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岸本尚毅『生き方としての俳句 句集観賞入門』を読む(三省堂,2011) [俳句]

ふだん句評をするときには,俳句を一句で鑑賞する。また,ある俳人についていくつかの俳句を並べて鑑賞したり,ある季題についていろいろな俳人の句を並べて鑑賞することもある。
それに対してここでは,一つのまとまりとしての『句集』を観賞するという切り口(作者はこれを「個展」になぞらえている)にまず感心する。なるほど。

また,句集とはどういうもので,どうやって作り上げていくかという説明があるのだけど,読んで初めて,ああそういうことだったのかと腑に落ちることも多く,これをもう一年早く読んでいれば…いやいや何でもありません。

生き方としての俳句.jpg

虚子門の俳人の句集が選ばれているので,三省堂での前作『高浜虚子 俳句の力』(三省堂,2010)を読んでから本書を読んだほうが理解しやすいと思う。それは,選と創作という関係において,ボールを受け止める側の虚子について書かれた前作に対し,ボールを投げる側の俳人がどんな存念で俳句にとりくみ,句集を編んでいったかという過程がわかり,合わせ鏡のように理解することができるからだ。

とはいえ,その部分の知識がなくても丁寧な解説と句評で十分勉強になる。特に,ある句について他の俳人の句を例示して比較をしてくれる箇所は,表現の巧拙だけでなくその二人の構え方や存念のありかたにまで話が及び,非常に深い知識のわずかな部分をぜいたくに使うことで本書が編まれていることを感じさせる。

また,自分自身の俳句観と重ねて考えさせられる部分も多く,いちいち納得するところの多い一冊だった。
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