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六甲全山縦走大会(11/23) [ウォーキング]

以前「ひょんなことから」に書いた,須磨から宝塚までおよそ56キロにわたる六甲の山稜を,制限時間17時間(スタート5時,ゴール締切22時)で歩いてしまおうというとんでもない大会(六甲全縦2010)。ふとしたはずみで出場することになってしまったのでトレーニングを積まなければと思いながら,他の用事にかまけているうちに,結局何の準備もせず当日に臨むことになってしまった(←無謀。よい子はマネしないでくださいね)。

〔須磨浦公園→横尾山(6.7km地点)〕
前日からの雨は夜半すぎにあがったらしい。海岸沿いの国道2号線でタクシーを降り,スタート地点の行列に並んだのは午前4時。すでに先頭から100mぐらいの列になっている。当然まだ真っ暗で,西の空には月が出ている。ヘッドランプで確認しながら靴の紐を締めなおす。

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スタートのチェックを1人ずつ済ませるので,スタートラインを越えたのは5時15分ぐらい。

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一列になって山を登っていく。まだ体が温まっていないので最初はかなりぎくしゃくする。旗振山の頂上からは神戸の夜景がきれいに見える。
一度登った山を下り,まだ薄暗い高倉台団地の中を通り過ぎて(この時間でも,散歩している人がいる!)歩道橋で大通りを渡ると,また一列になって登る。このあたりでようやく明るくなり,ヘッドランプを外す。
横尾山まで行くと,朝日を浴びて美しく輝く神戸の街と大阪湾の大パノラマ。

〔横尾山→高取山(12.2km地点)〕
横尾山を過ぎるといきなり痩せ尾根(須磨アルプス)。当然のように渋滞するが,渋滞の先頭にはたいてい,高齢の女性がいる。うまくやりすごしてくれればいいのに。
せっかく登った山をまた下りて,横尾の住宅地を妙法寺の方角へ歩く。住宅地を歩きながらパワージェルの最初の1本を食べるが,おそろしくまずい。水で流し込む。
阪神高速と地下鉄の下をくぐり,妙法寺小学校の横の小道から住宅街を上って,ふたたび高取山の登りにとりつく。体が温まってきているのでほとんど疲れを感じない。

〔高取山→鵯越駅(16.2km地点)〕
頂上には立派な神社があり,鳥居が並んでいる。すぐ下の茶屋でバナナを1本50円で売っている。「元気が出るバナナが1本50円!」というお姉さんのセールストークが秀逸で,あれならかなり売れそう。その横で最初の休憩。パワージェル2本とレモンをかじる。
高取山を下りて(せっかく登ったのに,また下りることの繰り返し。げんなりする),あまり統一感のない住宅地の中を右へ左へめまぐるしく曲がっていく。途中の大通りに「神戸駅行き」のバスが走ってくるのを見て,ふと現実に引き戻されたような気がする。とある一軒の建物に絡んだ蔦が,みごとな蔦紅葉になっている。
コース中唯一のコンビニ「ヤマザキデイリーストア」の前に座り込み,2度目の休憩。パワーバー2本とレモン,1つ残しておいたおにぎりを食べる。まだ8時半。

〔鵯越駅→菊水山チェックポイント(19.5km地点)〕
駅をすぎると,小川に沿って森の中の平坦な道が続き,心なごむひととき。鈴蘭台処理場の紅葉がきれいだが,それを楽しむ余裕はない。その先で線路をくぐり,「菊水山まで3キロ」の看板を見てから本格的な登り。かなり遠くの頂上に,銀色の大きなアンテナが何本も建っているのが見える。右手には「菊水山隧道」と書かれた電車のトンネルと公園のような場所が見える。ほぼずっと階段を登っていく。足にこたえる。足に手を沿えて登るような形になってくる。ほとんど休憩なしで登っているのでたちまち汗だくになる。しまいには汗で眼鏡が曇ってくる始末。
ようやくチェックポイントにたどりつき,3度目の休憩。パワージェル1本とレモン。午前10時すぎ,登りはじめて5時間。
頂上は吹きさらしだが,かまわずフリースをしまいこみ,Tシャツ1枚になる。

