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アンナ・ヴィニツカヤ ピアノリサイタル(2/7) [音楽]

吉祥寺の元町通りにあるドトールでお茶を飲んでいると、就活中の学生とおぼしきポチくん(♂)とタマちゃん(♀)が隣でしゃべっているのが何となく聞こえてくる。

タマ「ねえねえ、ソ連ってなに?」
ポチ「よくわかんないけど、ソビエト連邦のことじゃね?」
タマ「それって、どういうこと?」
ポチ「だから、なんか国があつまってんだよ」
タマ「どんな国?」
ポチ「そんなマニアックなこと聞かれても…」
タマ「そ、そうだよね。ポチくん気にしないでいいよ」
ポチ「あ、たとえば、ウルグアイとか…」
タマ「へぇ、そうなんだ」

考えてみると、現役ならことし22歳になるポチくんやタマちゃんが生まれたのは1987年だから、物心ついたときにはもうソビエト連邦はなかったんだよな…何も知らなくてもしょうがないのかな…
約10分後、今度は自己分析ごっこをはじめる二人。

タマ「ポチくんって、エリート志向が強いよね。あれっ?志向ってどっちの字を書くんだっけ?」
ポチ「うん、そうだね」

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閑話休題、それから数時間。

諸事情あって開演30秒前にすべりこんだいつもの小ホール。プログラムの表紙にクールな横顔を載せているアンナ・ヴィニツカヤ(1983年、旧ソビエト連邦(!)ノボロシスク生まれ)を聴くのはもちろん初めてで、ビジュアル系のピアニスト?とか思っていたが、案に相違してスラブ的な力感あふれる演奏。

 すこし早めのテンポで演奏されるラヴェルの「鏡」、4曲目の「道化師の朝の歌」のバスク風のリズム(3連符の連打=ボレロもそうですな)では、メロディー(右手)をあまり強調せず、リズム(左手)のなかに埋もれるように弾いて土俗的な印象を際立たせている。そうなると、プログラムの最後に演奏される「展覧会の絵」が楽しみ…と思っていたら、これがすごい演奏。
 
 エレガントさとか繊細さとかはそれほど感じられず、ところどころにミスタッチもあるのだけど、それぞれの曲のキャラクターをこれでもかというほど強調し、ピアノという楽器がこれほど鳴るものなのかと思うほど鳴らしてくれる。「ビドロ」などはいきなりフォルテで出て、これはどうなるのかと思っていると細かい表情をつけつつどんどん盛り上げ、聴いている方が後ずさりしたくなるほどの強奏に持っていく。あの主題を何百万人ものポーランド人農奴が大声で歌っているような印象で、こちらは寒気とともに手足がしびれる。「ババ・ヤーガの小屋」では、冒頭の音を音が汚くなる寸前まで鳴らしている。ホールの天井が高く、残響が長いので、さらにその効果があがっている。

渾身の演奏で、彼女自身が息を吸い込む音が6列目まで聞こえてくる。聴いている方は咳払いするどころではない。このホールにずいぶん通っているが、演奏中に拍手をしたい衝動に駆られたのは初めての経験。アルゲリッチの若いころって、もしかしてこんな感じだったのだろうか。

(2008.2.7 武蔵野市民文化会館)
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コメント 2

いっさ

ドトール・・・ソ連とアメリカは仲良くなかったです。真冬は外気温は-40度とか体感した事ありません。ロシア人女性は一目みると良くわかるようで、美人の多い国です(笑) たまに会話を聞いていてこっそり笑ってしまう事もありますね。

「展覧会の絵」は、ほんとあちこちのオケで演奏されますね。



by いっさ (2009-02-13 23:52) 

やぶ

いっささん、こんばんは。コメントありがとうございます。

ロシア人女性、きれいな方が多いですよね〜 でもなぜか、一定の年齢になると急激にふくよかさを増すような気がするのはなぜでしょう(笑)
やっぱり、寒さをしのぐためですかね?

展覧会の絵が演奏される機会が多いのは、やっぱり聞き映えがするというのか、派手な効果があげやすいのでお客さんの側にお得感?があるんじゃないでしょうか。ラヴェル編曲のオーケストラ版も、ムソルグスキーの原曲(ピアノ)も、どちらも人気がありますよね。


by やぶ (2009-02-14 00:39) 

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