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第125回深夜句会(10/25) [俳句]

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急に寒くなる。高層ビルの上に出ている月がきりっとしていて、既に冬の月の色になっている。

(選句用紙から)

紫の絵の具めきたる式部の実

季題「紫式部の実」で秋。実むらさきとも。
紫式部の実の色は、その名のとおり紫色なのだけど、その紫色が、どういえばいいのか、およそ天然の産物とは思われないような色をしている(従って、コーティングしたお菓子のように見える)ので、「絵の具めきたる」は共感できるところ。おそらく類想・類句がいろいろあるのだろうが、不勉強で存じあげないので、迷わずとらせていただく。

湖北より湖南に流れ鰯雲

どこの湖かということは書かれていないが、日本で湖北とか湖南とかいえるぐらい大きな湖といったら、まず琵琶湖でしょう。実際に「湖北地方」という言い方をするし。で、秋になってその大きな湖の上を、北から南へ鰯雲が渡っていくのですね。空の大きさと、その下にある湖の大きさが活きている。

満月の磧に来れば一人ゐる

季題「月」で秋。月を愛でるためか、それ以外の用事があったのか、満月の夜に河原に来てみると、そこには先客が一人いた。それが誰だとか何をやっているとかは語られないのだけど、真っ暗な夜の河原に、満月の光を浴びてたたずんでいる先客の姿がおそろしくも鮮やか。一方、「来れば」を「来たので」の意味にとると、一人ゐるのは自分ということになるのだけど、「来たので」「一人ゐる」という理路がよくわからないから、やはり「来てみると」と解するほうが自然であるように思われる。

(句帳から)

秋晴や昼からあいてゐる酒場
鉄橋を気動車徐行秋惜む
よもすがら秋のをはりの雨の音

 
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