の名前も鳥の名前,庭には鳥に餌をやるための装置(あれは何というのだろう)が備えられて,とても雰囲気のよい宿。
(区間距離21miles,所要時間7時間50分)
(Osmotherleyの村。うまく撮れていないが,とてもかわいい静かな村だった)
午前中から150〜200メートル単位のアップダウンをしつこく繰り返す。道自体は,きのうCleveland Wayと合流してからは,格段にしっかりした道―敷石があったりする―になった。道標もまずまず整備されている。このあたり,National trailであるCleveland Wayにくらべて個人提唱のCtoCが冷や飯を食わされている感じ。咲き始めたヒースにおおわれた丘を,あえぎながら登る。前を行く男子3人組は,登りであっという間に遠ざかってしまった。
高地の崖っぷちまで来て,せっかく登ってかせいだ高度を,一度落としてまた登らなければならないことがわかる(見える)地点に来ると,なんともいえないがっかり感。ここに長大なつり橋があれば,むこうのピークとほとんど高低差がないので,登り返さなくて済むのに…と毎回同じことを考える。Carlton Bankへの急な下りあたりから天候が回復し,暑いぐらいになる。今日中になんとかBlakeyまで歩かなければいけないので,Carlton Bankにあるトレッカーご用達のカフェStonesには寄らずに歩き続ける。
何度目のピークになるのか,Wain Stonesの岩山にバックパックを下ろして昼食。サンドイッチにトマトを入れてもらうと水分が多くて食べやすい。これまでの教訓から,昼食も,立ったまま素早く食べる。座ったり,長時間止まったりしているとどんどん足が痛くなるので。
前後1キロぐらい誰もいなくなったので,景気づけに歌いながら歩く。歩くピッチと合った歌って何だろう。まず牛や羊にまじって歩く牧草地ではこれ。
♪ 丘を越え行こうよ
口笛吹きつつ
空は澄み青空
まきばをさして
この突き抜けたお気楽さがなんともいえずいいなあ。歌詞もどんぴしゃり。でもこの歌って,もともとアメリカかイギリスの民謡じゃなかったっけ?
次に,稜線歩きではこれ。
♪ 信濃の国は十州に
境連ぬる国にして
聳ゆる山はいや高く
流るる川はいや遠し
これはまるで稜線歩きのために作られたような爽快感。二番もなかなかいけます。CtoCでいちばん歌ったのはこれだったかもしれない。
まっ平らな畑や木立の中をどこまでも続いている道は,いささか退屈でもあるので,
♪ 往かんかな この道を
遠く遥けく往かんかな
あまりにもぴったり…というか,つきすぎでしょ。
きょうのジェットコースターのような上り下りを我慢しながら歌うのは,
♪ 芙蓉の高嶺を雲井に望み
むらさき匂へる武蔵野原に とか
♪ 見はるかす窓の富士が峯の雪
蛍集めむ門の外堀 とか
♪ 権利自由の揺籃の
歴史は古く今もなほ とか,歌詞を切り貼りしてでたらめに歌いまくる。
…はっと気づくと,いつのまにか追いついてきたトレッカーがすぐ後ろにいたりする(赤面)。麦藁帽かぶって歌いながら歩いているアジア人は,さぞかし変ちくりんな感じに見えることだろう。いゃ実際変ちくりんなのだけど。
Claybank topからUrra Moorまで登るとほぼ平坦な道になり,これで今日の急登は全部終わり。15時までにClaybank topを通過できれば大丈夫と計算していたが,2時間も早く13時すぎに通過できたのでほっとする。相変わらず歌いながら歩いていると,はるかむこうから三輪バギーに乗ったおじさんがやってくる。巨大なペットボトルを抱えて何か飲んでいる。顔がわかるぐらいの距離に近づいてくると,おじさんの後ろから牧羊犬が2匹,ばびゅーんとすごい勢いでヒースの茂みに飛び出して,あっという間に消えていく。おじさんが不思議な節回しで指笛を吹くと,どこかから羊を見つけ出し,こちらへ追い込んでくる。すごい芸当。
Bloworth Crossingでむかしの鉱山鉄道の廃線跡(歩道になっている)に入ってからは,再び前後に誰もいない状態。線路の跡に従って歩くだけなので地図を見る必要もなく,すごく楽ではあるのだけど,暑いし退屈。等高線に沿って何度めかのカーブを曲がると,前方はるかかなた(といっても1キロぐらい先)にライオンインの茶色い屋根が幻のように見えてくる。荒野の一軒家なので見間違いようがない。しかしそこからが長い。最後に廃線跡をはずれてLion Innまで斜面を登ってたどりつく。自動車道路に面しているので車がいっぱい停まっている。
誰もいないトレッキングルートから,荒野の一軒家とはいえ文明界に戻ってきたので,冷たいものが飲みたい。カウンターのメニューに書かれた「生クランベリージュース」を頼むと,氷を入れた300mlぐらいのタンブラーで出してくれる。一気飲み。そのまま血管に入っていく感じで,たとえようもなくうまい。
まだ1リットルぐらい飲めそうな勢いなので,もう少し大きなものを頼もうとメニューを見るが,大きなサイズのソフトドリンクがあまり見当たらない。セブンアップかコーラか。水でもよかったのだけど,なんとなくコーラを1パイント頼んでしまう。コーラ飲むのは10年ぶりぐらいか。これまた一気に飲もうとするが…
まずい。
何じゃこりゃ。これだけ喉が渇いているのにおいしくないとは,よほどの飲み物に相違ない。それにしても,このどんよりとしたケミカルな甘さは何なのだろう…
さてきょうの宿は,ここからRosedaleを下りたところにあるB&B。6マイルあるのでさすがに歩いて行く気にならない。Lion Innにあった公衆電話は今はないというので,借りた電話で迎えに来てもらう。ご主人が電話口で「黒い4WDで行くから,駐車場にいてくれ!」と言うので,念のため「おいらは麦藁帽子をかぶって,緑色の長袖のシャツを着てます!」と説明したら笑われた。
August Guesthouseというこの宿は,Rosedaleの中腹に建っているのだけど,奥方様がバードウォッチングが趣味とかで,各部屋の名前も鳥の名前,庭には鳥に餌をやるための装置(あれは何というのだろう)が備えられて,とても雰囲気のよい宿。
(区間距離21miles,所要時間7時間50分)
Coast to Coast Walk (第9日:Richmond→Ingleby Cross→Osmotherley) [ウォーキング]
目が覚めるとまず,手足が動くか確認するのが習慣になってしまった。きょうも不思議とちゃんと動く。夕方から爆発する筋肉痛が翌朝までに治まってくれなければ,歩き続けることはできない。
きょうはルート上最長の24マイルを歩くが,最後の数マイル以外はおおむね平坦なので,何時間かかろうと歩き続けることにして8時に宿を出発。朝9時開店のCastle hill bookshopはトレイル関係の本を幅広く揃えている書店で,ぜひ立ち寄りたかったのだが断念。
Brompton-on-Swaleの村の郵便局に入って「87pの切手を10枚,いや12枚ください。」と頼むと,「1st classの6枚セットしか売ってないんだけど」という。びっくりして「ここ郵便局ですよね?」と聞くと,「郵便局は(店の)一番奥です。」と笑いながら教えてくれる。おお。村の雑貨屋に郵便局が同居しているスタイルは,よく見かけるというより,こちらが一般的といってもいいくらい。
その先Bolton-on-Swaleの村の入り口,北側からの道路が合流するところを見覚えのある人影と犬影(?)が横切ったのが見える。Kerry,Ricky,Freddieの2人+1匹だ。いつ以来かな?Nine Standards Riggからの下りでKerryが膝まで泥にはまったというおととい以来だ。こちらはきのう2日分を一挙に歩いているのに,いま一緒に歩いているのはなぜだろう。こちらも毎日かなりの距離を歩いているのに,みんなすごいなぁ。ちょうどかれらも休憩というのでご一緒する。「ずいぶん日焼けしたね~」と冷やかされる。いゃもう鼻の頭がむけてしまって痛いんだけど。
フットパスはともかく,畑と畑のあいだのダートを歩いていると,風景があまり変わらないので少々退屈する。右へ,また左へと曲がりながら,しだいに東へ進む。Danby Wiskeの手前の丘で,東の方向遠くにCleveland Hillsのシルエットが見えることに気付く。今日中にあの丘までたどりつくことが信じられないほど遠くに見える。そのDanby Wiskeは,きょうのルート上で唯一,村といえる程度の村だが,パブに入ってごはんをいただくほどの時間的余裕もないし,座りこむのがいやなので,ベンチでサンドイッチをほおばる。
村の猫がベンチに寄ってくるが,そんなにおいしい食べ物は持ち合わせていないのだが。そこへさっきの2人と1匹が追い付いてくる。彼らもベンチでお昼。
午後も農場から農場を伝い歩くように木立や麦畑や牧草地を歩いていく。金色の麦畑,という表現があるが,麦畑の中のフットパスを歩くと,金色の海が両側に割れたところをモーゼになって歩いているような…
moor farmとnorthfield farmは相談したかのように,納屋の裏にクーラーボックスやバスケットを置いて,そこで飲み物やお菓子や果物を売っている。なかなか秀逸なアイディア。ためしにバナナを1本いただくことにする。バスケットに手をかけた途端に農場の犬が吠えだす。お代を料金箱に入れて農場を後にするまでずっと吠え続けている。なんとよくできた番犬。
Wray house(この農場はトレッカーに反感を抱いているらしく,ゲートの上に頭蓋骨のおもちゃを置いたり,扉の支柱に黒いトカゲのゴム人形を打ちつけたりしている。冗談のつもりかもしれないが,たいへん感じが悪い。)の先でDurham coast lineを横切るのだが,踏切でもなんでもない場所でstileを越え,線路自体を渡らなければならない。複線電化の幹線をこんなふうに渡ってしまっていいのだろうか。ちょうど上り線を長大な貨物列車が通り過ぎていった後なので,下り線に目をこらして確認し,大急ぎで渡る。看板には「Stop Look Listen Beware of Trains」と書いてあるのだけど,頼まれなくてもそうしますって。
一難去ってまた一難,その先で今度は国道A19号線を渡らなければならない。これまた信号もラウンドアバウトもない地点で,まっすぐな片側3車線である。感覚的には,東名高速道路を渡れと言われている感じ。車はほとんど途切れないので,わずかの隙に中央分離帯まで突進しなければならないが,朝から既に20マイル以上歩いているので,気ばかり焦って足が思うように前に出ない。怖いなあ。
きょうの目的地Osmotherleyに5時までに着ければ,村のアウトドアショップで靴擦れ用の絆創膏が買える,と計算していたのだけどそうは問屋がおろさず,1マイルほど手前にあるCleveland Hills(ついに登り!)の森の中でしっかり道に迷う。村の中心の四つ角にある宿についたのは5時半。
なかなかクラシックな宿だが気温が低く,部屋には暖房が入っているので洗濯には天国。きのうと同様,宿に着いたのを待ちかねるように雨が降り出す。シャワーを浴びて洗濯し,下のパブで晩ごはんをいただいているうちにお約束どおり両足に激痛。山盛りのアイスクリームもそこそこに,這って部屋へ戻り,BBC Look Northの天気予報だけ見て爆睡。
(区間距離24miles,所要時間9時間10分)
きょうはルート上最長の24マイルを歩くが,最後の数マイル以外はおおむね平坦なので,何時間かかろうと歩き続けることにして8時に宿を出発。朝9時開店のCastle hill bookshopはトレイル関係の本を幅広く揃えている書店で,ぜひ立ち寄りたかったのだが断念。
Brompton-on-Swaleの村の郵便局に入って「87pの切手を10枚,いや12枚ください。」と頼むと,「1st classの6枚セットしか売ってないんだけど」という。びっくりして「ここ郵便局ですよね?」と聞くと,「郵便局は(店の)一番奥です。」と笑いながら教えてくれる。おお。村の雑貨屋に郵便局が同居しているスタイルは,よく見かけるというより,こちらが一般的といってもいいくらい。
その先Bolton-on-Swaleの村の入り口,北側からの道路が合流するところを見覚えのある人影と犬影(?)が横切ったのが見える。Kerry,Ricky,Freddieの2人+1匹だ。いつ以来かな?Nine Standards Riggからの下りでKerryが膝まで泥にはまったというおととい以来だ。こちらはきのう2日分を一挙に歩いているのに,いま一緒に歩いているのはなぜだろう。こちらも毎日かなりの距離を歩いているのに,みんなすごいなぁ。ちょうどかれらも休憩というのでご一緒する。「ずいぶん日焼けしたね~」と冷やかされる。いゃもう鼻の頭がむけてしまって痛いんだけど。
フットパスはともかく,畑と畑のあいだのダートを歩いていると,風景があまり変わらないので少々退屈する。右へ,また左へと曲がりながら,しだいに東へ進む。Danby Wiskeの手前の丘で,東の方向遠くにCleveland Hillsのシルエットが見えることに気付く。今日中にあの丘までたどりつくことが信じられないほど遠くに見える。そのDanby Wiskeは,きょうのルート上で唯一,村といえる程度の村だが,パブに入ってごはんをいただくほどの時間的余裕もないし,座りこむのがいやなので,ベンチでサンドイッチをほおばる。
村の猫がベンチに寄ってくるが,そんなにおいしい食べ物は持ち合わせていないのだが。そこへさっきの2人と1匹が追い付いてくる。彼らもベンチでお昼。
午後も農場から農場を伝い歩くように木立や麦畑や牧草地を歩いていく。金色の麦畑,という表現があるが,麦畑の中のフットパスを歩くと,金色の海が両側に割れたところをモーゼになって歩いているような…
moor farmとnorthfield farmは相談したかのように,納屋の裏にクーラーボックスやバスケットを置いて,そこで飲み物やお菓子や果物を売っている。なかなか秀逸なアイディア。ためしにバナナを1本いただくことにする。バスケットに手をかけた途端に農場の犬が吠えだす。お代を料金箱に入れて農場を後にするまでずっと吠え続けている。なんとよくできた番犬。
Wray house(この農場はトレッカーに反感を抱いているらしく,ゲートの上に頭蓋骨のおもちゃを置いたり,扉の支柱に黒いトカゲのゴム人形を打ちつけたりしている。冗談のつもりかもしれないが,たいへん感じが悪い。)の先でDurham coast lineを横切るのだが,踏切でもなんでもない場所でstileを越え,線路自体を渡らなければならない。複線電化の幹線をこんなふうに渡ってしまっていいのだろうか。ちょうど上り線を長大な貨物列車が通り過ぎていった後なので,下り線に目をこらして確認し,大急ぎで渡る。看板には「Stop Look Listen Beware of Trains」と書いてあるのだけど,頼まれなくてもそうしますって。
一難去ってまた一難,その先で今度は国道A19号線を渡らなければならない。これまた信号もラウンドアバウトもない地点で,まっすぐな片側3車線である。感覚的には,東名高速道路を渡れと言われている感じ。車はほとんど途切れないので,わずかの隙に中央分離帯まで突進しなければならないが,朝から既に20マイル以上歩いているので,気ばかり焦って足が思うように前に出ない。怖いなあ。
きょうの目的地Osmotherleyに5時までに着ければ,村のアウトドアショップで靴擦れ用の絆創膏が買える,と計算していたのだけどそうは問屋がおろさず,1マイルほど手前にあるCleveland Hills(ついに登り!)の森の中でしっかり道に迷う。村の中心の四つ角にある宿についたのは5時半。
なかなかクラシックな宿だが気温が低く,部屋には暖房が入っているので洗濯には天国。きのうと同様,宿に着いたのを待ちかねるように雨が降り出す。シャワーを浴びて洗濯し,下のパブで晩ごはんをいただいているうちにお約束どおり両足に激痛。山盛りのアイスクリームもそこそこに,這って部屋へ戻り,BBC Look Northの天気予報だけ見て爆睡。
(区間距離24miles,所要時間9時間10分)
Coast to Coast Walk (第8日:Keld→Reeth→Richmond) [ウォーキング]
限られた日程でCoast to Coastを歩き切るため,きょうから3日間連続でかなり長い距離を歩く予定。特に,モデルコースの2日分を一気に歩くきょうの行程はかなり大変。
朝霧が立ちこめるKeldからReethまでの前半は,川沿いのRiverside Alternativeを選ぶ。が,川沿いは川沿いなりに上り下りがあってけっこう大変。特に途中のGunnersideからは,川沿いのフットパスを行けばいいのに,なぜか段丘上のムーアへ登るルートに入り込んでしまい(=登るのが大変),しかもムーアまで出てから道がわからなくなる。
困ったなあ…と思いながらムーアのへり(崖の上)を東へ歩いていく(あぶないが,河岸段丘から見下ろすので現在位置がわかりやすい)。途中から地図上の位置が判明したのでほっとする。その後も登ったり降りたりしながら,13時ちょっと前にReethに到着。近隣の都会からの行楽とおぼしきお客さんでにぎわっている。
ベンチで弁当をつかったあと,すぐ横にビジターセンターがあったので中に入ってPCを使わせてもらう。使用料は1時間につき1ポンド也。ところがこのPC,日本語を表示してくれない。がんばって言語を日本語に切り替えようとすると,「東アジア諸言語ランゲージパックをWindowsの(OSの)CDからコピーしてください」といメッセージが出てきてしまう。ビジターセンターのご婦人はPCに詳しいわけでもなく,またWindows OSのCDの所在も知らないというので,諦めて歩く。30分無駄にしてしまった。休み時間が長かったので,歩き始めがものすごく辛い。「休憩を極力とらないこと」と「休憩中座らない(足を曲げない)こと」が,楽に歩く要諦であることに気付く。
準備編でも書いたが,行動食として日本から持ってきた「とらや」のミニ羊羹や銀座ウエストのフルーツバーがすばらしい。
まず,ウエストポケットに入れておけばリュックサックを下ろさずに取り出し,歩きながら食べられる。そして水がいらない。カロリーもけっこう高い。歩いているとやたらと腹が減るので,30分おきに何か食べている感じ。宿を出るときにポケットに入れていたミニ羊羹2本,フルーツバー1本,SOYJOY1本,ビスケット1袋ぐらいを1日で食べきってしまう。
そして無論この他に,ランチパックを食べている。朝ごはんの充実ぶりと晩ごはんの巨大さを考え合わせると,1日の摂取カロリーは軽く3500カロリーぐらいになっているのではないかと。
牧場をいくつも横切り,牧草地の斜面を登ったり降りたり。途中の村は,ビレッジショップもないような小さな村ばかり。牧場を横切っている途中に,牧草地に水があふれて小川になっているところがある。慎重に渡る場所を探していると,後ろからきたジモティーたちがきゃあきゃあいいながらジャンプして飛び越えていく。それほど鍛えているように見えないのにけっこう軽々と飛び越えていくのはなぜだろう。自分のジャンプ力では手前に落ちてしまうと判断してさら場所を探し,やっとの思いで渡り終える。10分ほどのロス。
だんだん雲が広がってきて,リッチモンドの市街地の手前でにわか雨につかまる。ポンチョをかぶるが,柄が派手なので,市街地に着く前にあがってくれないかな…と思っていると,うまくやんでくれた。
クリケットグランドの横を通り過ぎ,18時すぎに町の広場に着いてみると,行程中最大の町なのに,日曜の夕方とあって,ほとんどの店は既に閉まっていてがっかり。頼みのBootsも1時間前に閉店している。そんな中で唯一あいていたのがco-op。日曜日も22時まであいているという。えらい!
宿で一気飲みするためのスムージーと明日のサンドイッチを買う。宿は3階の11号室で,なぜかベッドルームと廊下をはさんで反対側にバスルーム(11号室専用のバスルーム)がある。バスタブのある宿ではすかさず浸かって筋肉痛をほぐす。外では激しい雨の音。なんとか間に合ってよかった。
晩飯を食おうと部屋から階下に降りると,パブにPeteとSueが座っている!1週間ぶりの再会を祝う。このあとの予定を聞いてみると,自分と同じ木曜日にRHBに着く予定だという。じゃあRHBに無事着いたら,お祝いの宴会をやりましょう。そのままパブのテレビでロンドン五輪の閉会式。途中で眠くなり,激しい筋肉痛に苦しみながら部屋へ戻って寝る。明朝になっても歩けないぐらい痛かったらどうしようかと考え…る余裕もなく爆睡。頭が枕につく前に,もう眠っている感じ。
(区間距離22miles,所要時間9時間10分)
朝霧が立ちこめるKeldからReethまでの前半は,川沿いのRiverside Alternativeを選ぶ。が,川沿いは川沿いなりに上り下りがあってけっこう大変。特に途中のGunnersideからは,川沿いのフットパスを行けばいいのに,なぜか段丘上のムーアへ登るルートに入り込んでしまい(=登るのが大変),しかもムーアまで出てから道がわからなくなる。
困ったなあ…と思いながらムーアのへり(崖の上)を東へ歩いていく(あぶないが,河岸段丘から見下ろすので現在位置がわかりやすい)。途中から地図上の位置が判明したのでほっとする。その後も登ったり降りたりしながら,13時ちょっと前にReethに到着。近隣の都会からの行楽とおぼしきお客さんでにぎわっている。
ベンチで弁当をつかったあと,すぐ横にビジターセンターがあったので中に入ってPCを使わせてもらう。使用料は1時間につき1ポンド也。ところがこのPC,日本語を表示してくれない。がんばって言語を日本語に切り替えようとすると,「東アジア諸言語ランゲージパックをWindowsの(OSの)CDからコピーしてください」といメッセージが出てきてしまう。ビジターセンターのご婦人はPCに詳しいわけでもなく,またWindows OSのCDの所在も知らないというので,諦めて歩く。30分無駄にしてしまった。休み時間が長かったので,歩き始めがものすごく辛い。「休憩を極力とらないこと」と「休憩中座らない(足を曲げない)こと」が,楽に歩く要諦であることに気付く。
準備編でも書いたが,行動食として日本から持ってきた「とらや」のミニ羊羹や銀座ウエストのフルーツバーがすばらしい。
まず,ウエストポケットに入れておけばリュックサックを下ろさずに取り出し,歩きながら食べられる。そして水がいらない。カロリーもけっこう高い。歩いているとやたらと腹が減るので,30分おきに何か食べている感じ。宿を出るときにポケットに入れていたミニ羊羹2本,フルーツバー1本,SOYJOY1本,ビスケット1袋ぐらいを1日で食べきってしまう。
そして無論この他に,ランチパックを食べている。朝ごはんの充実ぶりと晩ごはんの巨大さを考え合わせると,1日の摂取カロリーは軽く3500カロリーぐらいになっているのではないかと。
牧場をいくつも横切り,牧草地の斜面を登ったり降りたり。途中の村は,ビレッジショップもないような小さな村ばかり。牧場を横切っている途中に,牧草地に水があふれて小川になっているところがある。慎重に渡る場所を探していると,後ろからきたジモティーたちがきゃあきゃあいいながらジャンプして飛び越えていく。それほど鍛えているように見えないのにけっこう軽々と飛び越えていくのはなぜだろう。自分のジャンプ力では手前に落ちてしまうと判断してさら場所を探し,やっとの思いで渡り終える。10分ほどのロス。
だんだん雲が広がってきて,リッチモンドの市街地の手前でにわか雨につかまる。ポンチョをかぶるが,柄が派手なので,市街地に着く前にあがってくれないかな…と思っていると,うまくやんでくれた。
クリケットグランドの横を通り過ぎ,18時すぎに町の広場に着いてみると,行程中最大の町なのに,日曜の夕方とあって,ほとんどの店は既に閉まっていてがっかり。頼みのBootsも1時間前に閉店している。そんな中で唯一あいていたのがco-op。日曜日も22時まであいているという。えらい!
宿で一気飲みするためのスムージーと明日のサンドイッチを買う。宿は3階の11号室で,なぜかベッドルームと廊下をはさんで反対側にバスルーム(11号室専用のバスルーム)がある。バスタブのある宿ではすかさず浸かって筋肉痛をほぐす。外では激しい雨の音。なんとか間に合ってよかった。
晩飯を食おうと部屋から階下に降りると,パブにPeteとSueが座っている!1週間ぶりの再会を祝う。このあとの予定を聞いてみると,自分と同じ木曜日にRHBに着く予定だという。じゃあRHBに無事着いたら,お祝いの宴会をやりましょう。そのままパブのテレビでロンドン五輪の閉会式。途中で眠くなり,激しい筋肉痛に苦しみながら部屋へ戻って寝る。明朝になっても歩けないぐらい痛かったらどうしようかと考え…る余裕もなく爆睡。頭が枕につく前に,もう眠っている感じ。
(区間距離22miles,所要時間9時間10分)
Coast to Coast Walk (第7日:Kirkby Stephen→Keld) [ウォーキング]
朝一番に帽子を買おうと村のアウトドアショップの前で待つが,開店時間の9時になっても開かない。数分待ったが何の気配もないので諦め,向かいにある雑貨屋で「なにか帽子のたぐいはないですかね…」と尋ねたら,見切処分品のバスケットに入っていた麦藁帽子をわずか3ポンドで売ってくれた。おお。
その麦藁帽子をかぶり,あごひもを結んで歩きはじめると,ちょうどScott率いるパーティが村の東にかかる橋を渡って出ていくところが見える。その後尾について歩きはじめる。大人数の団体なので,自分の歩くペースよりわずかに遅く,ときどき止まるが,きょうは1日ついていくつもりなので,その都度自分も止まって休憩する。ガイドをただで利用していることになるが,みんな笑って許してくれる。けっこう高齢のご婦人もいるが,まあまあのペースで進んでいくので,いらいらすることはない。
前を歩く人に続いて坂を上っていると,どうしても背中のバックパックが目に入るのだけど,日本の山で見かけるより質素で地味なものが多い。道具に凝る暇があったら体力鍛えておけ,ということでしょう。メーカーでいえばOsprey,Berghaus,Karrimorの3社が比較的多いか。ちょっと目立つのは,ハイドレーションを使っている人がやや多い(2~3割ぐらい)こと。長時間歩き続けるロングトレイルでは,バックパックを外さずに(=立ち止まらずに)給水できるメリットは大きいと思う。あるいは,もともとトレイルランを趣味にしている人がCtoCに挑戦するケースが多いということなのかもしれない。
登り始めて2時間足らずできょうのピーク地点Nine standards riggに到達。巨大な石積みがいくつも並んでいる不思議な場所。ここでまたまたKerryとRIckyとレトリーバーのFreddieの2人と1匹に遭遇。L.L.Beanの2人も。
このピークは,ブリテン島の背骨にあたるペニン山脈のピークであるだけでなく,東側(北海)と西側(アイリッシュ海)の分水嶺でもある。ようやくここまで来た。
さてピークからの下り。これが難しい。ルートは3つ(ブルー・レッド・グリーン)あって,浸食を避けるために季節ごとに使い分けられている。8〜11月はブルールートが指定されているが,一番ぬかるみの具合がひどいのがブルー,その次が5〜7月のレッドになる。12〜4月のグリーンはNine standards riggまで登らずに下を巻いていくので,悪天候時と冬季用という位置づけか。
で,Scottはレッドルートを下るつもりらしく,慎重に南へ進んでいく。ブルールートに比べると,はっきりしない尾根とはいえ尾根筋なのだが,平らな分だけ水がよくたまっていて,あちこちに深いぬかるみがありけっこう沈む。足首まで泥まみれになる者が続出。自分はトレッキングポールで体重を分散しているせいか,きょうはほとんど泥にはまらずに済んでいる。
次第に高度を落としながら最後に林道に出るとほっと一息。難所を超えた安堵感がみなの顔にも表れている。近くの避難小屋で昼食。みんなけっこうな量を食べている。
草原の林道を歩いて,Ravenseat Farmでお茶。近づいていくと,「子ども放し飼いにつき注意」という看板があって笑える。ジョークを解説するのは野暮だが,このあたりの農家は「放し飼い鶏の卵」の看板を出して売っていることが多いので,通りがかった人はにやっと笑う寸法。
大人数がいきなりお茶に押しかけたので,農場のおばさんは小学生の娘まで動員して大忙し。こんなときでも「じゃあ私も紅茶で」とはならず,みんな違ったものを頼む(コーヒーがいいとか,スコーンくれとか,セブンアップとか)のが面白いが,註文を受けるおばさんは大変。
自動車道路に戻り,Keldの村の近くまで来たところで,道ばたに数日ぶりにヤナギランを発見。このあたりがちょうど95マイル地点つまり全行程の半分まで来たことになる。やっと半分。
Keld lodgeでお茶を飲んでいると,ブルールートに下りていったKerryがビニールのシューカバーを履いてビールを飲んでいるのに遭遇。ブルールートどうだった?と聞くと,膝まで泥にはまって,いま靴とパンツを丸洗いしてきたという。膝まで!膝まではまったら,このまま全身沈むのではという恐怖感に囚われそう。
Keld Lodgeのおやじさん(ご夫婦で経営している)は,もともとトレッキング好きで,2年前にこの建物を買い取ってロッジを開業したという。お客の大半はトレッカーである。ランチパックを頼むのに申込用紙があって,サンドイッチの種類とか飲み物とか果物とかポテチの要否(!)とかを記入するようになっているのも気がきいている。Swaledaleの一番奥にあるこの村は,夜はかなり寒くなるが,このロッジにはなんと,スキー宿のような乾燥室があって,24時間暖房がガンガン焚かれている。流し台でありったけの洗濯をして干すと,あっという間に乾く。すばらしい。ついでに靴とインソールも乾かす。おいしい晩ごはんをいただき極楽。これでシャワーが共同でなければ,120点なのだけど。
(区間距離11miles,所要時間5時間30分)
その麦藁帽子をかぶり,あごひもを結んで歩きはじめると,ちょうどScott率いるパーティが村の東にかかる橋を渡って出ていくところが見える。その後尾について歩きはじめる。大人数の団体なので,自分の歩くペースよりわずかに遅く,ときどき止まるが,きょうは1日ついていくつもりなので,その都度自分も止まって休憩する。ガイドをただで利用していることになるが,みんな笑って許してくれる。けっこう高齢のご婦人もいるが,まあまあのペースで進んでいくので,いらいらすることはない。
前を歩く人に続いて坂を上っていると,どうしても背中のバックパックが目に入るのだけど,日本の山で見かけるより質素で地味なものが多い。道具に凝る暇があったら体力鍛えておけ,ということでしょう。メーカーでいえばOsprey,Berghaus,Karrimorの3社が比較的多いか。ちょっと目立つのは,ハイドレーションを使っている人がやや多い(2~3割ぐらい)こと。長時間歩き続けるロングトレイルでは,バックパックを外さずに(=立ち止まらずに)給水できるメリットは大きいと思う。あるいは,もともとトレイルランを趣味にしている人がCtoCに挑戦するケースが多いということなのかもしれない。
登り始めて2時間足らずできょうのピーク地点Nine standards riggに到達。巨大な石積みがいくつも並んでいる不思議な場所。ここでまたまたKerryとRIckyとレトリーバーのFreddieの2人と1匹に遭遇。L.L.Beanの2人も。