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〔菊水山→市が原(24.5km地点)〕
さてTシャツ1枚になって再び下り。200m以上下る。谷底まで下りるのかと思いきや,有馬街道をまたいで中腹につり橋がかかっている。これはありがたい。これがなければ往復で高低差50メートルぐらいは余分に歩かなければならなかっただろう。とはいえもう一度200m登り返して隣のピークへ。息が切れ始める。頂上で思わず「ここはどこ?」と独語していると,後から「鍋蓋山だよ~」と年配の参加者が教えてくれる。
またまた下り,大きなお寺の山門を通過する。ここを補給ポイントに使う団体が多いらしく,あちこちにビニールシートを広げてお弁当や飲み物を用意している。これがあれば食糧や飲料水を大量に背負う必要はないわけで,なかには「日本旅行 全山縦走」なんていう看板も見える。旅行代理店に募られて六甲全縦に参加するのはやめてほしいなあ。
さらに山道を下り,市が原の谷底で川を渡る。砂岩質の白っぽい河原にお昼の日差しがあたってきれい。家族連れがバーベキューをしている平和な風景が広がっているが,立ち止まる余裕はない。

〔市が原→摩耶山掬星台チェックポイント(28.7km地点)〕
川を渡って摩耶山への登りにかかり,布引ハーブ園への分岐や「ひよこ登山会」と書かれた小屋の横を通ると,急な登りの連続になる。ぜんそくの発作のように,息を吐くたびに声が出てしまう。理由は不明だが,黙って息を吐くより声を出すほうが楽なのだ。上り坂の途中でたまらず4回目の小休止。パワージェル1本とレモン。レモンは皮ごと食べてしまう。岩だらけの登り道で,両手も使わなければならない(というより,なるべく両手を使ってはいつくばるように登ったほうが楽)。
13時すこし前にやっとの思いで摩耶山頂にたどり着き,チェックポイントの手前のテレビ送信所の蔭で風をよけながら5回目の休憩。登りはじめて8時間。パワージェル1本とレモン。風が強くなってきたのでフリースを着込む。
掬星台のチェックポイント。500mlのみかん水が1本あいたのでポカリを買い込む。地元の山岳会がホットレモンの配給をしてくださる。たとえようもなくうまい。飲んだ瞬間に全身にしみわたる感じ。

〔摩耶山掬星台→記念碑台(33.8km地点)〕
山上は家族連れやカップルでいっぱい。掬星台のすぐ下には「オテル・ド・摩耶」という名のこじゃれた建物がある。その玄関先ではなぜかモンベルが屋台を出していて,ヘッドランプやソックスやフリースを売っている。ここでソックスを買って履き替えようかとも思うが,古いソックスの捨て場もないので見送ることにして,先へ進む。
舗装道路と山道が交互に現れるが,山道の登りが辛い。特に階段が辛い。車道に出る手前の階段で,明らかに全体平均より遅くなりはじめる。途中で何度か立ち止まり,後からくる参加者に先を譲る。
山上の道路沿いにはおしゃれなカフェやそうでもない喫茶店などが並んでいるが,入ってお茶をしようという気にはならない。座り込んだら最後,バスに乗って帰りたくなるに決まっているので。

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六甲山郵便局の手前に商店があり,肉まん・あんまん・菓子パン・おにぎり・みかんなどを売っている。迷わずあんまんを1つ。ふだんなら必ず肉まんを選ぶところだが,今の自分には炭水化物以外必要ない。店の外に置かれたビールケースに腰掛けてかぶりつく。甘くてうんざりするかと思いきや,まったく甘さを感じない。すばらしい。30キロ以上も山道を歩いてくれば,おいしいのも当然なのかもしれない。6回目の休憩。
六甲山郵便局で甘酒の配給をしているが,自制して先へ。六甲山ホテルとか,山上のリゾート地そのもので,なんだか場違いな所を歩いている感じ。

