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森本俊司「ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年」(2019、文春文庫) [本と雑誌]

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ブルーナが「うさこちゃん」を描きはじめる以前、父親の会社でブックデザインを手掛けていたことはよく知られている(そうでもない?)が、さらにそれ以前の、生い立ちや経歴が紹介され(ドラ・ド・ヨングの「あらしの前」「あらしのあと」を連想する読者も多いだろう)、彼が作品の中で周到に暴力を遠ざけている理由の一端を知ることができる。また、父親とのあいだでさまざまな確執があったことを知る(他方で、彼とこどもたちとの関係は、とても良好だったようだが)。

また、絵本づくり以外のさまざまな取り組みについても紹介されているが、特に惹かれたのは、福祉やこどもの健康のためのポスターなどのデザインにも進んで取り組んできたことが紹介されている中、島根大学医学部付属病院小児センターの壁やドアにブルーナの絵が描かれている(本の中では、ごく小さな写真しか見ることができないが)ことで、やむをえず入院することになったこどもにとって、これがどれほど心の支えになるかと考えると本当にありがたい。思いつくのは簡単でも実行に移すことがむずかしい中、実現に向けて努力された多くの方がおられたことと思われ、つくづくありがたいことだと感じる。

なお本書は、その少なからぬ部分が著者による取材メモからなるため、どうしても著者が前景化してしまうのだけど、読者の多くは、著者ではなくディック・ブルーナのファンであろうから、そこはもう少し書き方の工夫があってもよかったように思う。



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