このピークは,ブリテン島の背骨にあたるペニン山脈のピークであるだけでなく,東側(北海)と西側(アイリッシュ海)の分水嶺でもある。ようやくここまで来た。
さてピークからの下り。これが難しい。ルートは3つ(ブルー・レッド・グリーン)あって,浸食を避けるために季節ごとに使い分けられている。8〜11月はブルールートが指定されているが,一番ぬかるみの具合がひどいのがブルー,その次が5〜7月のレッドになる。12〜4月のグリーンはNine standards riggまで登らずに下を巻いていくので,悪天候時と冬季用という位置づけか。
で,Scottはレッドルートを下るつもりらしく,慎重に南へ進んでいく。ブルールートに比べると,はっきりしない尾根とはいえ尾根筋なのだが,平らな分だけ水がよくたまっていて,あちこちに深いぬかるみがありけっこう沈む。足首まで泥まみれになる者が続出。自分はトレッキングポールで体重を分散しているせいか,きょうはほとんど泥にはまらずに済んでいる。
次第に高度を落としながら最後に林道に出るとほっと一息。難所を超えた安堵感がみなの顔にも表れている。近くの避難小屋で昼食。みんなけっこうな量を食べている。
草原の林道を歩いて,Ravenseat Farmでお茶。近づいていくと,「子ども放し飼いにつき注意」という看板があって笑える。ジョークを解説するのは野暮だが,このあたりの農家は「放し飼い鶏の卵」の看板を出して売っていることが多いので,通りがかった人はにやっと笑う寸法。
大人数がいきなりお茶に押しかけたので,農場のおばさんは小学生の娘まで動員して大忙し。こんなときでも「じゃあ私も紅茶で」とはならず,みんな違ったものを頼む(コーヒーがいいとか,スコーンくれとか,セブンアップとか)のが面白いが,註文を受けるおばさんは大変。
自動車道路に戻り,Keldの村の近くまで来たところで,道ばたに数日ぶりにヤナギランを発見。このあたりがちょうど95マイル地点つまり全行程の半分まで来たことになる。やっと半分。
Keld lodgeでお茶を飲んでいると,ブルールートに下りていったKerryがビニールのシューカバーを履いてビールを飲んでいるのに遭遇。ブルールートどうだった?と聞くと,膝まで泥にはまって,いま靴とパンツを丸洗いしてきたという。膝まで!膝まではまったら,このまま全身沈むのではという恐怖感に囚われそう。
Keld Lodgeのおやじさん(ご夫婦で経営している)は,もともとトレッキング好きで,2年前にこの建物を買い取ってロッジを開業したという。お客の大半はトレッカーである。ランチパックを頼むのに申込用紙があって,サンドイッチの種類とか飲み物とか果物とかポテチの要否(!)とかを記入するようになっているのも気がきいている。Swaledaleの一番奥にあるこの村は,夜はかなり寒くなるが,このロッジにはなんと,スキー宿のような乾燥室があって,24時間暖房がガンガン焚かれている。流し台でありったけの洗濯をして干すと,あっという間に乾く。すばらしい。ついでに靴とインソールも乾かす。おいしい晩ごはんをいただき極楽。これでシャワーが共同でなければ,120点なのだけど。
(区間距離11miles,所要時間5時間30分)
Coast to Coast Walk (第6日:Shap→Kirkby Stephen) [ウォーキング]
朝からいい天気。
きょうはこれまでの5日間と違って,山より丘のような比較的平坦な地形を東へ進んでいく。極端な登り下りはないが,その代わりだらだらと長い距離を歩かなければならない。寒さの心配はないので,グラスミアで買った半袖シャツを試すことにする。ビレッジストアでサンドイッチを買って出発。村外れの細い歩道橋でWest Coast MainlineとM6をまたぐ。大きな石切場の横を歩いていると,フェンスのむこうは採石のために大きくえぐられて崖になったりしている。
日差しが強い。西から東へ歩いていくと,午前中は右前方から,午後は右側から日が当たっていることが多いので,あまりいい天気になるとまぶしくて困る。帽子を失くして補充できていないので,少し額の前に出るように工夫して手拭を頭に巻きつける。
66マイル地点の先で道に迷う。斜面を登りながら石灰岩まじりの牧草地を南東から東南東に(やや左に)ゆっくり曲るように地図には描いてある(標高357地点の手前)のだが,手前で強く曲ってしまい,場所がわからなくなる。
うろうろしたあげく元の場所に戻ると,さっきOddendaleで追い抜いたご夫婦がずっと先を歩いているので,だいぶ道を反れてしまっていたことに気付く。しかし今日は人が少ないなぁ。Shapを出てからこのご夫婦しか見かけていない。追いついて「いやー見事に道がわからなくなりました」と笑ってからしばらく一緒に歩いていると,道の両脇のヒースの話になり,「ヨークシャーのムーアのヒースは,来週咲きはじめるらしいから,私たちが歩くころにはすごくきれいだと思うわ」と教えてもらう。すばらしい。
Ortonの村外れまできたところで正午。暑いのとまぶしいのでだいぶ消耗している。グラスミアとパターデールの間で見かけたL.L.Beanの二人連れに追いつく。道端の農場がテントとベンチをしつらえて野茶屋をやっている。「CtoC 11miles to K.Stephen Last chance for Refreshments」と看板に書かれているのに激しく心惹かれる(中央下,"SCAR SIDE FARM"の下の看板)。
ここでお弁当にしようか…しかし団体さんがいるので,もう少し歩こうと決めて歩き出したとたん,その団体さんが農場から出てきて,しばらく一緒に歩くことになる。2日前にパターデールからの登りで見かけたパーティーであることに気付く。12人ぐらいのパーティーなのだが,日本で山を歩いているときのように1列縦隊で先頭にサブリーダー,後尾にリーダーというしっかりした感じではなく,なんとなくぞろぞろついていく感じ。話を聞いてみると,募られてオーストラリアから来たという。石垣で細かく区切られた牧草地を,ゲートやスタイルを越えて何区画も越えていく。
73マイルあたりでパーティが後ろに遠ざかり,再び単独になる。ちょうど道がムーアにかかり,再び地図とコンパスを使って慎重に進んでいく。ムーアを歩くといっても,踏跡がはっきりしているときは,曲がる場所で曲がる方向を確認して進んでいけばいいのだが,はっきりしないときに方向を変えてすすむのはけっこう難しい。74マイル地点で,「はっきりしない南への踏跡」から「はっきりしない東への踏跡」へ90度曲がる箇所がある。さきほどの失敗に懲りて,周囲の地形との関係も考えながら真剣に検討する。ついでにここでお昼。座ると足が苦しくなるので,立ったままサンドイッチをほおばり,レモン水を飲む。
(↑方向を確認しながら,あるかないかの踏み跡をたどっていく)
幸いここではコースを外れることなく,かすかな踏跡をたどって東へ進む。やがて気付いたのだが,牧草地の羊が石積みの壁の日影にびっしり集まっている。羊にもきょうは特に暑いということなんだろうな。森の中を歩くとき以外は全く日差しを避けることができないので,とても暑い。それに,牧草地の地面はトラクターが入って凹凸があるのだけど,その上に草が生えてその凹凸を隠しているので,けっこう歩きにくく足首に負担がかかる。くるぶしのマメを悪化させないように靴ヒモをゆるめに結んでいるので,余計足首がつらい。
一度谷底に下りて川を渡り(小学生ぐらいの子が川遊びをしている。何十年と変わらないイギリスの夏の風景なんだろう),再び小さな山を登る。もうこの丘の向こうはKirkby Stephenの村が見える北斜面になるはず。ところが79マイル地点=山の頂上付近で再び迷う。それまで左手に続いていた石垣を離れて,少し先で北東から東北東にゆっくり曲がって新たな石垣を左手に見る,というシチュエーション(地図の↓地点)で,すぐ先を真東に曲がってしまったようで,等高線に沿って右手に行けども行けども石垣が見えてこない。やっと前方に見えてきたので方向を確かめると,なんと南に向かっている。
南?なんで??
90度以上余計に曲がってしまった模様。
こりゃいかんというので元に戻ると,ずっと手前で追い抜いたはずの何人かと再び合流。30分ぐらいのロスだったが,それよりも1日に2度も,同じパターンで道に迷ってしまったことにがっくり。
Kirkby Stephenの町が近くなったところで,きのうも一緒に歩いたKerry,Ricky,Freddieの2人と1匹が軽々と追い抜いていく。いつ見ても速い。
Kirkby Stephenの町に入って,とぼとぼと歩道を歩いていたら,向こうから来た老婦人に呼びとめられる。道でも聞かれるのだろうか。そんなわけないか。「あなた,毎日歩いてるの?」と聞かれたので「そうですよ♪」と答えると,「あした天気だといいわね」とわざわざ激励のことばをかけてくださる。これはとても嬉しい。
B&Bに着くと,もう臨月かという大きなおなかをしたおかみさんがウエルカムドリンクのお茶を出してくれる。マグカップで何杯も飲めてしまう。ついでに洗濯物を庭に干してくださる。部屋へ入って鏡を見ると,真赤に日焼けしてしまったことに気づく。痛い。しかし薬屋さんはもう4時半に閉まってるし,CoopにはNiveaしかない。Niveaでもないよりはいいだろ!と購入して顔に塗りまくる。ついでに今日も買ってきたスムージーを一気飲み。パッケージにロンドン五輪オフィシャルスムージーとあるのが笑える。オフィシャルスムージー。
薄暗くなってから再度外へ出てぶらぶら歩いていたら,教会の横の路地の奥に小さな中華料理屋を発見。野菜スープと酢鶏をいただいていると,隣の席に1人で座っていた男性のお客が声をかけてくる。どこかで見た人だな…と思っていると,さっきの団体のガイドさんだった。Scottという名前で,ガイドはしていても,晩ごはんは一人で食べたいのでこの店は内緒にしているといって笑う。何度かきみを見かけたよ…というので,きのうPatterdaleからの登りでご一緒しましたよね,というと,さきおとといにもRothwaiteからの登りで抜いていったでしょ,と言われる。そういえば,Greenup edgeのちょっと手前の岩山の,展望が効くところにパーティーが休憩していたな…
何日ぐらいでCtoCを歩くつもりなの,と聞かれたので「12日のつもりです。」と言うと,それはかなり大変だね…と言われる。ツアーのみなさんは?と聞くと14日間ということで,RHBには土曜日に着く予定だとか。おお,やはり12日はきつめの日程なのか…
それにしても,いたるところboggy&muddyで大変ですよね,と聞いてみると,2ヶ月ぐらい前にはもっと雨が続いていて(日本でそのニュースを見て装備を変更したような気が),大きく迂回しなきゃならないとか,それはもう大変だったらしい。それに比べれば,いまはずっとマシだという。明日のルートは,途中からほぼ平らな湿地の,あるかないかの尾根筋をたどっていくので,パーティの後ろを歩かせてもらうことにする。
(区間距離20miles,所要時間8時間)
きょうはこれまでの5日間と違って,山より丘のような比較的平坦な地形を東へ進んでいく。極端な登り下りはないが,その代わりだらだらと長い距離を歩かなければならない。寒さの心配はないので,グラスミアで買った半袖シャツを試すことにする。ビレッジストアでサンドイッチを買って出発。村外れの細い歩道橋でWest Coast MainlineとM6をまたぐ。大きな石切場の横を歩いていると,フェンスのむこうは採石のために大きくえぐられて崖になったりしている。
日差しが強い。西から東へ歩いていくと,午前中は右前方から,午後は右側から日が当たっていることが多いので,あまりいい天気になるとまぶしくて困る。帽子を失くして補充できていないので,少し額の前に出るように工夫して手拭を頭に巻きつける。
66マイル地点の先で道に迷う。斜面を登りながら石灰岩まじりの牧草地を南東から東南東に(やや左に)ゆっくり曲るように地図には描いてある(標高357地点の手前)のだが,手前で強く曲ってしまい,場所がわからなくなる。
うろうろしたあげく元の場所に戻ると,さっきOddendaleで追い抜いたご夫婦がずっと先を歩いているので,だいぶ道を反れてしまっていたことに気付く。しかし今日は人が少ないなぁ。Shapを出てからこのご夫婦しか見かけていない。追いついて「いやー見事に道がわからなくなりました」と笑ってからしばらく一緒に歩いていると,道の両脇のヒースの話になり,「ヨークシャーのムーアのヒースは,来週咲きはじめるらしいから,私たちが歩くころにはすごくきれいだと思うわ」と教えてもらう。すばらしい。
Ortonの村外れまできたところで正午。暑いのとまぶしいのでだいぶ消耗している。グラスミアとパターデールの間で見かけたL.L.Beanの二人連れに追いつく。道端の農場がテントとベンチをしつらえて野茶屋をやっている。「CtoC 11miles to K.Stephen Last chance for Refreshments」と看板に書かれているのに激しく心惹かれる(中央下,"SCAR SIDE FARM"の下の看板)。
ここでお弁当にしようか…しかし団体さんがいるので,もう少し歩こうと決めて歩き出したとたん,その団体さんが農場から出てきて,しばらく一緒に歩くことになる。2日前にパターデールからの登りで見かけたパーティーであることに気付く。12人ぐらいのパーティーなのだが,日本で山を歩いているときのように1列縦隊で先頭にサブリーダー,後尾にリーダーというしっかりした感じではなく,なんとなくぞろぞろついていく感じ。話を聞いてみると,募られてオーストラリアから来たという。石垣で細かく区切られた牧草地を,ゲートやスタイルを越えて何区画も越えていく。
73マイルあたりでパーティが後ろに遠ざかり,再び単独になる。ちょうど道がムーアにかかり,再び地図とコンパスを使って慎重に進んでいく。ムーアを歩くといっても,踏跡がはっきりしているときは,曲がる場所で曲がる方向を確認して進んでいけばいいのだが,はっきりしないときに方向を変えてすすむのはけっこう難しい。74マイル地点で,「はっきりしない南への踏跡」から「はっきりしない東への踏跡」へ90度曲がる箇所がある。さきほどの失敗に懲りて,周囲の地形との関係も考えながら真剣に検討する。ついでにここでお昼。座ると足が苦しくなるので,立ったままサンドイッチをほおばり,レモン水を飲む。
(↑方向を確認しながら,あるかないかの踏み跡をたどっていく)
幸いここではコースを外れることなく,かすかな踏跡をたどって東へ進む。やがて気付いたのだが,牧草地の羊が石積みの壁の日影にびっしり集まっている。羊にもきょうは特に暑いということなんだろうな。森の中を歩くとき以外は全く日差しを避けることができないので,とても暑い。それに,牧草地の地面はトラクターが入って凹凸があるのだけど,その上に草が生えてその凹凸を隠しているので,けっこう歩きにくく足首に負担がかかる。くるぶしのマメを悪化させないように靴ヒモをゆるめに結んでいるので,余計足首がつらい。
一度谷底に下りて川を渡り(小学生ぐらいの子が川遊びをしている。何十年と変わらないイギリスの夏の風景なんだろう),再び小さな山を登る。もうこの丘の向こうはKirkby Stephenの村が見える北斜面になるはず。ところが79マイル地点=山の頂上付近で再び迷う。それまで左手に続いていた石垣を離れて,少し先で北東から東北東にゆっくり曲がって新たな石垣を左手に見る,というシチュエーション(地図の↓地点)で,すぐ先を真東に曲がってしまったようで,等高線に沿って右手に行けども行けども石垣が見えてこない。やっと前方に見えてきたので方向を確かめると,なんと南に向かっている。
南?なんで??
