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池袋句会(3/7) [俳句]

きょうのお題(兼題)は「烏貝(からすがい)」と「菊の苗」。

烏貝はもともとは淡水の沼地に棲む黒い貝(私は見たことがない)だが、近年、海水に棲むムラサキイガイ(ムール貝)をさして詠まれることもあるという。現在はその過渡期にあるとの説明が主宰からあり、なるほど。
おそらく、一定の年齢以下の者は、後者しか見たことがないはずなので、いずれは「烏貝=ムール貝」になってしまうのだろう。こういう事例って、他の季題でもなにか記憶が…たしか、槿(むくげ)を朝顔と呼んでいた時代があったと読んだ記憶が(自信なし)。

(選句用紙から)

牛久沼に烏貝棲む河童棲む

固有名詞を俳句に使うと,その固有名詞がもともと持っていたイメージや情緒に安易にもたれかかることになってしまう(「○○といえば××」式)ので,よくよく注意しなければならないと思っているのだけど,淡水の沼地に棲む烏貝を例示するなら,牛久沼は,そのおどろおどろしい名前からしても最適で,「沼」のもつ土俗性のようなものをよく表現し得ているのではないか。烏貝の棲む沼底の泥,そこにはまた河童も棲んでいる…

という句評をしたら,作者から「この句には元ネタがあって,牛久沼のほとりに住んでいた小川芋銭が,烏貝から河童が生まれたという絵を描いているので,それをふまえたもの」ということであった。それをフォローした師匠が,「虚子には『牛久沼を訪ふの記』という文章もあり,また小川芋銭の娘が西山泊雲の息子と結婚したりで,牛久沼はホトトギスゆかりの地だった。この俳句も当然,そうした事情を踏まえて読まれたものと解すべき。」とのこと。
おお,そうだったのか…

声交し足場解体暖かし

春の温かな日差しの中で,建築だか修繕だかの終わった大きな建物の足場が解体されている。安全のため,作業者どうしが声をかけて確認しあってから,足場を支えるパイプや足場自体の板をはずして下へ送ったり落としたりしている。声→声→物音の繰り返しと,日差しの光と,空気の温かさといった実感覚を刺激してくれる句であり,交わされるその声も,真冬のころに比べれば弾んだものとなっているであろう。

(句帳から)

春暁の夢のつじつま合はぬまま
病棟の渡り廊下に雛飾る
はこべらの花弁と蕊と同じ白
烏貝にほふ泥水またにほふ
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