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第130回深夜句会(3/14) [俳句]

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カフエ「マメヒコ」には大きな連翹が活けられている。カフェの照明の色とよく響きあっていて、とても好ましい。

深夜句会はきょうでめでたく130回。

(選句用紙から)

先生が言訳をしてあたたかし

季題「暖か」で春。先生が言い間違いだか(板書の)書き間違いをして、それを生徒に指摘されて
むにゃむにゃ言っている。そのむにゃむにゃを好意的に受け止めている生徒。先生との信頼感あるいは適度な距離感のようなものがあって、それが醸成された学年末という感じがする。
このように句評したら、「いや、むしろ年度初めの授業でで、こんな先生がいた!という発見の句のように読める」という指摘があった。なるほど。そう言われればそんな気もする。

春の夜の酒の肴のさつまいも

これは詠めそうで詠めない句。「春の夜の酒の肴の」と煽っておいて、さあ何が来るかと待ち受けていると、さつまいもが来るという趣向。これが「里芋」だと当たり前すぎるし、「じゃがいも」でも当たり前かつビールの肴でしょ、ということになるのだけど、大学芋みたいな甘いものをつつきながら、一人で酒を飲んでいる風景が、なんとも自足した感じで心地よい。

(句帳から)

連翹にわづかに兆す緑かな
連翹に幹といふものなく黄色
永き日の音楽室の肖像画


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エネルギー保存の法則? [皿回し]

きょう(2019.3.8)の日経1面。

「リース取引 資産計上へ」
機械や設備を購入せずに借りて利用する「リース取引」に関する会計基準が変わる。今までは企業の財務状態を表す貸借対照表(バランスシート)に記載する必要はなかったが、ルールが変わればリースの金額を明記する必要が生じる。上場企業全体を表す「日本株式会社」の資産は17兆円増える計算。リース離れの懸念に加え、資産効率を表す指標は数値上悪化するが、国際標準並みに財務の透明性を高める。

下線の部分、皿回し的におかしくないですかね。
オペレーティングリースを資産計上すれば、計上した企業のバランスシートには資産とリース債務が両建てで計上されるので、確かに「資産(と負債)が増える」わけだけど、その資産は、それまでリース会社の貸借対照表に計上されていたわけでしょ。リース先で計上された分だけ、リース会社のバランスシートから除かれるわけだから、「日本株式会社」全体の資産は増えも減りもしないのではないの?
この表現が成り立つとすれば、そのリース資産がことごとく上場会社「以外」に帰属していた場合だけだが、そんなわけないと思うのだけど。誰か教えてジェネラル!

 

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第129回深夜句会(2/14) [俳句]

いつもお世話になっているカフエ「マメヒコ」のメニューから「マグ茶」が消え、出てきたお茶を楽しむことができなくなってしまったが、それぞれのお茶がおいしいことに変わりはないので、引き続き紅茶をお願いする…といいつつ、きょうはおよそ10年ぶりの「牛乳珈琲」。

(選句用紙から)

粉雪の虫のごとくに曲がりけり

季題「粉雪」で冬。粉雪の動きについての句で、強風でないときの粉雪の動きにちょっとしたゆらぎがある様子をうまくとらえている。強風だったら一方的に流れていくだけなのだけど、無風に近いときには、まっすぐ落ちるかに見えつつも、地表近くのちょっとした風を受けて、あたかも羽虫か何かのように不規則に動くのですね。
ここで「曲がる」ということばが、右に曲がるとか左に曲がるとか、はっきりとした意図をもって行き先を変えているように読めるという意見もあって、それはそうなのだけど、あっちへ曲がりこっちへ曲がりする様子としては、これでもいいのではないかと。