90度以上余計に曲がってしまった模様。
こりゃいかんというので元に戻ると,ずっと手前で追い抜いたはずの何人かと再び合流。30分ぐらいのロスだったが,それよりも1日に2度も,同じパターンで道に迷ってしまったことにがっくり。
Kirkby Stephenの町が近くなったところで,きのうも一緒に歩いたKerry,Ricky,Freddieの2人と1匹が軽々と追い抜いていく。いつ見ても速い。
Kirkby Stephenの町に入って,とぼとぼと歩道を歩いていたら,向こうから来た老婦人に呼びとめられる。道でも聞かれるのだろうか。そんなわけないか。「あなた,毎日歩いてるの?」と聞かれたので「そうですよ♪」と答えると,「あした天気だといいわね」とわざわざ激励のことばをかけてくださる。これはとても嬉しい。
B&Bに着くと,もう臨月かという大きなおなかをしたおかみさんがウエルカムドリンクのお茶を出してくれる。マグカップで何杯も飲めてしまう。ついでに洗濯物を庭に干してくださる。部屋へ入って鏡を見ると,真赤に日焼けしてしまったことに気づく。痛い。しかし薬屋さんはもう4時半に閉まってるし,CoopにはNiveaしかない。Niveaでもないよりはいいだろ!と購入して顔に塗りまくる。ついでに今日も買ってきたスムージーを一気飲み。パッケージにロンドン五輪オフィシャルスムージーとあるのが笑える。オフィシャルスムージー。
薄暗くなってから再度外へ出てぶらぶら歩いていたら,教会の横の路地の奥に小さな中華料理屋を発見。野菜スープと酢鶏をいただいていると,隣の席に1人で座っていた男性のお客が声をかけてくる。どこかで見た人だな…と思っていると,さっきの団体のガイドさんだった。Scottという名前で,ガイドはしていても,晩ごはんは一人で食べたいのでこの店は内緒にしているといって笑う。何度かきみを見かけたよ…というので,きのうPatterdaleからの登りでご一緒しましたよね,というと,さきおとといにもRothwaiteからの登りで抜いていったでしょ,と言われる。そういえば,Greenup edgeのちょっと手前の岩山の,展望が効くところにパーティーが休憩していたな…
何日ぐらいでCtoCを歩くつもりなの,と聞かれたので「12日のつもりです。」と言うと,それはかなり大変だね…と言われる。ツアーのみなさんは?と聞くと14日間ということで,RHBには土曜日に着く予定だとか。おお,やはり12日はきつめの日程なのか…
それにしても,いたるところboggy&muddyで大変ですよね,と聞いてみると,2ヶ月ぐらい前にはもっと雨が続いていて(日本でそのニュースを見て装備を変更したような気が),大きく迂回しなきゃならないとか,それはもう大変だったらしい。それに比べれば,いまはずっとマシだという。明日のルートは,途中からほぼ平らな湿地の,あるかないかの尾根筋をたどっていくので,パーティの後ろを歩かせてもらうことにする。
(区間距離20miles,所要時間8時間)
Coast to Coast Walk (第5日:Patterdale→Shap) [ウォーキング]
一昨日と同様,稜線に向かってゆっくり高度を上げていく。稜線上に小さな湖があったりして,焼額山を思わせる風景。そんな高所でも放牧地を区切る境界の石積みはしっかり作られていて,万里の長城さながらに山全体を網の目のように覆っている。ところどころでその石積みを乗り越えて登り続ける。
Kidsney Pikeへの登りで団体を追い抜くと,2人と1匹を前方に発見。やがて追いついて一緒に歩く。しかし最後の稜線からピークへ入り込む分岐を間違えて道連れにしてしまい,迷惑をかけてしまった。
Kidsney Pikeからの下りは,最初のうちこそゆったりした眺めのよい道だったが,途中から鉄砲下り。また2人においていかれる。
下りで膝を痛めないようストックを使うことに意識を集中させているうちに,いつのまにか地図(を入れたZiploc)を落としてしまった。まあこの先は地図がなくても,なんとなく貯水池に沿って歩けばいいだろう…と思っていたら,後からきたパーティーが拾ってくれた。ありがたや。
Hawswater貯水池の縁を歩くコースなので平坦と思っていたのが甘かった。ちょっとした地形に沿って登り降りの繰り返しで,湖面のすぐ横を歩く機会はほとんどなし。そのうちようやく2人と1匹に追いつき,道のわかりにくいところを確認しながらShapまで3人と1匹で歩く。ようやく名前を聞くと,Kerry,Ricky,黒犬がFreddieだという。彼女が,自分の好きな日本の小説家の話をして,「名前は忘れたけど『What I talk about when I talk about running』という本がよかった」というので,あぁそれは村上春樹ですね,じゃあ村上春樹の小説や紀行文について語り合いましょう…と言いたいところだが,藪柑子の英語力ではムリ。午後のハイペースがたたって,内側のくるぶしが痛くなってくる。
Shapの町に入るとCo-opがある。必要以上に水とかジュースとかレモンとかを買い込んでしまう。レモンは,ミネラルウォーターのボトルに絞って入れるため。500mlのペットボトルにレモン1個分の果汁を加えると,けっこう濃厚なレモン水になる。スムージー1リットルを宿で一気飲み。きょうの宿はShapの町の南のはずれにあるのだが,街道沿いに町を通り抜けるのがものすごく遅く(宿が遠く)感じる。
パブの真上で少々うるさい代わりにずいぶん広い部屋をあてがってもらい,タオルバーのスイッチを発見。これで乾かし放題なのが嬉しい。3日続けて洗濯物をたっぷり乾かせる。
(区間距離15miles,所要時間7時間50分)
Kidsney Pikeへの登りで団体を追い抜くと,2人と1匹を前方に発見。やがて追いついて一緒に歩く。しかし最後の稜線からピークへ入り込む分岐を間違えて道連れにしてしまい,迷惑をかけてしまった。
Kidsney Pikeからの下りは,最初のうちこそゆったりした眺めのよい道だったが,途中から鉄砲下り。また2人においていかれる。
下りで膝を痛めないようストックを使うことに意識を集中させているうちに,いつのまにか地図(を入れたZiploc)を落としてしまった。まあこの先は地図がなくても,なんとなく貯水池に沿って歩けばいいだろう…と思っていたら,後からきたパーティーが拾ってくれた。ありがたや。
Hawswater貯水池の縁を歩くコースなので平坦と思っていたのが甘かった。ちょっとした地形に沿って登り降りの繰り返しで,湖面のすぐ横を歩く機会はほとんどなし。そのうちようやく2人と1匹に追いつき,道のわかりにくいところを確認しながらShapまで3人と1匹で歩く。ようやく名前を聞くと,Kerry,Ricky,黒犬がFreddieだという。彼女が,自分の好きな日本の小説家の話をして,「名前は忘れたけど『What I talk about when I talk about running』という本がよかった」というので,あぁそれは村上春樹ですね,じゃあ村上春樹の小説や紀行文について語り合いましょう…と言いたいところだが,藪柑子の英語力ではムリ。午後のハイペースがたたって,内側のくるぶしが痛くなってくる。
Shapの町に入るとCo-opがある。必要以上に水とかジュースとかレモンとかを買い込んでしまう。レモンは,ミネラルウォーターのボトルに絞って入れるため。500mlのペットボトルにレモン1個分の果汁を加えると,けっこう濃厚なレモン水になる。スムージー1リットルを宿で一気飲み。きょうの宿はShapの町の南のはずれにあるのだが,街道沿いに町を通り抜けるのがものすごく遅く(宿が遠く)感じる。
パブの真上で少々うるさい代わりにずいぶん広い部屋をあてがってもらい,タオルバーのスイッチを発見。これで乾かし放題なのが嬉しい。3日続けて洗濯物をたっぷり乾かせる。
(区間距離15miles,所要時間7時間50分)
Coast to Coast Walk (第4日:Grasmere→Patterdale) [ウォーキング]
昼食のサンドイッチを買おうとGrasmereのco-opに立ち寄ると,「電気系統の故障のため,本日,通常の時刻から営業を開始することができません」と書いてある。ありゃー。とりあえず,隣の雑貨屋で水を買う。きょうは半日行程―もともと標準1日分の行程であるRosthwaite→Grasmere→Patterdaleを2日に分割している―なので,山では行動食だけでつないで,Patterdaleに着いたらビレッジストアで何か買ってお昼ごはんにしよう。
Grasmereの街並みから街道筋をずっと北へ上がったところ,小流れに沿ってPatterdaleへのBridlewayの標識から登りにかかる。途中で沢を2つに分け,二つ並んだかまぼこ型の尾根の,左側のまん中を登る。「great tongue」「little tongue」とはよく名付けたものだ。尾根の直登なので最初の30分ぐらいがすごくきつい。一本調子の登りでなければ,なんとかなるのだけど。
尾根の登りが等高線に沿った巻き道に変わるあたりで後から女性のソロトレッカーが追い付いてきて,あっという間に姿が見えなくなる。すごい速さ。日本の曲がりくねった山道だとあまり感じないことだけど,1キロ先まで見えるようなところで追い抜いたり追い抜かれりすると,その時にはあまりスピードの差がないように見えても,5分もしないうちに姿が見えなくなってしまう。
どこかに帽子を忘れてきたことに気づく。ホテルに置き忘れたか,途中の店で外してそのままにしたか?どこに忘れたかよくわからないのが情けない。
コルを越えるとあとは下りるだけだが,下りはじめてすぐに小さな湖がある。ここまで来ると,Patterdale側から登ってきたハイキング客がいっぱい。下りに入ってからL.L.Beanの装備で固めたカップルを追い抜く。このカップルともその後何回か遭遇する(L.L.Beanのウェアや道具をイギリスで見かける機会はあまり多くない)。
右岸の道と左岸の道を選ぶ地点で左岸を選んだが,木立の中でゆっくりと高度を下げていくのがややうっとうしい。右岸のほうが遠くまでよく見えてよかったような(隣の芝生は常に青い)。
4時間半でパターデールのビレッジショップに到着。話に聞いていたとおり面白い店だ。CtoCトレッカーのための伝言板をはじめ,靴ずれ用の絆創膏とかCtoCのワッペンとか絵ハガキとか,店で調理してくれるホットサンドとか,トレッカーの気分をくすぐってくれる。そのかたわらで暖炉用の薪を山盛りで売っているところは,さすがに山国でもある。
グラスミアで買えなかったお昼として,サンドイッチとジュースを買って店の前のベンチでむさぼり食う。最近やたらと腹が減る。
きょうのお宿はOld water view。別棟のコテージに泊めてくださるのだが,メルヘンのようなかわいらしい部屋。小汚いトレッカーをこんなlovelyな部屋に泊めてしまっていいのだろうか。
時間があるので絵ハガキを何枚か書く。人懐こい猫が遊んでほしそうに近寄ってくる。
晩ごはんを食べながらご亭主と話をしていてびっくりしたのだが,亭主のお嬢さん(5歳)は昨年,2度めのCtoCを達成したという。小さいころから(って今でも十分小さいが)お父さんと一緒に近所の山を歩いていたのだけど,あるときCtoCを歩いてみたいと言い出し,お父さんが「それは無理だから」と言っても聞かず,とうとうお父さんと一緒に歩ききってしまったとか。何日ぐらいかかったのだろう…
しかも立派なことに,来年3度目のCtoCに挑むにあたっては,まだ就学前の子なのにイギリス人得意のスポンサードウオーク,つまり,「もし私がCtoCを歩きおおせたら,村の山岳救助隊だか老人会だったか(忘れた)に寄付してくださる方を募っています」ということで,宿の食堂に奉加帳が置いてある。また10ポンドとか20ポンドとかの金額をかなりの人が記入している。このあたりはさすがなお国柄。
(区間距離8.5miles,所要時間4時間35分)
Grasmereの街並みから街道筋をずっと北へ上がったところ,小流れに沿ってPatterdaleへのBridlewayの標識から登りにかかる。途中で沢を2つに分け,二つ並んだかまぼこ型の尾根の,左側のまん中を登る。「great tongue」「little tongue」とはよく名付けたものだ。尾根の直登なので最初の30分ぐらいがすごくきつい。一本調子の登りでなければ,なんとかなるのだけど。
尾根の登りが等高線に沿った巻き道に変わるあたりで後から女性のソロトレッカーが追い付いてきて,あっという間に姿が見えなくなる。すごい速さ。日本の曲がりくねった山道だとあまり感じないことだけど,1キロ先まで見えるようなところで追い抜いたり追い抜かれりすると,その時にはあまりスピードの差がないように見えても,5分もしないうちに姿が見えなくなってしまう。
どこかに帽子を忘れてきたことに気づく。ホテルに置き忘れたか,途中の店で外してそのままにしたか?どこに忘れたかよくわからないのが情けない。
コルを越えるとあとは下りるだけだが,下りはじめてすぐに小さな湖がある。ここまで来ると,Patterdale側から登ってきたハイキング客がいっぱい。下りに入ってからL.L.Beanの装備で固めたカップルを追い抜く。このカップルともその後何回か遭遇する(L.L.Beanのウェアや道具をイギリスで見かける機会はあまり多くない)。
右岸の道と左岸の道を選ぶ地点で左岸を選んだが,木立の中でゆっくりと高度を下げていくのがややうっとうしい。右岸のほうが遠くまでよく見えてよかったような(隣の芝生は常に青い)。
4時間半でパターデールのビレッジショップに到着。話に聞いていたとおり面白い店だ。CtoCトレッカーのための伝言板をはじめ,靴ずれ用の絆創膏とかCtoCのワッペンとか絵ハガキとか,店で調理してくれるホットサンドとか,トレッカーの気分をくすぐってくれる。そのかたわらで暖炉用の薪を山盛りで売っているところは,さすがに山国でもある。
グラスミアで買えなかったお昼として,サンドイッチとジュースを買って店の前のベンチでむさぼり食う。最近やたらと腹が減る。
きょうのお宿はOld water view。別棟のコテージに泊めてくださるのだが,メルヘンのようなかわいらしい部屋。小汚いトレッカーをこんなlovelyな部屋に泊めてしまっていいのだろうか。
時間があるので絵ハガキを何枚か書く。人懐こい猫が遊んでほしそうに近寄ってくる。
晩ごはんを食べながらご亭主と話をしていてびっくりしたのだが,亭主のお嬢さん(5歳)は昨年,2度めのCtoCを達成したという。小さいころから(って今でも十分小さいが)お父さんと一緒に近所の山を歩いていたのだけど,あるときCtoCを歩いてみたいと言い出し,お父さんが「それは無理だから」と言っても聞かず,とうとうお父さんと一緒に歩ききってしまったとか。何日ぐらいかかったのだろう…
しかも立派なことに,来年3度目のCtoCに挑むにあたっては,まだ就学前の子なのにイギリス人得意のスポンサードウオーク,つまり,「もし私がCtoCを歩きおおせたら,村の山岳救助隊だか老人会だったか(忘れた)に寄付してくださる方を募っています」ということで,宿の食堂に奉加帳が置いてある。また10ポンドとか20ポンドとかの金額をかなりの人が記入している。このあたりはさすがなお国柄。
(区間距離8.5miles,所要時間4時間35分)
Coast to Coast Walk (第3日:Rosthwaite→Grasmere) [ウォーキング]
よく晴れて気持ちのいい朝。
