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夏潮新年会(2/19) [俳句]

ことしの選句用紙は79枚。
全部回すのも大変だけど、しかし今日は、すっと乗れる句が多くて楽しい句会だった。

(選句用紙から)

浅春の水の面のちぢみ皺

季題「春浅し」で早春。海なのか川なのか湖なのか池なのかは詠われていないのだけど、水面のわずかなさざ波について「ちぢみ皺」と叙したところが眼目。この句は違うと思うのだけれど、よく晴れた日に飛行機から瀬戸内海の海面なんかを見ていると、本当にこの感じはよくわかる。じゃあなんで「浅春」なの、という疑問が当然に浮かぶところで、むしろ早春は春一番とか東風が吹きまくったりして、波高しな日も多いと思うのだけど、日によっては、それまでの冬と違った穏やかな日があって、そんな日にはようやく春が来たと思うこともまた事実で、そんな日に詠まれた句なのではないかと。

温む濠船河原町遠からず

これはちょっと事情を知らないと選べないのだけど、『夏潮』誌の役割のひとつが虚子研究であるとすれば、かつて虚子が『ホトトギス』発行所をおいていた(丸ビルに移る前の発行所)は市谷船河原町つまりお濠の北側にあって、この句会場のちょうどトイ面ですね、というのがあって、堀端の風景が昔と変わらないのであれば、虚子もこんな風景の中を行き来していたのだろうか、ということまで思い浮かぶところ。ちなみに市谷船河原町はいまでも住居表示になっていないので、そのままの地名が使われている。

戦没馬慰霊塔みかんを一つ

季題「みかん」で冬。靖国神社にそういう慰霊塔があるのでしょう。中七と下五がわたっているが、それほど妙な感じはしない。みかん「が」一つじゃなくて、みかん「を」一つ、というところに、理不尽な死をとげた馬匹への愛情が感じられて、しかし過度にベタベタしていなくて、よいですね。

(句帳から)

浅き春飛行機雲のとぎれとぎれ
黒髪に茶色の髪に春日さす
濠端のわずかな斜面下萌ゆる
花ミモザから灯台へつづく道
雨樋のあのあたりから囀れる