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第156回深夜句会(5/6) [俳句]

(選句用紙から)

行春やひとり抜けたる社員寮

 季題「行春」で晩春。どのような社員寮なのか定かではないが、「ひとり」とあるので独身寮だろうか。古典的な独身寮なら、寮母さんがいて食事も時間が決まっていたりするので、共同生活の趣が強くなるのだけど、転勤なのか退職なのかそれとも独身寮の年齢制限なのか、そこから「ひとり」抜けるとなって、その抜けた人の新たな季節と新たな生活に、残された者(たち)が思いをはせている。

かるの子のくいくいすすむ水面かな

 季題「軽鳧(かる)の子」で夏。「くいくい」の音の響きが心地よい。

しやぼん玉地面を這いて浮き上がる

 季題「石鹸玉」で春。地面に向かって降りていったシャボン玉だが、そのうちのあるものは、地面に接することなくそのまま低空飛行をつづけ、さらに浮き上がって遠ざかっていく。そんなふうに風が吹いているからなのだろうけど、そう言われれば確かにそういうことがあって、その風も、真冬の風や秋の風と違った、春の風なのだろう。

連休の谷間の初夏の丸の内

 連休の谷間であって、かつ初夏であるという。一帯の緑も色が濃くなってきて、これまでとはだいぶ趣が変わってくる。

根に岩を抱きて夏木立ちにけり

 「岩をかかえこむように生えている木」自体は類句がありそうだけど、この句の眼目は、「一年じゅう岩をかかえこむように生えているその木が、夏になったいま、豊かに繁って風に揺れている」ことが、同じ木の真冬の姿、すなわち、岩と一体化したかのように静止している姿(それはそれで、また別の詩情を感じさせる)と正反対だから。

(句帳から)



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