Rosthwaiteの村はずれから流れに沿った道を遡ってStonethwaiteまで南下し,集落の先から右岸側の尾根に向かって徐々に高度を上げていく。ところどころ急登があるが,比較的歩きやすい登りと急登が交互に現れるようになっていて,こういうトレールの作り方はうまい。振り返るとRosthwaiteの村が遠くに小さく見える。
途中,初日に出会った2人と1匹に追いつくが,数分いっしょに歩いただけでまたあっさり引き離されてしまう。おそろしく速い。登りはじめて1時間50分で最初の尾根に到達。
この尾根(Greenup Edge)を越えると雨樋のようなU字谷が北北東方向に伸びているが,この谷を下ると全然違うところに出てしまうので,この谷を左岸側の上流から右岸側のやや下流へ斜めに横切り,右岸側の尾根のコルに出て,そのコルを越えた先の(向こう側の)谷を下りなければならない。これが難しい。(WainwrightはこれをWythburn trapと名付けている)。
コンパスを使って正しい方向を確認するが,左岸側の尾根の上からは,小ピークに隠れて右岸側のコルの位置が見えない。しょうがないので「大体あの辺をめざす」つもりで慎重に下りていくが,U字谷の底は小流れがデタラメに流下している石と泥の世界で,遠くを見ながら歩くなんてとてもできない。深いぬかるみに足をとられるし,頼みの石はすべりやすいしで難渋する。
あーう!岩場で転倒し,腰を大きな岩にぶつける。痛い。
頭ぶつけたり足折ったりしなくてよかった。ポールも折れなかった。しかし痛いものは痛い。手足をドタバタさせながらもがくようにして進む。
今度は幅の広い流れがあって渡れない。うーんと考えていると,向こう岸の大きな岩に腰掛けて2リットルのペットボトル(すごい!)から水を飲んでいる老人(地元のトレッカーと思しき老人)が指をさして「あのあたりで渡れ!」というので半信半疑で流れを遡ると,確かに,水面下に踏み台になりそうな岩がある。慎重に渡ってことなきを得る。
「横切る」意識が強すぎて道がよくわからなかったが,少し下流へ谷底を歩くと,ようやく,小ピークに隠れていた右岸側のコルが見えてくる。出口発見。慎重にそちらを目指す。さっきのトレッカーがそのコルにいたので「なんとかWythburn Trapにはまらずに済みました…」と声をかけると,にやっと笑ってすごい速さでグラスミア側への谷へ下りていった。みんな速すぎ。1時間以上かけて谷を下りていくと,下の方からグラスミアに滞在している家族連れのハイキング客と思しきパーティがいくつも登ってくる。Rosthwaiteまで歩くつもりだろうか。まさか。
昼下がりのグラスミアまで下りていくと,これはもうイギリスを代表する大観光地なので,すごい数の人が歩いていて,ちょっと浦島太郎な気分。ただしこの村は,周辺の山々で岩登りをしたりハイキングをしたりする人たちのベースでもあるので,アウトドアショップが何軒もあって,とても助かる。不足しそうなトレッキングソックスを1足買い足すとともに,宿で登山靴を脱いでから近所やパブへ行くための簡単なサンダルとCtoCの細かいガイドブックを購入。
夜9時をすぎても,空はまだ明るい。
(区間距離8miles,所要時間4時間20分)
(追記)
話を面白くするために大げさに書いていると思われそうだが,CtoCでは実際に最近もこんな事故やこんな事故が起こっているので,くれぐれも地図とコンパスを忘れずに。
Rosthwaiteの村はずれから流れに沿った道を遡ってStonethwaiteまで南下し,集落の先から右岸側の尾根に向かって徐々に高度を上げていく。ところどころ急登があるが,比較的歩きやすい登りと急登が交互に現れるようになっていて,こういうトレールの作り方はうまい。振り返るとRosthwaiteの村が遠くに小さく見える。
途中,初日に出会った2人と1匹に追いつくが,数分いっしょに歩いただけでまたあっさり引き離されてしまう。おそろしく速い。登りはじめて1時間50分で最初の尾根に到達。
この尾根(Greenup Edge)を越えると雨樋のようなU字谷が北北東方向に伸びているが,この谷を下ると全然違うところに出てしまうので,この谷を左岸側の上流から右岸側のやや下流へ斜めに横切り,右岸側の尾根のコルに出て,そのコルを越えた先の(向こう側の)谷を下りなければならない。これが難しい。(WainwrightはこれをWythburn trapと名付けている)。
コンパスを使って正しい方向を確認するが,左岸側の尾根の上からは,小ピークに隠れて右岸側のコルの位置が見えない。しょうがないので「大体あの辺をめざす」つもりで慎重に下りていくが,U字谷の底は小流れがデタラメに流下している石と泥の世界で,遠くを見ながら歩くなんてとてもできない。深いぬかるみに足をとられるし,頼みの石はすべりやすいしで難渋する。
あーう!岩場で転倒し,腰を大きな岩にぶつける。痛い。
頭ぶつけたり足折ったりしなくてよかった。ポールも折れなかった。しかし痛いものは痛い。手足をドタバタさせながらもがくようにして進む。
今度は幅の広い流れがあって渡れない。うーんと考えていると,向こう岸の大きな岩に腰掛けて2リットルのペットボトル(すごい!)から水を飲んでいる老人(地元のトレッカーと思しき老人)が指をさして「あのあたりで渡れ!」というので半信半疑で流れを遡ると,確かに,水面下に踏み台になりそうな岩がある。慎重に渡ってことなきを得る。
「横切る」意識が強すぎて道がよくわからなかったが,少し下流へ谷底を歩くと,ようやく,小ピークに隠れていた右岸側のコルが見えてくる。出口発見。慎重にそちらを目指す。さっきのトレッカーがそのコルにいたので「なんとかWythburn Trapにはまらずに済みました…」と声をかけると,にやっと笑ってすごい速さでグラスミア側への谷へ下りていった。みんな速すぎ。1時間以上かけて谷を下りていくと,下の方からグラスミアに滞在している家族連れのハイキング客と思しきパーティがいくつも登ってくる。Rosthwaiteまで歩くつもりだろうか。まさか。
昼下がりのグラスミアまで下りていくと,これはもうイギリスを代表する大観光地なので,すごい数の人が歩いていて,ちょっと浦島太郎な気分。ただしこの村は,周辺の山々で岩登りをしたりハイキングをしたりする人たちのベースでもあるので,アウトドアショップが何軒もあって,とても助かる。不足しそうなトレッキングソックスを1足買い足すとともに,宿で登山靴を脱いでから近所やパブへ行くための簡単なサンダルとCtoCの細かいガイドブックを購入。
夜9時をすぎても,空はまだ明るい。
(区間距離8miles,所要時間4時間20分)
(追記)
話を面白くするために大げさに書いていると思われそうだが,CtoCでは実際に最近もこんな事故やこんな事故が起こっているので,くれぐれも地図とコンパスを忘れずに。
Coast to Coast Walk (第2日:Ennerdale Bridge→Rosthwaite) [ウォーキング]
夜のあいだ雨が降り続き,朝からまた降りだしそうな天気。洗濯物は結局乾かなかった。
Stork Hotelのご主人にEnnerdale Bridgeまでワゴン車で送っていただき,同宿の5人で歩き始める。たまたまスタート地点に居合わせたEnnerdaleの村人が,「ゆうべからの雨で,Ennerdale Waterの南岸は歩道に冠水している場所があり,歩けない」というので,北岸に沿って歩く。最初は5人だったのが,2人が「ぼくたちゆっくり行く」と言い出し脱落。そこからはずっと3人で歩く。
小雨が降り出す。南岸に負けず劣らず北岸もboggyで,おまけに小径の両側のアザミやシダが道をふさぐように生い茂っているので,ひざから下がどんどん濡れて泥まみれになってくる。レインウェア+スパッツでかろうじて防ぐ。一緒に歩いているPeteとSueのご夫婦は,キャンプの道具を一式背負って歩いているというからすごい。全然休憩をとらず,かなりのピッチで歩いて行く。途中だいぶ差がついたが,こちらも少しピッチを上げてしだいに追いつき,3人で話しながら行く。日本ではトレッキングはやらないの?というので,日本の夏は暑くて,とてもトレッキングはできないよ〜と答えると納得した様子。雨が本降りになってきたので,お2人はレインスーツを着て,自分はポンチョをかぶる。
歩きはじめて3時間5分,雨具に着替える以外一度も休憩なしでBlacksail YHAに到着。ここは本当の山小屋で,雨具を壁のフックにかけてから,やかんを火にかけてセルフサービスの紅茶をいただく。脱落した2人もやってくる。
1時間たっぷり休憩の後,PeteとSueに続いてLoftbeckの登りにかかる。ガレ場と小流れを標高差300メートルぐらい一気に登る。かなりの急傾斜である上,石がぐらぐらして歩きにくい。また踏み跡が明瞭でないところへ折からの雨と霧と強風で進路がよくわからない。ポンチョが風にあおられるので裾をたぐりたいが,ポールを両手で使って登っているときには難しい。ぜいぜい言いながらなんとか2人についていくと,Peteが慎重にコンパスを使いながら,自分で思っていたのと90度違う方向へ進んでいく。あれ?と思いながらついていくと,ちゃんと目印通りのstile(フェンスや石垣を人が越えられるように設けられた木製の段段)が現れる。危ない危ない。一人だったらぐるっと西北へ回り込んで,とんでもない方向―Blackbeck ternの方向に行ってしまうところだった。
Loftbeckの上,フェンスを越えると100メートルぐらいの間隔でケルンが積まれているのだが,濃霧の中ではありがたい。傾斜がゆるくなったので,歩くのが全然楽。さらに東側の谷に入りこみ,北斜面に移ると,嘘のように雨と霧が晴れる。信じられないほど何キロも先まで見える。すごい風景。
Honister峠の石切り場に設けられた野茶屋で二人とお茶。「私たちは途中で休みをとらずに歩く流儀なんだけど,午前中も午後も君は後ろにいたから,君もそういう流儀なの?」と聞かれたので,「いゃ,正直いうと,コンパスがうまく使えなくて道に自信がなかったのでついてきたんです。」と白状。続けて「でも,休まず歩き続けるほうが楽だと思っているので,その点は同じです。お二人はけっこう早かったので,ついていくのが大変でしたけど,すごくフィットしていて経験豊かな感じにお見受けしましたが?」とふってみると,案の定Peteはこのルートは2回目,二人ともマラソンランナーだという。そりゃ速いのも道理だ。
フットパスは東に向かってどんどん高度を下げ,Seatollerの村外れを通っていく。Rosthwaiteの近くまで来てなぜか鎖場。登るための鎖場じゃなく,川のほとりの岩場をへつっていくための鎖なのだが,高度がないので事故の心配はない(足を滑らせても川に落ちるだけ)。もう疲れていて,なんだか面倒な感じ。しかし,やっとたどり着いたRosthwaiteのホテルは,一転してなかなかラブリー。シャワーと洗濯を済ませ,下のパブでカントリースタイルのハンバーガーをビールで流し込んでいると,ものすごい筋肉痛が襲ってくる。階段を這うようにして登り,まだ明るいうちから爆睡。
(区間距離15miles,所要時間7時間)
Stork Hotelのご主人にEnnerdale Bridgeまでワゴン車で送っていただき,同宿の5人で歩き始める。たまたまスタート地点に居合わせたEnnerdaleの村人が,「ゆうべからの雨で,Ennerdale Waterの南岸は歩道に冠水している場所があり,歩けない」というので,北岸に沿って歩く。最初は5人だったのが,2人が「ぼくたちゆっくり行く」と言い出し脱落。そこからはずっと3人で歩く。
小雨が降り出す。南岸に負けず劣らず北岸もboggyで,おまけに小径の両側のアザミやシダが道をふさぐように生い茂っているので,ひざから下がどんどん濡れて泥まみれになってくる。レインウェア+スパッツでかろうじて防ぐ。一緒に歩いているPeteとSueのご夫婦は,キャンプの道具を一式背負って歩いているというからすごい。全然休憩をとらず,かなりのピッチで歩いて行く。途中だいぶ差がついたが,こちらも少しピッチを上げてしだいに追いつき,3人で話しながら行く。日本ではトレッキングはやらないの?というので,日本の夏は暑くて,とてもトレッキングはできないよ〜と答えると納得した様子。雨が本降りになってきたので,お2人はレインスーツを着て,自分はポンチョをかぶる。
歩きはじめて3時間5分,雨具に着替える以外一度も休憩なしでBlacksail YHAに到着。ここは本当の山小屋で,雨具を壁のフックにかけてから,やかんを火にかけてセルフサービスの紅茶をいただく。脱落した2人もやってくる。
1時間たっぷり休憩の後,PeteとSueに続いてLoftbeckの登りにかかる。ガレ場と小流れを標高差300メートルぐらい一気に登る。かなりの急傾斜である上,石がぐらぐらして歩きにくい。また踏み跡が明瞭でないところへ折からの雨と霧と強風で進路がよくわからない。ポンチョが風にあおられるので裾をたぐりたいが,ポールを両手で使って登っているときには難しい。ぜいぜい言いながらなんとか2人についていくと,Peteが慎重にコンパスを使いながら,自分で思っていたのと90度違う方向へ進んでいく。あれ?と思いながらついていくと,ちゃんと目印通りのstile(フェンスや石垣を人が越えられるように設けられた木製の段段)が現れる。危ない危ない。一人だったらぐるっと西北へ回り込んで,とんでもない方向―Blackbeck ternの方向に行ってしまうところだった。
Loftbeckの上,フェンスを越えると100メートルぐらいの間隔でケルンが積まれているのだが,濃霧の中ではありがたい。傾斜がゆるくなったので,歩くのが全然楽。さらに東側の谷に入りこみ,北斜面に移ると,嘘のように雨と霧が晴れる。信じられないほど何キロも先まで見える。すごい風景。
Honister峠の石切り場に設けられた野茶屋で二人とお茶。「私たちは途中で休みをとらずに歩く流儀なんだけど,午前中も午後も君は後ろにいたから,君もそういう流儀なの?」と聞かれたので,「いゃ,正直いうと,コンパスがうまく使えなくて道に自信がなかったのでついてきたんです。」と白状。続けて「でも,休まず歩き続けるほうが楽だと思っているので,その点は同じです。お二人はけっこう早かったので,ついていくのが大変でしたけど,すごくフィットしていて経験豊かな感じにお見受けしましたが?」とふってみると,案の定Peteはこのルートは2回目,二人ともマラソンランナーだという。そりゃ速いのも道理だ。
フットパスは東に向かってどんどん高度を下げ,Seatollerの村外れを通っていく。Rosthwaiteの近くまで来てなぜか鎖場。登るための鎖場じゃなく,川のほとりの岩場をへつっていくための鎖なのだが,高度がないので事故の心配はない(足を滑らせても川に落ちるだけ)。もう疲れていて,なんだか面倒な感じ。しかし,やっとたどり着いたRosthwaiteのホテルは,一転してなかなかラブリー。シャワーと洗濯を済ませ,下のパブでカントリースタイルのハンバーガーをビールで流し込んでいると,ものすごい筋肉痛が襲ってくる。階段を這うようにして登り,まだ明るいうちから爆睡。
(区間距離15miles,所要時間7時間)
Coast to Coast Walk (第1日:St.Bees→Ennerdale Bridge(→Rowrah)) [ウォーキング]
セントビーズの宿はEllerbeck Manorという農場で,とても快適。そこらじゅうを鶏やあひるが歩き回っている。
朝食のトーストにはちみつやジャムを塗って炭水化物を山ほどつめこんだあと,CtoCの出発地点まで車で送っていただく。農場から駅前を経由して海岸まで2.5マイル。きのうは駅から歩いて40分ほどかかったが,きょうはあっという間に着く。さすがに車は速い(当たり前)。
