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ベア・ウースマ『北極探検隊の謎を追って』(ヘレンハルメ美穂訳、青土社、2021) [本と雑誌]

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久しぶりの一気読み。

この探検隊自体をまったく知らなかったのだけど、ナンセンと同時代にこんな挑戦をした人たちがいたのですね。それからおよそ100年遅れて、著者はふとしたきっかけから、とりつかれたように「この探検隊に何が起こったのか」を追究するのだけど、大筋を保持しながらdetailにも入り込んでいく感じがちょっと歴史人口学的というか、わが師匠の流儀というか。半ば冗談のように、この追究のために、わざわざ医学の道に入ったと読める記述があり、それができてしまう著者に驚くとともに、そこまで駆り立てるほどの謎って何なのだろうと率直に感銘を受ける。

著者が到達した結論は、あっと驚くようなものではないので、この探検隊のいきさつが、かの国ではたいへん有名な史実だそうなのだから、そういう説がすでに唱えられていてもおかしくないように思うのだけど、どうも一度も唱えられていないようで、ちょっと不思議ではある。

また、原文がそうなのか、訳者の腕前なのかはわからないのだが、ノンフィクションでありながら高度に詩的というか内面に立ち入ったというか、単なる事故調査委員会報告書のようなもの(いや、あれはあれで非常に読みごたえのあるものだけど)になっていないことも、好き嫌いはあるだろうが本書の魅力の一つになっている。
 
 


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