〔記念碑台→一軒茶屋(39.0km地点)〕
交差点の先で小道に入る。六甲山小学校の校門の脇に石碑があり,「標高794m」と書いてあるのを見てふと思う。宝塚の標高が何メートルなのかわからないが,これだけの高さから下りていくのは相当に大変であるに違いない。カレーの店の前を通るが,たんぱく質や脂肪には全く惹かれない。やがて道はゴルフコースの中に入っていく。金網で回りを囲まれた中を歩いていると,鳥かごの中を歩いているような気分。
一度車道に出て再び山道。登りの階段にかかると,がっくりペースが落ちる。やがて六甲ガーデンテラスの脇に出ると,そこにはショッピングモールもどきがあって人がいっぱい。バス停の行列を見て,ふと「バスで三ノ宮まで出れば,ゆっくりお茶して新幹線で帰れるよなあ…」と思う。実際に市街へのバスがあるのか知らないが。

頭の片方では
「バスに乗れば三ノ宮のカフェでお茶して,家でゆっくり晩飯食えるでしょ」とか
「こんなことやってないで,早く家に帰って修論書かなきゃ締切に間に合わないよ」
とか考えるのだけれど,もう片方では,
「こんなとこで白旗あげてどうすんだよ!落伍者!敗残兵!」とか
「何十万キロかなたから満身創痍で帰ってきた「はやぶさ」の苦労を考えろよ!それに比べりゃ56キロぐらい屁みたいなもんだろ!」
とか考えたりもする(←バカ)。

ガーデンテラスのソフトクリームの立体看板の横で左足の靴紐をゆるめる(本来なら締め直すところだが,痛くてそれどころではない)。ジンギスカンの店があっていいにおいも漂っているが,空腹感はない…というか,自分が空腹なのかもよくわからなくなっている。
ガーデンテラス周辺を過ぎると急に人影がまばらになり,あたりは参加者だけになる。足取りの軽い参加者が次々に追い抜いていく。右手にはすばらしい景色が広がっているが,それを楽しむ余裕はない。

午後の陽が傾きはじめたころ,一軒茶屋でうどんをかきこむ。7回目の休憩。気温が下がっているので温かいうどんがおいしい。体を暖め,帽子にヘッドランプを装着して夜に備える。

〔一軒茶屋→東六甲分岐点(40.0km地点)〕
東六甲分岐は最後のエスケープ地点なので,リタイアか続行かを決めなければならない。分岐点の手前のトンネルを歩きながら考えるが,“相当時間はかかるだろうが何とか完歩できそう”と判断する。チェックポイントで,参加カードに最終チェック用の整理番号をホチキス止めしてくれる。たしか1061番であったか。これは通過順位なのだろうか?出場者が2000人だから,すでに半分より遅くなっているのであろうか。なおも迷ったのでボランティアの方に「宝塚まで何時間ぐらいかかりますかね?」と尋ねる。「まあ3時間ぐらいですかね」とのこと。いま16時半だから,リミットの22時までにはまあ何とかなるだろう。

〔東六甲分岐点→大谷乗越(46.0km地点)〕
山上道路から山道への入口に「宝塚まであと13キロ」という手書きの看板が出ている。さきほど一軒茶屋で地図をチェックしたときにこの区間を「1・2・3・4・3」に分けて覚えた。チェックポイントから分岐点まで1キロ+分岐点から船坂峠まで2キロ+船坂峠から大谷乗越まで3キロ+大谷乗越から塩尾寺まで4キロ+最後にゴールまで3キロ=計13キロという順序(※実際とは違う=間違って覚えていた)。「あと○キロ,あと○キロ」と念じながらあるく。