出発点で靴先を海の水に浸し,小石を拾う(←お約束)。歩き出すとすぐ階段。途中で写真を撮るために立ち止まる。その横を若いカップルと黒いレトリーバーが追い抜いていく。このカップルwithレトリーバーとは,結局最終日まで抜きつ抜かれつしながら歩くことになる。
かなり高い海蝕崖を登り,へりに近いところを歩く。転落する危険があまりないことは理屈ではわかるが,ちょっと怖い。随所にぬかるみもあるが,越えられないほどではない。でも泥よけとしてスパッツをつけておいてよかった。ヤナギランが咲いている。志賀高原みたい。
崖の上を4マイルほど歩いてから海岸を離れて内陸へ入り,ルート上最初の村がSandwith。曲がり角にあるベンチでクッキーをかじり,最初の休憩。パブもあるが,まだ立ち寄る気分ではない。農家の石積みの納屋に蔦が這っているのだが,その蔦が早くも紅葉している。
その先Cumbrian coast lineの線路をくぐって湿地帯を越えたところでいきなり道に迷う。その後何度も道に迷うが,最初のロストボール。前のパーティーは東へ進むべきところ北へ進んでいくように見える。それ違うんじゃないの?と思うが,うまくコンパスが使えない。迷っているうちに姿が見えなくなってしまう。しばらく考えたがよくわからないので後を追っていくと,やはり彼らのルートでよいのだった。あとで検討してみると,湿地帯で深い泥を避けているうちに,東へ進んでいるつもりでいつのまにか南へ進んでしまっていたらしい。
Moor Rowの村は日曜日のせいか静まり返っている。村のまん中の駐車場のようなところで,さっきのカップル+レトリーバーがごはんを食べているので挨拶して通り過ぎる。Cleatorの村はずれの橋に腰掛けて,宿で作ってもらったサンドイッチを食べる。その先の農場の横にある細い通路は,人や車やトラクターや家畜が通り過ぎてぐちゃぐちゃになって,かつ油とか化学薬品とか家畜の糞のようなものがたまってすごい色のぬかるみになっている。状態のよさそうなところを選んで通り過ぎようとしたが,ぬちゃっという音とともに,しっかり足首までぬかるみにはまり込む。うげっ。最初の試練。
農場の東の林道はやがて登山道になり,西側からDentの尾根の中心線に沿って登る。たしかにDent(盾)の名どおりの形をした山で,頂上からはさっき歩いてきた岬やそのむこうのアイリッシュ海がよく見える。降り出した雨はさほどの雨ではないが,風が強い。遠くにはセラフィールド原子力発電所の建物も。ここでさっきのカップルに追いつき,写真をとってもらう。
西側がほどよい登りだったのに対して東側はかなり急な下り坂で,家族連れが段ボールを尻に敷いて遊んでいるのに遭遇。草があまり生い茂っていないのでどこへでも行けてしまうイギリスと日本の国柄の違いを痛感。でも段ボールごとアザミやハリエニシダの薮に突っ込まないのだろうか。下りきって隣のフィールドへのフェンスを超えるのに,ものすごく高い脚立のようなstileがある。
谷底のNannycatch まで下りると一転して無風。ガイドブックの類にはとてもきれいな渓谷と書かれているが,風がないと暑いし,なんだか薄気味悪い谷間。再度カップルに追いつかれ,あっという間に抜かれる。
舗装道に出て間もなくEnnerdale Bridgeで本日の行程14マイル終了。しかしこの村の宿がいっぱいなので,さらにRowrahまで2.5マイル歩かなければならない。上り坂をとぼとぼ歩いていると向こうから来た車が止まる。どうしたのかと思っていると,高齢の男性が「君はCoast to Coast Walkの途中なの?」と尋ねる。どうやら,この道はCtoCのルートから外れてるよ,と教えてくれているらしい。「いや,あの,今日の宿がRowrahなんで。」と説明して「ああ,それならKirklandで左へ曲りなさい。」と納得してもらう。
Ennerdale Bridgeの宿がいっぱいというだけの理由で何のゆかりもなく投宿したRowrahのホテルだが,トレッカーには大変親切で,四つ辻に建っている宿のおやじさんは,遠くから歩いてくる自分を見つけるとわざわざ1階のパブの前まで出てきて「君がきょう泊る日本人か? Ennerdale Bridgeから電話してくれれば,迎えに行ったのに!」と声をかけて握手してくれる。晩ごはんも宿の1階のパブでしっかりいただき,なかなか充実した1日。
( 区間距離14+2.5miles,所要時間6時間10分+1時間)
朝食のトーストにはちみつやジャムを塗って炭水化物を山ほどつめこんだあと,CtoCの出発地点まで車で送っていただく。農場から駅前を経由して海岸まで2.5マイル。きのうは駅から歩いて40分ほどかかったが,きょうはあっという間に着く。さすがに車は速い(当たり前)。
出発点で靴先を海の水に浸し,小石を拾う(←お約束)。歩き出すとすぐ階段。途中で写真を撮るために立ち止まる。その横を若いカップルと黒いレトリーバーが追い抜いていく。このカップルwithレトリーバーとは,結局最終日まで抜きつ抜かれつしながら歩くことになる。
かなり高い海蝕崖を登り,へりに近いところを歩く。転落する危険があまりないことは理屈ではわかるが,ちょっと怖い。随所にぬかるみもあるが,越えられないほどではない。でも泥よけとしてスパッツをつけておいてよかった。ヤナギランが咲いている。志賀高原みたい。
崖の上を4マイルほど歩いてから海岸を離れて内陸へ入り,ルート上最初の村がSandwith。曲がり角にあるベンチでクッキーをかじり,最初の休憩。パブもあるが,まだ立ち寄る気分ではない。農家の石積みの納屋に蔦が這っているのだが,その蔦が早くも紅葉している。
その先Cumbrian coast lineの線路をくぐって湿地帯を越えたところでいきなり道に迷う。その後何度も道に迷うが,最初のロストボール。前のパーティーは東へ進むべきところ北へ進んでいくように見える。それ違うんじゃないの?と思うが,うまくコンパスが使えない。迷っているうちに姿が見えなくなってしまう。しばらく考えたがよくわからないので後を追っていくと,やはり彼らのルートでよいのだった。あとで検討してみると,湿地帯で深い泥を避けているうちに,東へ進んでいるつもりでいつのまにか南へ進んでしまっていたらしい。
Moor Rowの村は日曜日のせいか静まり返っている。村のまん中の駐車場のようなところで,さっきのカップル+レトリーバーがごはんを食べているので挨拶して通り過ぎる。Cleatorの村はずれの橋に腰掛けて,宿で作ってもらったサンドイッチを食べる。その先の農場の横にある細い通路は,人や車やトラクターや家畜が通り過ぎてぐちゃぐちゃになって,かつ油とか化学薬品とか家畜の糞のようなものがたまってすごい色のぬかるみになっている。状態のよさそうなところを選んで通り過ぎようとしたが,ぬちゃっという音とともに,しっかり足首までぬかるみにはまり込む。うげっ。最初の試練。
農場の東の林道はやがて登山道になり,西側からDentの尾根の中心線に沿って登る。たしかにDent(盾)の名どおりの形をした山で,頂上からはさっき歩いてきた岬やそのむこうのアイリッシュ海がよく見える。降り出した雨はさほどの雨ではないが,風が強い。遠くにはセラフィールド原子力発電所の建物も。ここでさっきのカップルに追いつき,写真をとってもらう。
西側がほどよい登りだったのに対して東側はかなり急な下り坂で,家族連れが段ボールを尻に敷いて遊んでいるのに遭遇。草があまり生い茂っていないのでどこへでも行けてしまうイギリスと日本の国柄の違いを痛感。でも段ボールごとアザミやハリエニシダの薮に突っ込まないのだろうか。下りきって隣のフィールドへのフェンスを超えるのに,ものすごく高い脚立のようなstileがある。
谷底のNannycatch まで下りると一転して無風。ガイドブックの類にはとてもきれいな渓谷と書かれているが,風がないと暑いし,なんだか薄気味悪い谷間。再度カップルに追いつかれ,あっという間に抜かれる。
舗装道に出て間もなくEnnerdale Bridgeで本日の行程14マイル終了。しかしこの村の宿がいっぱいなので,さらにRowrahまで2.5マイル歩かなければならない。上り坂をとぼとぼ歩いていると向こうから来た車が止まる。どうしたのかと思っていると,高齢の男性が「君はCoast to Coast Walkの途中なの?」と尋ねる。どうやら,この道はCtoCのルートから外れてるよ,と教えてくれているらしい。「いや,あの,今日の宿がRowrahなんで。」と説明して「ああ,それならKirklandで左へ曲りなさい。」と納得してもらう。
Ennerdale Bridgeの宿がいっぱいというだけの理由で何のゆかりもなく投宿したRowrahのホテルだが,トレッカーには大変親切で,四つ辻に建っている宿のおやじさんは,遠くから歩いてくる自分を見つけるとわざわざ1階のパブの前まで出てきて「君がきょう泊る日本人か? Ennerdale Bridgeから電話してくれれば,迎えに行ったのに!」と声をかけて握手してくれる。晩ごはんも宿の1階のパブでしっかりいただき,なかなか充実した1日。
( 区間距離14+2.5miles,所要時間6時間10分+1時間)
Coast to Coast Walk (準備編③) [ウォーキング]
4.道具の準備
準備のうち最も大事なものは地図とコンパス,ガイドブックだが,これについては準備編①②のとおりなので省略。
(余談だが,イギリスのこのあたりの磁気偏角は現在2度弱しかない。従って,コピーをとるだけで済む(磁北線を地図に書き込む作業が不要)なのがありがたい)
それ以外はもともと山歩きに使っていた道具だが,今後歩かれる方のご参考になればと思い一応書いておく。季節や宿泊(B&Bやホテルに泊まるのか,キャンプサイトにテントを張るのか)が違えば道具も全然違ってくるので,あくまでも一例ということで。
選ぶにあたって意識したことは雨と泥。イギリスの夏は毎日のように雨が降り,かつCtoCのコース上の至る所に「boggy」という表現が出てくる。boggyっていうのは,後でいやというほど難渋するが,まぁ泥沼というか湿原というか,志賀高原の田の原湿原みたいな場所の形容なのだが,そんなところを延々と歩かなければいけないので,雨と泥対策を最優先にする。
タイミング悪く,10年以上はき慣れたスカルパ社のトレッキングシューズが寿命を迎えてしまったので,仕方なく,メレル社のカメレオン4という防水のミドルカットシューズを購入。
前の靴からインソールを移し替えて足慣らしをするが,なにしろ本試験前なので,実地に山で試すこともできず,不安な状態で本番に突入する羽目になった。でもあの泥道を目の当たりにすると,ローカットという選択はあり得なかったと思う。
トレッキングパンツは,ストレッチ素材の丈夫なものと軽量のもの(これも10年選手)を1本ずつ。後者は予備のつもりだったが,結果的に,前者はコース上で,片方は宿で毎日着ることになった。泥んこ道を1日歩いた後のパンツは泥と汗でぐちゃぐちゃになっているので,毎日洗濯・毎日干し物になる。その間は軽量のほうをはいているということ。
速乾性のTシャツ2枚。最初は半袖のつもりだったが,今年のイギリスは低温で雨が多いというニュースを聞いて,急きょ長袖に入れ替える。結果的にはこれが大正解。気温の問題よりも,1日中外を歩くので,日焼け防止には長袖のシャツでないとどうにもならない。1日だけなんとなく半袖シャツで歩いたら,顔から腕から真赤になってしまって往生した(後述)。
トレッキング用の厚手のソックス2足。山の衣類のなかで最も乾きが遅いのはソックスなのだけど,何足も持っていくのは重いので,なんとか2足でがんばるつもりでいた。やはり気温が低いせいもあって思うように乾いてくれないので,万一のため途中のグラスミアで1足買い足したが,結局,乾燥室のある宿とかタオルバーの電熱とかテレビの熱(音声を消して朝までつけっぱなしにして,上の縁にソックスを引っかけておくと熱で乾く)とかで乾かしてなんとか2足で間に合い,3足目は新品のまま日本に戻ってきた。
ふだんトレッキングポールは使わないのだけど,なにしろ長丁場だし,道具で疲労が軽減するなら使ってみようということで,ブラックダイアモンド社のウルトラディスタンスを購入。やたらと軽い。強度が通常の半分しかないと取説に書いてあるのだけど,使ってみたら全然問題ない。トレッキングポールを使うなら手袋も必要なので,指先が出るタイプの簡単な手袋を購入。
ゲイター(スパッツ)は,実際に使っている人は3分の1もいなかったが,泥よけとして絶対必要な装備だと思う。スパッツがずれていくのを防ぐためには,できればロングスパッツで,靴底を回して固定できるタイプがいいのではないか。
レインウエア上下。これまた10年使っているモンベル社のストームクルーザー。
これに加えて,イギリスの夏によく降るにわか雨(シャワー)対策として,バックパックを背負ったままかぶれるポンチョを購入。
トレールラン用のタイツ。普段は六甲全山縦走大会の時しか使わないが,使うか使わないか迷いつつ持参。しかし何日か使ってみると,使った日と使わない日では疲労度合がはっきり違うぐらい有効だった。汗で汚れるので毎日洗うのだけど,編み目がつまっているせいかなかなか乾かないのが難点。
・防水仕様の洗える帽子
途中で紛失してえらい目にあう。
・ヘッドランプ
この時期は21時ごろまで明るいので,ヘッドランプを使うことはまずないと思いつつも,念のため持参。
・行動食
六甲全山縦走大会で圧縮カステラボールとレモンを愛用していることは以前に書いたのだけど,海外に12日分のカステラを抱えていくのは現実的でないので,どうしようかな~と思っていたところ,友人から「とらや」のようかん(ミニサイズ)をご推奨いただく。実際に歩きながら食べてみると,水気があるので食べやすくおいしいし,カロリーもあり,包装もコンパクトと3拍子揃っていてすばらしい。さらにフィナンシェやフルーツバーのような焼菓子もいただいて,これも大ヒット。SOYJOY出る幕なし。結局,現地でチョコバーとかビスケットを一度も買わずに済んでしまった。
あとは,近くにパブのない(村から離れたところにある)B&Bに宿泊する際の晩ごはん用にアルファ米の長期保存食を何食分か。
5.宿の手配
閑散期であれば,その日に行けるところまで行ってから宿を探すという方法がベストだと思う。すごい悪天候なら1日滞留することもできるし。しかし8月はCtoCのピークシーズンなので,主な村の宿屋は早くからいっぱいになる。そこで今回は,あえて全部の宿をあらかじめ手配をする。これはつまり,どうしたってその日のうちにその村までたどり着かなければならないということになるのだけど,まあ仕方がない。
ガイドブックや小冊子 "Coast to Coast the original Bed & Breakfast Accommodation Guide"なども参考にしながら,だいたい希望通り取れたのだけど,間の悪いことに,Ennerdale BridgeとBlakey Ridgeの2ヶ所は,それぞれ村から2.5マイルと6マイルも離れた宿しか空いていない。仕方なくそこに予約を入れるが,これでさらに歩く距離が長くなってしまった。特にBlakey Ridgeの宿は,その日ルート上を21マイル歩いた後に宿まで6マイルってそれはさすがに大変すぎるな〜と思いながらそのB&Bのウエブページを見ると,「Blakey Ridgeのパブ《ライオン・イン》から電話をくれれば,車で迎えに行くよ〜」と書かれていたので,ほっとする。
そんなこんなで,大体の準備を済ませて本試験の準備に忙殺される。で,あっという間に本試験。火曜日にボロキレのように疲れ果てて4日後,土曜日のBAでロンドンに出発。機中でもひたすら爆睡。本当に歩けるのか?
