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第136回深夜句会(9/12) [俳句]

朝晩ようやく涼しくなってきたのがうれしい。

(選句用紙から)

影ひいて立てる良夜の警備員

季題「良夜」で秋。中秋の名月に限らず、月の明るい夜、というぐらいの意味でも使われる季題だが、その明るい月が、警備員に影を曳かせている、と読むと、月の影がわかるぐらい暗い場所にいるように想像されて楽しい(例えば、広い工場の敷地を巡回しているとか)。実際には、そこまで暗い場所に立つことは稀だろうが。
また、検討のなかで作者の推敲の過程をお聞きすることができたが、多くの可能性を検討し、言葉を選んでいるのですね。


東京の川のしづけさ鱗雲
 
季題「鱗雲」で秋。「鰯雲」などと同義。
東京に生まれ育っていると、東京の川は静かだとかにぎやかだとか感じることもないのだろうけど、例えば黒部川とか球磨川のほとりで育った人が東京へやってきたら、確かに「東京の川って、音もたてずに静かに流れているんだね」と思うだろう。同じものを見ても受け止め方が違うという好例。そこに発見というか、俳句のいとぐちがあるように思うわけで。
で、この句の肝心なところは、そのしんとした感じ(受け止め)が「鱗雲」という秋の季題とよく響きあっているところ。これが例えば「春の雲」だったら中途半端だし、「夏の雲」だと「そうかな?」になってしまうし、「冬の雲」だったら鑑賞しにくい(冬なので水が涸れていて静かだ、と読んでしまう惧れもある)。季題が動きそうで動かない。

(句帳から)

秋晴や吊荷かすかに揺れてゐて
丸窓のよく手入れされ紫菀かな

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RBG 最強の85才(2018年アメリカ、ジェリー・コーエン&ベッツィ・ウェスト監督) [映画]

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ネタバレになるので主要な内容に触れられないのが残念だが、細かいところで一つだけ、「これは…」と考えさせられたこと。

1973年にRBGがはじめて連邦最高裁で口頭弁論を行ったときの実況録音を聞いていると、弁論の途中で、レンクイスト首席判事が、今日的にみれば実にしょうもない、法律家とも思えないような質問…というか茶々を入れるのですね(そもそも、当事者の弁論を遮って裁判官が質問をしてもいいのだろうか)。
綸言汗の如しという言葉があるけれども、責任ある立場の者が軽いつもりで発したことばが、後世の人々にどう受け止められるかというのは、避けようのないことだが大事な問題なのだと思う。まぁ本人は14年も前に亡くなっているわけだから、いまさら評判がどうなろうと関係ないのだろうが。

RBGと自分をくらべるのはおこがましいにも程があるが、自分も、自分の持ち場でできることを(かつ、50年後に正しいと思えることを)静かにやろうと思わせる映画だった。keep calm and carry on.




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津村記久子『とにかくうちに帰ります』(新潮文庫、2015) [本と雑誌]

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オフィスを舞台にしたお仕事小説は山ほどあるけど、みんなで何かを成し遂げるようなスポ根物語ではなく(そういう小説には心底うんざりする)、また「オフィスあるある小話」とも違う(明確に違う)。そうではなく、いわば「オフィスで働いている人の心のありかたや仕事との向き合い方」を掘り下げる小説。

特に、標題作「とにかくうちに帰ります」を読むと、人は何を求めて生きているのか?などと考えはじめてしまう(ここで登場人物がめざす「うち」とは、家庭じゃなく「屋根」だったりするわけだが)。飄々とした風体のピッチャーが、スローカーブで油断させておいて剛速球を投げ込んでくる感じ…って全然説明になってませんね。この作者の他の作品も読んでみることに決めた。






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あけてみようかがくのとびら展(福音館書店「かがくのとも」創刊50周年記念) [皿回し]

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福音館の絵本「かがくのとも」から生まれた初めての科学展、と聞けば、行かないわけにはいかないでしょう。会期中なので、展示内容に立ち入って紹介することは差し控えるが、会場に入ってすぐ左側に掲げられた福岡伸一さんのメッセージを読むだけでも、行ってよかったと思えるわけです。「かがくを愛する子どもたちへ」という副題を掲げたこのメッセージは、人文科学や社会科学にもあてはまる、すばらしいものだと思う。

決して広いとはいえない会場にたくさんの来場者があって、みんなが場所や時間を譲り合って楽しむ場面もあったけれど、それでも、虚心坦懐に「知る」ということの価値を肯定するからこそ、(少なくとも自分には)満足感があったのだと思う。「そうか、そういうことだったのか」という、こどもの頃に当り前にあった気持ちを持ち続けなければいけないと自戒。この気持ちと健全な懐疑心とが相まって、はじめて本当に「知る」ことが可能なのだろ思う。

会場は学校の校舎のような不思議な場所。銀座線末広町駅か千代田線湯島駅が便利。

(福音館書店主催、アーツ千代田3331で9月8日まで開催中)

  
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