うどんが体内で燃焼しているのか,意外と快調に船坂峠への登りを飛ばす。あまりアップダウンのない尾根道なので,暗くなる前に少しでも距離を稼いでおきたい。東京の日没が17時として,大阪なら17時半ぐらいまで明るいかと期待しながら歩くが,船坂峠のあたりで暗くなる。気温が低いため,自分の吐く白い息がヘッドランプにあたっている。
大平山の舗装道路に出たところで8回目の休憩。大谷乗越までまた下りが続く。ゆるめた左足に代わって,右足の甲が靴の中で腫れ上がっているのがわかる。下り坂の右手に,きれいな夜景が現れる。

〔大谷乗越→塩尾寺(50.0km地点)〕
車道を越えたところに座り込んで9回目の休憩。休憩の頻度がどんどん短くなる。これから下りが続くとわかっているのだが,痛くてたまらない右足の紐も緩める。
わりと平坦な山道を登る。踏み跡は明瞭だが,真っ暗な中をヘッドランプだけを頼りに歩いていると,「こっちでいいのかな?」と迷う。ヘッドランプを白熱球からLEDに買い替えておいたことに感謝する。明るさが段違い。追い抜いてもらうと,しばらくはその後をついていけるが,やがて背中が遠ざかって何も見えなくなる。ボランティアの皆さんがルートのところどころにランタンを吊るして立ってくださっているので,それが見えるとほっとする。やがて行く手に,つまり東の方角にほぼ満月が現れる。気温が低く,風が強いせいか輪郭が非常に明瞭で,ちょうど自分の進む方向に,林の間から見え隠れするのが幻想的。
ボランティアの方に塩尾寺まであと1キロと言われてからが長い。すでに足が疲れきっているので,下りの衝撃を吸収できない。手を副えるようにしてゆっくり下りる。最後は下り階段の途中に,唐突に塩尾寺の山門が現れる。18時55分。

〔塩尾寺→宝塚(53.0km地点=ゴール)〕
山門の前に座り込んで最後の休憩。カロリーメイトとチョコレートをポカリで流し込む。その間に体が冷えてしまったようで,立ち上がると足の痛みが倍加している。ここからゴールまでは舗装道路を下るが,爪先や甲が痛くて歩幅が極端に小さくなる。時速2キロぐらいであろうか。どんどん抜かれていくが,逆に,同じような苦痛にあえいでいる人を抜いたりもする。なかには後ろ向きにゆっくり歩いている人もいる。たぶんそのほうが体の負担が小さいのであろう。

塩尾寺ではまだ一面のパノラマだった宝塚市街の明かりに向けて,つづら折りの舗装道路で高度を落としていく。やがて「甲子園大学」と書かれた大きな建物が見え,ようやく人家が現れる。ずいぶん高いところだが,ともかく住宅街の中の道をずっと下りていく。水路に沿って標高を下げていくが,ゴールがひどく遠く感じる。たまに紫色の明るい建物があって,あれがゴールか?と思うとクリスマスのイルミネーションだったり。
やっと大通りに出てゴール地点の公園にたどり着くが,入口の階段が登れない。手すりを腕でつかみ,腕のちからで体を引っ張り上げてようやくゴールへ。賞状と記念品をいただいて,そのまま地面に倒れこむ。時計を見ると19時44分。ということは,タイムは…14時間29分。

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ゴールしたとたん緊張の糸が切れてしまい,筋肉痛が倍加する。宝塚駅までのわずか300mがとんでもなく遠い。青信号のあいだに横断歩道が渡りきれるか,本当に心配になる。宝塚の駅前で地元のみなさんが「足湯」をふるまっているが,いま足をお湯に浸してしまったら,そのまま動けなくなってしまいそうなので自制し,電車で家路につく。
帰宅してから荷物を片付け,駅前でお嬢さんが配付していた紙片をふと開いてみたら,完走者への手書きのメッセージカードだった。すばらしい。「ホットな宝塚市民の会」のみなさま,本当にありがとうございます。

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