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第74回深夜句会(6/12) [俳句]

(選句用紙から)

働かぬをのこ溜りて夏日陰

季題「夏日陰」で夏(夏の日影をさす「片蔭」という季題もある)。
先日読んだポール・セローの『ダークスター・サファリ』の一節に、マンゴーの木蔭で何をするでもなくたむろする男たちを描いた箇所がある。この一節はそこから、自分たちに木蔭をもたらすマンゴーの木を植えようともしない人々へのいらだちにつながっていくのだが、それはともかく、仕事がないのか、あるいは仕事をさぼっているのか、働いている様子のない男たちが建物の影だか樹木の影にたむろしている。北国にはない風景として、南国を旅すると、たむろしている人々から自分に向けられた視線を強く感じる瞬間があるが、そうしたことも連想される。一句の眼目は「溜りて」。「たむろし」だとありふれているが、風に吹き寄せられた綿ぼこりのように「たまる」と叙したところが面白い。最近見たライブハウスの看板に「この場所にたまらないでください」というのがあって、人について「たむろする、うろうろする」の意味で「たまる」という言い方があるのかと驚いたが、そういう俗な言い方でなく、詩の表現としての「溜まる」なんだろうと思う。最初は1人2人だったのが、しだいに増えていくというニュアンスがあるのかもしれない。


炎天や土でできたる滑走路

季題「炎天」で夏。
夏の強い日差しが降り注ぐ飛行場(「空港」というより「飛行場」であろう)、その飛行場の滑走路は舗装されていない、土の色のままである。自分が飛行機で降りていく(上空から見ている)のか、飛行場にいて滑走路を見ているのか定かでないところが残念だが、そんな場所に離着陸する飛行機は、ブッシュプレーンと呼ばれる小さな飛行機や、軍用機であろうか。飛行場自体が、森を切り開いて大急ぎで造成された場所なのかもしれない。何色とは書かれていないが、土の色を想起させるところがいい。南米の赤茶けた土とか。
互選で満票。満票なんだが、感想戦で、この土で「できたる」が気になるという意見。確かに、「コンクリートでできた橋」なら、目の前に橋という造形物があるからいいけど、「土でできた滑走路」は、土を別のものに作りあげたわけではないので、ちょっと引っかかる。どうするか。「土のままなる」か「土あらはなる」だろうか。

(句帳から)

梅雨寒やいつも閉店セール中
「山」「川」の夙に少なく五月場所
雲の底から夕焼の始まれる

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