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第91回深夜句会(11/12) [俳句]

(選句用紙から)

フラダンス奉ぜられたる酉の市

季題「酉の市」で冬(11月)。酉の市を訪れてみると、奉納と称して境内で奏されて(演ぜられて)いたのは、お神楽でも盆踊りでもなく、フラダンスだった。
花園神社とか大鳥神社とか、まあ露店が連なってたいへんな盛況になるわけなのだけど、フラダンスが奉納されるような神社というと、地元の小さな「なんとか鳥神社」とか「なんとか鷲神社」とかそういう村社のようなところなのだろうか。で、フラダンスといったって、場面からして「フラガールズ」のような組織だったものではなく、地元の高齢のご婦人がたが趣味のサークル活動で練習しているようなフラダンスであると思われ、その脱力具合と「酉の市」とが奇妙な距離感(地元感とでもいうのか)を醸し出している。

冬に入るよき品物をただ眺め

季題「冬に入る(立冬)」で冬。
「よき品物」が何であるかは語られていないが、「ただ眺め」られている「よき品物」といえば、家の棚に置いてあるのではなく、銀座あたりのショーウィンドーに麗々しく飾られている宝飾品とか美術品のようなものだろうか。この作者はそれを、ただ眺めているという。もともと大した興味もないのかもしれないし、そうした「よき品物」をむしろうとましく感じている。その少し倦み疲れた感じが、立冬のころの町の風景をよく描いている。これが「立春や」「夏に入る」「秋立つ日」だったら、全然面白くないわけで。


(句帳から)

寒林の奥に家あり牛舎あり
陸橋をまたぐ陸橋夕時雨