受験生下宿のチラシ受け取れる

季題「受験(試験)」で春。入学試験を終えた受験生(実景では試験に臨む受験生だったそうだが)に不動産業者が近隣のアパートやマンションのチラシを配っている(昔風の賄い付きの下宿屋ではないのか、と問われそうだが、試験会場でそこまでやるのは不動産屋でしょう)。で、この句の面白いところは、それを受け取る受験生の、わずか数秒の心の動きが自分でも追体験できるところ。つまり、試験に落ちればチラシなんか無用の長物どころかいまいましい代物なのだけど、めでたく合格していれば一刻も早く物件を探しに行かなければならないわけで、受け取るか否かを考えている数秒間が必ずあるはず。

如月のチョークの白のすべりたる

「すべりたる」の句意はどちらにあるのか。つまり、きょうは黒板に文字がかみあわず、しばしば滑った(ので板書がしにくかった)ということだったのか、寒さでかじかんだ手からチョークが滑り落ちたか、どちらとも読めそうだ。私は後者で読み、二月のあわただしさとか焦燥感みたいなものを描いているのではと考えたが、合評で出た意見は、それなら「白のチョーク」とするはずだ、というもの。チョークの白、というからには、白に焦点をあてている意図があるはずと言われればそんな気もするが、それだと、二月とのつながりはなくてもよいことになってしまうわけで、悩ましい。

(句帳から)

強東風や工事現場に水撒いて
同じ向き同じ傾き福寿草

  
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深緑野分『戦場のコックたち』(東京創元社、2015) [本と雑誌]

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文庫になるまで待つとか言ってないで、もっと早く読むべきだった。
一応謎解きの形式になっているのだけど、そういうジャンル分けが無意味に感じられる力作。これが長編デビューとは、にわかには信じられないほど。
2018年の個人的第2位が、最後の最後にやってきた(ちなみに1位は吉田裕『日本軍兵士』(中公新書、2017))。

エピローグを読みはじめて、最初「なんでこんな余計なものを?」と感じたが、そうではなかったのですね。このエピローグこそが、この本のコアなのでしょう。

 


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番町句会(2/8) [俳句]

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きょうのお題は「春時雨」。
「時雨」とも「秋時雨」とも違う「春時雨」をどう詠むか考えどころ。

(選句用紙から)

たてもの園宿根草園日脚伸ぶ

季題「日脚伸ぶ」で冬(晩冬)。
大きな公園のような場所で、その一角に「たてもの園」(古民家などを移設したのであろうか)があり、また別の一角には「宿根草園」がある。それに出入りしながら移り歩いていると、ひと月前ならもう暗くなっているような時間になっても、まだ明るくて、もう少し園内を歩くことができる。
この句の眼目…というか狙いはちょっと普通でなくて、「たてもの園」と「宿根草園」という、MECEでないものをわざとぶつけてくるところにある。本当は「たてもの園」の横に「建物附属設備園」とか「構築物園」とか…は冗談、まあ「のりもの園」とか、建物と並列できる程度「〇〇園」もあるのだと思うけど、全然そうでないものを並べて、その気持ち悪さを楽しむ(そういう場所が実際にありそうなだけに)という一句。同様に、「一年草園」「宿根草園」とかなら、まあどこかの植物園なんでしょう、で終わりなのだけど、わざと外すわけですね。

スカールの戻つてきたる春時雨

季題「春時雨」。スカールは「シングルスカル」とか「ダブルスカル」などと呼ばれる競技用のボートで、乾舷が小さく、静かな水面でないと漕げないから、湖とか川、たとえば瀬田川なんかが想像される。見え隠れするほど濃密に降り注ぐわけではないのだけど、降っては止んでの中を、雨に濡れたスカール(漕ぎ手も濡れている)が艇庫に戻ってきた。

春の風邪薬がはりの一二冊

「風邪」は冬の季題だが、ここでは「春の風邪」なので、その気分を描いた句になっているかを考えると、薬を飲むでもなく、文庫本を一二冊携えてソファーで楽にしていよう、という程度の風邪なのだろう。「薬がはりの一二冊」がいいですね。どんな本なのか。古典なんかが連想されるのだけど。


(句帳から)

駅前に本屋と飲み屋春時雨
焼菓子のにほひ流れて日脚伸ぶ
あらかじめ間引き運転春の雪

  
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