準備のうち最も大事なものは地図とコンパス,ガイドブックだが,これについては準備編①②のとおりなので省略。
(余談だが,イギリスのこのあたりの磁気偏角は現在2度弱しかない。従って,コピーをとるだけで済む(磁北線を地図に書き込む作業が不要)なのがありがたい)
それ以外はもともと山歩きに使っていた道具だが,今後歩かれる方のご参考になればと思い一応書いておく。季節や宿泊(B&Bやホテルに泊まるのか,キャンプサイトにテントを張るのか)が違えば道具も全然違ってくるので,あくまでも一例ということで。
選ぶにあたって意識したことは雨と泥。イギリスの夏は毎日のように雨が降り,かつCtoCのコース上の至る所に「boggy」という表現が出てくる。boggyっていうのは,後でいやというほど難渋するが,まぁ泥沼というか湿原というか,志賀高原の田の原湿原みたいな場所の形容なのだが,そんなところを延々と歩かなければいけないので,雨と泥対策を最優先にする。
タイミング悪く,10年以上はき慣れたスカルパ社のトレッキングシューズが寿命を迎えてしまったので,仕方なく,メレル社のカメレオン4という防水のミドルカットシューズを購入。
前の靴からインソールを移し替えて足慣らしをするが,なにしろ本試験前なので,実地に山で試すこともできず,不安な状態で本番に突入する羽目になった。でもあの泥道を目の当たりにすると,ローカットという選択はあり得なかったと思う。
トレッキングパンツは,ストレッチ素材の丈夫なものと軽量のもの(これも10年選手)を1本ずつ。後者は予備のつもりだったが,結果的に,前者はコース上で,片方は宿で毎日着ることになった。泥んこ道を1日歩いた後のパンツは泥と汗でぐちゃぐちゃになっているので,毎日洗濯・毎日干し物になる。その間は軽量のほうをはいているということ。
速乾性のTシャツ2枚。最初は半袖のつもりだったが,今年のイギリスは低温で雨が多いというニュースを聞いて,急きょ長袖に入れ替える。結果的にはこれが大正解。気温の問題よりも,1日中外を歩くので,日焼け防止には長袖のシャツでないとどうにもならない。1日だけなんとなく半袖シャツで歩いたら,顔から腕から真赤になってしまって往生した(後述)。
トレッキング用の厚手のソックス2足。山の衣類のなかで最も乾きが遅いのはソックスなのだけど,何足も持っていくのは重いので,なんとか2足でがんばるつもりでいた。やはり気温が低いせいもあって思うように乾いてくれないので,万一のため途中のグラスミアで1足買い足したが,結局,乾燥室のある宿とかタオルバーの電熱とかテレビの熱(音声を消して朝までつけっぱなしにして,上の縁にソックスを引っかけておくと熱で乾く)とかで乾かしてなんとか2足で間に合い,3足目は新品のまま日本に戻ってきた。
ふだんトレッキングポールは使わないのだけど,なにしろ長丁場だし,道具で疲労が軽減するなら使ってみようということで,ブラックダイアモンド社のウルトラディスタンスを購入。やたらと軽い。強度が通常の半分しかないと取説に書いてあるのだけど,使ってみたら全然問題ない。トレッキングポールを使うなら手袋も必要なので,指先が出るタイプの簡単な手袋を購入。
ゲイター(スパッツ)は,実際に使っている人は3分の1もいなかったが,泥よけとして絶対必要な装備だと思う。スパッツがずれていくのを防ぐためには,できればロングスパッツで,靴底を回して固定できるタイプがいいのではないか。
レインウエア上下。これまた10年使っているモンベル社のストームクルーザー。
これに加えて,イギリスの夏によく降るにわか雨(シャワー)対策として,バックパックを背負ったままかぶれるポンチョを購入。
トレールラン用のタイツ。普段は六甲全山縦走大会の時しか使わないが,使うか使わないか迷いつつ持参。しかし何日か使ってみると,使った日と使わない日では疲労度合がはっきり違うぐらい有効だった。汗で汚れるので毎日洗うのだけど,編み目がつまっているせいかなかなか乾かないのが難点。
・防水仕様の洗える帽子
途中で紛失してえらい目にあう。
・ヘッドランプ
この時期は21時ごろまで明るいので,ヘッドランプを使うことはまずないと思いつつも,念のため持参。
・行動食
六甲全山縦走大会で圧縮カステラボールとレモンを愛用していることは以前に書いたのだけど,海外に12日分のカステラを抱えていくのは現実的でないので,どうしようかな~と思っていたところ,友人から「とらや」のようかん(ミニサイズ)をご推奨いただく。実際に歩きながら食べてみると,水気があるので食べやすくおいしいし,カロリーもあり,包装もコンパクトと3拍子揃っていてすばらしい。さらにフィナンシェやフルーツバーのような焼菓子もいただいて,これも大ヒット。SOYJOY出る幕なし。結局,現地でチョコバーとかビスケットを一度も買わずに済んでしまった。
あとは,近くにパブのない(村から離れたところにある)B&Bに宿泊する際の晩ごはん用にアルファ米の長期保存食を何食分か。
5.宿の手配
閑散期であれば,その日に行けるところまで行ってから宿を探すという方法がベストだと思う。すごい悪天候なら1日滞留することもできるし。しかし8月はCtoCのピークシーズンなので,主な村の宿屋は早くからいっぱいになる。そこで今回は,あえて全部の宿をあらかじめ手配をする。これはつまり,どうしたってその日のうちにその村までたどり着かなければならないということになるのだけど,まあ仕方がない。
ガイドブックや小冊子 "Coast to Coast the original Bed & Breakfast Accommodation Guide"なども参考にしながら,だいたい希望通り取れたのだけど,間の悪いことに,Ennerdale BridgeとBlakey Ridgeの2ヶ所は,それぞれ村から2.5マイルと6マイルも離れた宿しか空いていない。仕方なくそこに予約を入れるが,これでさらに歩く距離が長くなってしまった。特にBlakey Ridgeの宿は,その日ルート上を21マイル歩いた後に宿まで6マイルってそれはさすがに大変すぎるな〜と思いながらそのB&Bのウエブページを見ると,「Blakey Ridgeのパブ《ライオン・イン》から電話をくれれば,車で迎えに行くよ〜」と書かれていたので,ほっとする。
そんなこんなで,大体の準備を済ませて本試験の準備に忙殺される。で,あっという間に本試験。火曜日にボロキレのように疲れ果てて4日後,土曜日のBAでロンドンに出発。機中でもひたすら爆睡。本当に歩けるのか?
Coast to Coast Walk (準備編②) [ウォーキング]
3.プランニング
正月明けにガイドブック(準備編①の2冊)と2種類の地図(後述)を取り寄せてざっと読み,どのぐらい大変そうか見積もる。
前半に山岳地帯(湖水地方)を横切るが,人工登攀などの特別な技術は要らないようなので,結局のところ1日あたり何キロ歩けるかの問題と判断する。日数が多ければお散歩,少なければマラソン大会というわけだ。
で,セントビーズからRHBまで192マイルあるので,2度(2年)に分けて半分ずつ歩くか1度で歩き切ってしまうかのどちらかになるのだけど,土日休みのサラリーマンの休暇パターンつまり「土曜日に日本を出てイギリスに着き,土曜日にイギリスを出て日曜日に日本に帰ってくる」で考えると,現地に正味6日間しか滞在できない。無理してもう1週間休んだとしても13日間しかない。このうち,帰りの便が現地を出る土曜日当日にRHBからロンドンへ戻ってくるのはリスキーなので,前日の金曜日は移動日に充てるとすると,正味12日間。12日で歩き切れるだろうか。
本当のところ1日に何キロ歩けるのかよくわからないのが問題なのだけど,六甲全山縦走大会で56キロ歩いたわけだから,安全率を2分の1として,その半分の28キロなら毎日歩けるのではないかと仮定する(根拠なし)。
で,道中の村ごとの距離を書いた表をつくり、ガイドブックのモデルプランなどを見ながら日程を考えていく。切り詰める余地を探していくと,途中のケルドからリッチモンドまで(22マイル:モデルプラン2日分)を1日で歩けば11日でなんとかなると判断。しかしグラスミアには1泊したいのでここはあえてモデルプラン1日分を2日に分割して,これで合計12日(下に一覧を示す)。予備日や休養日はないし,日本からロンドン経由セントビーズに着いた翌日からすぐ歩きはじめなければならないが,まあしょうがない。
〔Day 0: Tokyo→London→St.Bees〕
Day 1: St. Bees to Ennerdale (14 miles)
Day 2: Ennerdale Bridge to Rosthwaite (15 miles)
Day 3: Rosthwaite to Grasmere (9 miles)
Day 4: Grasmere to Patterdale (8 miles)
Day 5: Patterdale to Shap (15.5 miles)
Day 6: Shap to Kirkby Stephen (21 miles)
Day 7: Kirkby Stephen to Keld (12 miles)
Day 8: Keld to Richmond via Reeth (22 miles)
Day 9: Richmond to Osmotherley (24 miles)
Day 10: Osmotherley to Blakey Ridge (21 miles)
Day 11: Blakey Ridge to Littlebeck (17 miles)
Day 12: Littlebeck to Robin Hood's Bay (12 miles)
〔Day 13: RHB→Scarborough→York→London〕
〔Day 14&15: London→Tokyo〕
8・9・10日目の3日間続けて20マイル以上歩かなければならないのがきついが,8日目は2つあるルートのうち川沿いの平坦なほうを選べば多少楽だし,9日目はほとんど起伏がないので何とかなるだろう。問題は10日目で,途中までジェットコースターのように昇り降りが続くが,これはもう気力でがんばるしかない。
地図は,国土地理院の2万5千分の1地図はガイドブックに収められているので買わなくてもいいが,その範囲外のおおまかな地形をつかむために以下の2種類を取り寄せて読み込む。
Harvey社から出ている地図(2枚組)はポリエチレン製で裏表に印刷されていて,精細度も高く,情報量は多いのだけど,縮尺が4万分の1となんとも中途半端で,距離感がつかみにくい。
footprint社から出ている地図(こちらも2枚組)は,コースに沿って細長い短冊を並べたようにできていて,短冊ごとに北の方向が違っている。常に進行方向が上なので地図をぐるぐる回す必要がないというのが売りなのだろうけど,こういう妙な地図はだいたいダメな地図と相場が決まっている。実際,かなりアバウトな感じにしかルートが描けていない。おまけに等高線がフィート表示になっている。さらに…縮尺がわからないので地図の隅々まで探してみると,小さく「map scale is approximately 1:50000」と描いてある。approximatelyってあんた…orz
結局,footprint社版はお蔵入りにして,Harvey社版を現地に持っていくことにする。しかし,やはり2万5千分の1のほうが細かい部分がよくわかるので,Aurum社版のガイドブックの地図部分のページをA4版両面でカラーコピーして,1枚ずつZiplocのストックバッグに入れて持ちながら歩くことにする(大判のZiplocはA4よりやや小さいので,コピーの余白を断ち落とすとちょうど収まり,ラミネート加工したのと同じようになる)。Harvey社の地図は予備としてバックパックにしまっておく。
大昔,高校1年生のときにオリエンテーリングの講習でコンパスの使い方を習った記憶があるのだが,まったく内容を覚えていないので,ちょっとだけ復習する。これは後で,スムーズにできなくて苦労する羽目になるのだがその時には知る由もない。
正月明けにガイドブック(準備編①の2冊)と2種類の地図(後述)を取り寄せてざっと読み,どのぐらい大変そうか見積もる。
前半に山岳地帯(湖水地方)を横切るが,人工登攀などの特別な技術は要らないようなので,結局のところ1日あたり何キロ歩けるかの問題と判断する。日数が多ければお散歩,少なければマラソン大会というわけだ。
で,セントビーズからRHBまで192マイルあるので,2度(2年)に分けて半分ずつ歩くか1度で歩き切ってしまうかのどちらかになるのだけど,土日休みのサラリーマンの休暇パターンつまり「土曜日に日本を出てイギリスに着き,土曜日にイギリスを出て日曜日に日本に帰ってくる」で考えると,現地に正味6日間しか滞在できない。無理してもう1週間休んだとしても13日間しかない。このうち,帰りの便が現地を出る土曜日当日にRHBからロンドンへ戻ってくるのはリスキーなので,前日の金曜日は移動日に充てるとすると,正味12日間。12日で歩き切れるだろうか。
本当のところ1日に何キロ歩けるのかよくわからないのが問題なのだけど,六甲全山縦走大会で56キロ歩いたわけだから,安全率を2分の1として,その半分の28キロなら毎日歩けるのではないかと仮定する(根拠なし)。
で,道中の村ごとの距離を書いた表をつくり、ガイドブックのモデルプランなどを見ながら日程を考えていく。切り詰める余地を探していくと,途中のケルドからリッチモンドまで(22マイル:モデルプラン2日分)を1日で歩けば11日でなんとかなると判断。しかしグラスミアには1泊したいのでここはあえてモデルプラン1日分を2日に分割して,これで合計12日(下に一覧を示す)。予備日や休養日はないし,日本からロンドン経由セントビーズに着いた翌日からすぐ歩きはじめなければならないが,まあしょうがない。
〔Day 0: Tokyo→London→St.Bees〕
Day 1: St. Bees to Ennerdale (14 miles)
Day 2: Ennerdale Bridge to Rosthwaite (15 miles)
Day 3: Rosthwaite to Grasmere (9 miles)
Day 4: Grasmere to Patterdale (8 miles)
Day 5: Patterdale to Shap (15.5 miles)
