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マリア・ジョアン・ピリス ピアノリサイタル [音楽]

ショパンの最晩年の曲に焦点をあて、いままで聴いたことのない室内楽作品「チェロとピアノのソナタ」作品65などが演奏される(チェロ=パヴェル・ゴムツィアコフ)。

「ショパンへのオマージュ」としての雰囲気を保ちたいので前後半ともに曲と曲のあいだの拍手はしないでね、という演奏家からの注文つき。また、アンコールがないこともあらかじめ示されていた。
ピアノとチェロのための曲とピアノソロの曲が交互に演奏されるのだが、静けさを保つためか、あるいは気が散るのを防ぐためか、ピアノの右側に椅子が2脚用意され,チェリストと譜めくりの人はいちいち出入りしないでそこに座るようになっている。

オマージュになっていたかといえば…十分なっていたどころか、死の直前までショパンが書き続けていたマズルカが、かなわぬ望郷の思いとして聞き手には伝わってくるのだった。吉田秀和氏は「私は、マズルカが好きなのである」と書いておられたが、ショパンにとってのマズルカ(とポロネーズ)は、ワルツやスケルツォやノクターンやソナタとは違った、ポーランドと分かちがたく結びついたものだったことが納得できた(マズルカはポーランドの舞曲だから、当たり前といえば当たり前なんだが)。最初から最後まで、静かで暗い死の影におおわれたようなリサイタル。

最後の曲は、遺作となったマズルカ作品68の4で、あっという間に終わってしまうのだが、そのあとステージと客席の照明が落とされ、暗闇の中の長い沈黙のあとで照明が入ると、静かにしかし長く拍手が続く。

(2009.4.19 武蔵野市民文化会館)
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