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第160回深夜句会(9/9) [俳句]

(選句用紙から)

擁壁の上に学校葛の花

 擁壁の上に学校がある。その敷地のどこかから広がってきた葛が、いまでは擁壁全体を我が物顔に占拠している。上にあるのが私邸であれば、あるいは世間を慮って葛を取り除いてくれるのかもしれがいが、この学校にはそんなつもりはないらしい。しかしそのおかげで、葛の花を楽しむことができる。

秋晴れの地球を測る授業かな

 地球を測る授業ってどんなものだったか、すっかり忘れてしまったか、初めから覚えてもいなかったのか、全然わからないのだが、「秋晴れの地球を測る」がすばらしい。窓の外は秋晴れ、その秋晴れの、自分たちが乗っかっている球体のなにかを測ろうという試みが、「秋晴れ」とみごとに響きあっている。

秋の雲カーテンウォール流れけり

 いまでは減ってきたけれども、外壁がいちめんにガラスで覆われたビル。そこに、流れてゆく秋の雲が映っている。むろん夏の雲だって春の雲だってカーテンウォールを流れていくのだけど、同時に映っている秋の空と、見上げている側の爽やかさが違うぶんだけ、詠んでいるときの気分が強くなっている。

スプーンに顔をみてゐる秋思かな

 こういう秋思もあるのですね。「手鏡に」だったらシリアスで俳句にならないけれにど、スプーンなので、食事の途中でひょいと自分の顔を見たということなのだろう。それも、 スプーンに映る顔であるからして、もとより正確な映像ではないわけで、そこから導かれる秋思もいささかの俳諧味があって楽しい。

(句帳から)

仰向けの蝉の骸に雨そそぐ
秋晴や村社の先に見ゆる海

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