Day 6: Shap to Kirkby Stephen (21 miles)
Day 7: Kirkby Stephen to Keld (12 miles)
Day 8: Keld to Richmond via Reeth (22 miles)
Day 9: Richmond to Osmotherley (24 miles)
Day 10: Osmotherley to Blakey Ridge (21 miles)
Day 11: Blakey Ridge to Littlebeck (17 miles)
Day 12: Littlebeck to Robin Hood's Bay (12 miles)
〔Day 13: RHB→Scarborough→York→London〕
〔Day 14&15: London→Tokyo〕
8・9・10日目の3日間続けて20マイル以上歩かなければならないのがきついが,8日目は2つあるルートのうち川沿いの平坦なほうを選べば多少楽だし,9日目はほとんど起伏がないので何とかなるだろう。問題は10日目で,途中までジェットコースターのように昇り降りが続くが,これはもう気力でがんばるしかない。
地図は,国土地理院の2万5千分の1地図はガイドブックに収められているので買わなくてもいいが,その範囲外のおおまかな地形をつかむために以下の2種類を取り寄せて読み込む。
Harvey社から出ている地図(2枚組)はポリエチレン製で裏表に印刷されていて,精細度も高く,情報量は多いのだけど,縮尺が4万分の1となんとも中途半端で,距離感がつかみにくい。
footprint社から出ている地図(こちらも2枚組)は,コースに沿って細長い短冊を並べたようにできていて,短冊ごとに北の方向が違っている。常に進行方向が上なので地図をぐるぐる回す必要がないというのが売りなのだろうけど,こういう妙な地図はだいたいダメな地図と相場が決まっている。実際,かなりアバウトな感じにしかルートが描けていない。おまけに等高線がフィート表示になっている。さらに…縮尺がわからないので地図の隅々まで探してみると,小さく「map scale is approximately 1:50000」と描いてある。approximatelyってあんた…orz
結局,footprint社版はお蔵入りにして,Harvey社版を現地に持っていくことにする。しかし,やはり2万5千分の1のほうが細かい部分がよくわかるので,Aurum社版のガイドブックの地図部分のページをA4版両面でカラーコピーして,1枚ずつZiplocのストックバッグに入れて持ちながら歩くことにする(大判のZiplocはA4よりやや小さいので,コピーの余白を断ち落とすとちょうど収まり,ラミネート加工したのと同じようになる)。Harvey社の地図は予備としてバックパックにしまっておく。
大昔,高校1年生のときにオリエンテーリングの講習でコンパスの使い方を習った記憶があるのだが,まったく内容を覚えていないので,ちょっとだけ復習する。これは後で,スムーズにできなくて苦労する羽目になるのだがその時には知る由もない。
Coast to Coast Walk (準備編①) [ウォーキング]
1.パブリック・フットパスのこと
イギリスについて詳しいわけでもないのにイギリスの何かを説明するのは気が引けるのだけど,Coast to Coast Walk(以下CtoCという。)について説明しようとすると,その前にパブリック・フットパスについて説明しないとワカランチ会長になってしまうので,簡単に(やや怪しい)おさらいを。イギリス好きの方は飛ばしていただいてかまいません。
パブリック・フットパスって要するに,「誰でも通行できる小径」なのだけど,日本と事情が違うのは,通行できることが「法律に基づく権利」であり,しかも日本の入会権なんかと違って通行権が特定メンバーに限定されていない(従って私のような外国人も通行できる)点である。また,フットパスのあの小径部分が公有地になっていると誤解している人が多いが,土地自体は公有地だったり私有地(農家の庭とか牧草地とか麦畑)だったりするのだけど,その上に「通行することのできるひと筋の通路部分がある」のだ。
だから,麦畑のど真ん中をパブリック・フットパスが横切っていたりすると,少なくともその小径の幅の部分は麦が植えられないし,小径から雑草が生えれば(これが見事に生える)繁茂して麦に影響しないようにしないといけないし,機械で刈り取る時にも歩行者を巻き込まないように気をつけながら作業しなければならない。土地全体を覆うように家を建てたりすることもできない。それは,その土地の持ち主にとっては幾分いまいましいことであろうと思われ,事実,フットパス通行者に対する反感を匂わせていると思しき場面(ゲートに骸骨の絵が描かれていたことがあった)も稀にあるのだけど,全体としては当然の権利として世間に認識されている。
従って,くどいようだが,ここで「パブリック」というのは「オフィシャル」(官製の)でも「プライベート」(個人や私企業の)でもない,真に公共の,という意味なのである。これは他の多くの局面でも現れる,極めてイギリス的な思想だと思う。
で,この権利は通行することのみを認めているから,当然,パブリックフットパス上で宴会を開いたり野宿をしてはいけない(するとどうなるのか知らないけど)。また自転車や馬で通ることもできない(パブリックフットパスの一類型であるpublic bridleway(後述)では馬の通行も可能)。弁当をつかうのはどうなのだろう…よくわからないが,長時間でなければいいのではないだろうか。少なくとも私は,弁当をつかって文句を言われたことはない。
また,いわゆるパブリックフットパスは,細分すると3種類からなり,
・フットパス(人と犬しか通れない)
・ブリドルウェイ(馬とか自転車も通れる。ただし人が優先)
・バイウェイ(バイクや四輪車も通れる。ただし人が優先)
の順で大きな通路になる。日常よく見かけるのはフットパスとブリドルウェイである。
(↑左側がpublic footpath,右側がpublic bridlewayの標識)
2.Coast to Coast Walk (CtoC)のこと
このようなパブリックフットパスが国じゅうに網の目のように通っているため,また急峻な山地があまりないため,イギリスでは「ほとんどパブリックフットパスだけを通って遠くまで歩いていく」ことが可能である。従って、特段CtoCと銘打たなくても、適当にフットパスを歩いていけば西海岸から東海岸へ、あるいはその逆へ歩いていくことができるわけだ。
そうしたフットパスの中から、特に景色がよく楽しいルートをつないで(選んで)CtoCという名前をつけ、世の中に広めようとしたのはイギリス政府でも広告代理店でもなく、湖水地方のケンダルという町で教師をしていたアルフレッド・ウェインライトという人物だった。イギリスの他の長距離トレイルには国が認定したものもあるのだけど、純粋に一個人が提唱したトレイルが英国の最も人気ある長距離トレイルとなっていることは特筆されよう。
もっとも,このトレイルが英国でもっとも歩くのにふさわしい地域を横断していることを考えれば,このことは驚くにはあたらないかもしれない。カンブリア州の海岸にあるSt.Beesの町から,北海に面したRobin Hood's Bayまで192マイル(307キロ)のルートのほとんどは,英国のすてきな国立公園―the Lake District,the Yorkshire Dales,the North York Moors―を通っている。またいくつかの部分では,メインルートの他に別ルートも用意されている。
ということで若干補足すると,以前から湖水地方の岩山歩きを愛好していたウェインライトがCtoCというルートを提唱したのは1970年ごろとされる。現在も改版されてLincoln社から出版されている「Coast to Coast Walk」の初版がウェストモーランド・ガゼット社から出版されたのは1973年3月で,その細密な手描きの地図や山の風景はすばらしい。日本でこれに匹敵する手描きの地図といったら,冨永省三さんの「スーパーマップ」ぐらいしか思い浮かばない。
(↑現在Lincoln社から出ている,ウェインライトによるCtoCの案内書。手描きの地図に加えてフォントも手書き風のものが使われるなど,凝ったつくりになっている)
(↑こちらはAurum社から出ているCtoCの案内書。国土地理院の2万5千分の1地図を使ったオーソドックスな作り)
1993年に湖水地方をたずねたとき,ウインダミアの本屋にウェインライトの著作が並んでいるのを見て初めてCoast to Coast Walkの存在を知り,それから20年近く「いつかは…」と思ってきたのだけれど,ことしようやく挑戦することができたという次第。
イギリスについて詳しいわけでもないのにイギリスの何かを説明するのは気が引けるのだけど,Coast to Coast Walk(以下CtoCという。)について説明しようとすると,その前にパブリック・フットパスについて説明しないとワカランチ会長になってしまうので,簡単に(やや怪しい)おさらいを。イギリス好きの方は飛ばしていただいてかまいません。
パブリック・フットパスって要するに,「誰でも通行できる小径」なのだけど,日本と事情が違うのは,通行できることが「法律に基づく権利」であり,しかも日本の入会権なんかと違って通行権が特定メンバーに限定されていない(従って私のような外国人も通行できる)点である。また,フットパスのあの小径部分が公有地になっていると誤解している人が多いが,土地自体は公有地だったり私有地(農家の庭とか牧草地とか麦畑)だったりするのだけど,その上に「通行することのできるひと筋の通路部分がある」のだ。
だから,麦畑のど真ん中をパブリック・フットパスが横切っていたりすると,少なくともその小径の幅の部分は麦が植えられないし,小径から雑草が生えれば(これが見事に生える)繁茂して麦に影響しないようにしないといけないし,機械で刈り取る時にも歩行者を巻き込まないように気をつけながら作業しなければならない。土地全体を覆うように家を建てたりすることもできない。それは,その土地の持ち主にとっては幾分いまいましいことであろうと思われ,事実,フットパス通行者に対する反感を匂わせていると思しき場面(ゲートに骸骨の絵が描かれていたことがあった)も稀にあるのだけど,全体としては当然の権利として世間に認識されている。
従って,くどいようだが,ここで「パブリック」というのは「オフィシャル」(官製の)でも「プライベート」(個人や私企業の)でもない,真に公共の,という意味なのである。これは他の多くの局面でも現れる,極めてイギリス的な思想だと思う。
で,この権利は通行することのみを認めているから,当然,パブリックフットパス上で宴会を開いたり野宿をしてはいけない(するとどうなるのか知らないけど)。また自転車や馬で通ることもできない(パブリックフットパスの一類型であるpublic bridleway(後述)では馬の通行も可能)。弁当をつかうのはどうなのだろう…よくわからないが,長時間でなければいいのではないだろうか。少なくとも私は,弁当をつかって文句を言われたことはない。
また,いわゆるパブリックフットパスは,細分すると3種類からなり,
・フットパス(人と犬しか通れない)
・ブリドルウェイ(馬とか自転車も通れる。ただし人が優先)
・バイウェイ(バイクや四輪車も通れる。ただし人が優先)
の順で大きな通路になる。日常よく見かけるのはフットパスとブリドルウェイである。
(↑左側がpublic footpath,右側がpublic bridlewayの標識)
2.Coast to Coast Walk (CtoC)のこと
このようなパブリックフットパスが国じゅうに網の目のように通っているため,また急峻な山地があまりないため,イギリスでは「ほとんどパブリックフットパスだけを通って遠くまで歩いていく」ことが可能である。従って、特段CtoCと銘打たなくても、適当にフットパスを歩いていけば西海岸から東海岸へ、あるいはその逆へ歩いていくことができるわけだ。
そうしたフットパスの中から、特に景色がよく楽しいルートをつないで(選んで)CtoCという名前をつけ、世の中に広めようとしたのはイギリス政府でも広告代理店でもなく、湖水地方のケンダルという町で教師をしていたアルフレッド・ウェインライトという人物だった。イギリスの他の長距離トレイルには国が認定したものもあるのだけど、純粋に一個人が提唱したトレイルが英国の最も人気ある長距離トレイルとなっていることは特筆されよう。
もっとも,このトレイルが英国でもっとも歩くのにふさわしい地域を横断していることを考えれば,このことは驚くにはあたらないかもしれない。カンブリア州の海岸にあるSt.Beesの町から,北海に面したRobin Hood's Bayまで192マイル(307キロ)のルートのほとんどは,英国のすてきな国立公園―the Lake District,the Yorkshire Dales,the North York Moors―を通っている。またいくつかの部分では,メインルートの他に別ルートも用意されている。
ということで若干補足すると,以前から湖水地方の岩山歩きを愛好していたウェインライトがCtoCというルートを提唱したのは1970年ごろとされる。現在も改版されてLincoln社から出版されている「Coast to Coast Walk」の初版がウェストモーランド・ガゼット社から出版されたのは1973年3月で,その細密な手描きの地図や山の風景はすばらしい。日本でこれに匹敵する手描きの地図といったら,冨永省三さんの「スーパーマップ」ぐらいしか思い浮かばない。
(↑現在Lincoln社から出ている,ウェインライトによるCtoCの案内書。手描きの地図に加えてフォントも手書き風のものが使われるなど,凝ったつくりになっている)
(↑こちらはAurum社から出ているCtoCの案内書。国土地理院の2万5千分の1地図を使ったオーソドックスな作り)
1993年に湖水地方をたずねたとき,ウインダミアの本屋にウェインライトの著作が並んでいるのを見て初めてCoast to Coast Walkの存在を知り,それから20年近く「いつかは…」と思ってきたのだけれど,ことしようやく挑戦することができたという次第。