SSブログ

アンドレアス・レダー『ドイツ統一』(板橋拓己訳、岩波新書、2020) [本と雑誌]

20210204.jpg

書かれていることは事実だろうと思うし、流れを大づかみにするためにはとてもよい本だと思う。また、旧西独側からこのように見えることも理解できる。

不満というわけではないが、引っかかるのは、「旧東独の経済的な行き詰まりはきわめて深刻で、経済的崩壊は偶発的なものではない」としておきながら、肝心な部分を、コールやゴルバチョフといった「英雄たち」の歴史として書いている点。歴史にifはないが、出発点の状況をふまえれば、コールやゴルバチョフといった役者が現れなくても、ほぼ同じように東独は崩壊したことになるのではないだろうか。それとも、英雄たちのおかげで、混乱が最小限で済んだということなのだろうか。

それはともかく、私が読みたいのは、英雄たちの歴史でもなく、旧東独の人びとの「お気持ち」でもなく、旧東独の人たちの「ライフ」がどう変わったかという点だ。平均寿命、出生率や死亡率、世帯規模、初婚年齢、失業率、毎日の睡眠時間…といった客観的に計測可能な指標が、1990年以前と以降でどう変わったのか、変わらなかったのか、それを知りたい。これは、この本が足りないというより、「こういう歴史が読んでみたい」という当方の勝手な希望によるものだが。

笑えるのは、「「異なる考えをもつ者は敵である」というのが国家保安省のモットーであり、」というくだり(17頁)。こういう発想って、旧東独に限らない話というか、敵か味方かでしか考えられない(ので、まともな議論ができない)人って至る所にいますね。

あと、文意が不明な箇所が1点。「もっぱら債務をストップするだけでも、一九九〇年には生活水準の二五〜三〇パーセントの低下が必須であり」(15頁)って、債権や債務って「ストップ」できるものではないでしょう。債務の弁済ならストップできるけど。ここはどういう意味なのだろう。教えてジェネラル!

  

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント